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17.落としても探しやすい場所
落としても探しやすい場所④
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「お兄さんもいたのね……」
「近くに務めているから、以前はよく一緒に食事にも行ってた。最近はお互い忙しくて顔を合わせない。男兄弟なんてそんなものだよな。あ、だから実家は両親しかいなくて、兄とは今度会えるように計らうよ」
鷹條がプライベートな話をこんなにたくさんしてくれることはあまりなかったかもしれない。
話を聞いているだけでも新しいことばかりで、あっという間に旅館に着いてしまった。
鷹條が予約してくれたのは外観が和風でエントランスを入ると和モダンとも言えるインテリアが柔らかい雰囲気の旅館だ。
しかも仲居に案内された部屋はガラス張りの廊下から石畳の通路を通って入る離れだった。案内の途中、見ていると全ての部屋が離れになっている造りだった。
「亜由美?」
「すごく、素敵な旅館だね」
「せっかくだからな」
「うちは全部のお部屋が離れになっておりますので、静かにお過ごししてだけるとご好評をいただいているんです。ごゆっくりお過ごしくださいね」
そう言って丁寧に仲居は頭を下げる。
「ありがとうございます」
鷹條がお礼を言うと、にっこり笑って部屋を出ていった。
外観は完全に和風だけれど、内装は部屋の奥がガラス張りになっていて、露天風呂のあるデッキが見える。
お風呂はしっかり湯船が見えるわけではないから、部屋の中からお風呂に入っているのは見えない造りだ。
デッキにはラタンの椅子が置いてあり、デッキでもゆっくり外の景色を楽しめるようだ。
部屋の中は入るとシンプルなデザインのソファが置いてあって、横の畳の部屋にはベッドが置いてある。完全に和洋折衷の部屋だった。
亜由美は言葉が出ない。
「すごく素敵……」
「喜んでくれてよかったよ」
とても自然に後ろから抱きしめられる。鷹條は亜由美を抱きしめたまま耳元で囁きかける。
「最初は華やかで綺麗な人だなって印象だった。それから、泣きそうな顔を見て、しっかりした人だけどきっとたくさん我慢しているんだろうなって分かって、そのギャップがいいなって思った」
出会った時の頃のことだろう。
そんな風に思われていたなんて亜由美は知らなかった。
その頃の亜由美は誰かに何かを頼ることも苦手で、鷹條のことを素敵だと思っていても手の届く人だと思えなかった。
低い鷹條の声が耳元に響く。
「会社の男に腕を掴まれているのを見て、亜由美が怖がってるって分かって絶対に放っておけないって思ったんだ。俺が護りたいって強く感じた。これからもずっと俺に亜由美を護らせてくれるか?」
「あのね……」
「ん?」
優しい声だった。いつも鷹條は亜由美のことを真っすぐに見ていてくれる。
「少女漫画ではぶつかった人が運命の相手なの」
「うん?」
「私にはぶつかった人から助けてくれた人が運命の相手だったみたい。たくさん護ってくれてありがとう。私もずっと一緒にいたい」
どこまでも亜由美を甘やかしてくれる鷹條が大好きだった。
「ずっと一緒にいよう」
「一緒にいて」
そう答えた亜由美の左手を鷹條が手に取る。右手で器用にどこからか指輪を取り出して、左手薬指にきらっと光る指輪をそっと嵌めてくれた。
「亜由美、改めて俺と結婚してくれる?」
「はい」
約束通りのプロポーズが心から嬉しくて、幸せだった。ぽろっとこぼれてしまった涙は幸せの涙だ。
鷹條はキスをした後強く抱き締めてくれて、亜由美もその背中にぎゅうっと手を回す。
ふわりと抱き上げられてベッドに運ばれて、顔を見合わせて微笑んだ二人は甘くて幸せなひとときを過ごしたのだった。
「近くに務めているから、以前はよく一緒に食事にも行ってた。最近はお互い忙しくて顔を合わせない。男兄弟なんてそんなものだよな。あ、だから実家は両親しかいなくて、兄とは今度会えるように計らうよ」
鷹條がプライベートな話をこんなにたくさんしてくれることはあまりなかったかもしれない。
話を聞いているだけでも新しいことばかりで、あっという間に旅館に着いてしまった。
鷹條が予約してくれたのは外観が和風でエントランスを入ると和モダンとも言えるインテリアが柔らかい雰囲気の旅館だ。
しかも仲居に案内された部屋はガラス張りの廊下から石畳の通路を通って入る離れだった。案内の途中、見ていると全ての部屋が離れになっている造りだった。
「亜由美?」
「すごく、素敵な旅館だね」
「せっかくだからな」
「うちは全部のお部屋が離れになっておりますので、静かにお過ごししてだけるとご好評をいただいているんです。ごゆっくりお過ごしくださいね」
そう言って丁寧に仲居は頭を下げる。
「ありがとうございます」
鷹條がお礼を言うと、にっこり笑って部屋を出ていった。
外観は完全に和風だけれど、内装は部屋の奥がガラス張りになっていて、露天風呂のあるデッキが見える。
お風呂はしっかり湯船が見えるわけではないから、部屋の中からお風呂に入っているのは見えない造りだ。
デッキにはラタンの椅子が置いてあり、デッキでもゆっくり外の景色を楽しめるようだ。
部屋の中は入るとシンプルなデザインのソファが置いてあって、横の畳の部屋にはベッドが置いてある。完全に和洋折衷の部屋だった。
亜由美は言葉が出ない。
「すごく素敵……」
「喜んでくれてよかったよ」
とても自然に後ろから抱きしめられる。鷹條は亜由美を抱きしめたまま耳元で囁きかける。
「最初は華やかで綺麗な人だなって印象だった。それから、泣きそうな顔を見て、しっかりした人だけどきっとたくさん我慢しているんだろうなって分かって、そのギャップがいいなって思った」
出会った時の頃のことだろう。
そんな風に思われていたなんて亜由美は知らなかった。
その頃の亜由美は誰かに何かを頼ることも苦手で、鷹條のことを素敵だと思っていても手の届く人だと思えなかった。
低い鷹條の声が耳元に響く。
「会社の男に腕を掴まれているのを見て、亜由美が怖がってるって分かって絶対に放っておけないって思ったんだ。俺が護りたいって強く感じた。これからもずっと俺に亜由美を護らせてくれるか?」
「あのね……」
「ん?」
優しい声だった。いつも鷹條は亜由美のことを真っすぐに見ていてくれる。
「少女漫画ではぶつかった人が運命の相手なの」
「うん?」
「私にはぶつかった人から助けてくれた人が運命の相手だったみたい。たくさん護ってくれてありがとう。私もずっと一緒にいたい」
どこまでも亜由美を甘やかしてくれる鷹條が大好きだった。
「ずっと一緒にいよう」
「一緒にいて」
そう答えた亜由美の左手を鷹條が手に取る。右手で器用にどこからか指輪を取り出して、左手薬指にきらっと光る指輪をそっと嵌めてくれた。
「亜由美、改めて俺と結婚してくれる?」
「はい」
約束通りのプロポーズが心から嬉しくて、幸せだった。ぽろっとこぼれてしまった涙は幸せの涙だ。
鷹條はキスをした後強く抱き締めてくれて、亜由美もその背中にぎゅうっと手を回す。
ふわりと抱き上げられてベッドに運ばれて、顔を見合わせて微笑んだ二人は甘くて幸せなひとときを過ごしたのだった。
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