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15.ストーカーの正体
ストーカーの正体③
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カレーというのは家庭によって作り方が異なるもので面白いなぁと亜由美は感心して見ていた。
鷹條がカレーを作っている間に亜由美もサラダを作ったり、お風呂の準備も済ませる。
鷹條はキッチンに立つことを全く厭わないし、逆に亜由美がキッチンにいる時はお風呂の準備をしてくれたり、洗濯物を畳んだりもしてくれる。
新婚生活ってこんな感じなんだろうか? と想像して亜由美は慌てて否定する。
(ち、違うからっ。千智さんは今はただストーカーのことがあるから側にいてくれているだけ)
つい幸せな新婚生活というものに思いを馳せそうになって、慌てて亜由美は今日のことを報告した。奥村のことだ。
「だからね、奥村さんはいかにも! って感じの方が好きなんですって」
「久木さんはいかにもって感じだな」
キッチンで手を動かしながら亜由美の話を聞いて、鷹條は苦笑していた。
「私もそう思ったんだけど、久木さんのイメージを上手く伝えられなくて」
「久木さんも元カノと別れて大分経つからなぁ。興味があれば一緒に食事とか行ってもいいかもな?」
余計なことをするつもりはないが、もしも二人の気が合えば亜由美も嬉しい。
「奥村さんに聞いてみるね。喜びそうだわ」
程なくして鷹條がローリエを取り出し、アクを取っているのが見えた。
「すごくきちんとしているわ」
「適当だぞ」
亜由美に向かって笑った鷹條はカレールーを入れて鍋の中身をかき回している。
部屋の中にスパイシーな香りが漂ってきていた。
「お腹空いたぁ」
「あとちょっとだ」
しばらくしてキッチンにいる鷹條が亜由美を呼ぶ。
「ん?」
「味見して」
小皿にカレーが少しだけ載せられていて、近寄っていった亜由美の口元に鷹條がカレーを一口流し込む。
そんなようすまでじっと見るから、亜由美は飲み込むだけのことにとても緊張してしまった。
「美味しい!」
「こんなもんか」
テーブルをセットして二人でいただきますと言って食べる。
一緒に食べるカレーは幸せの味がしたような気がする。
週の半分くらいは鷹條と帰ることにしているが、鷹條にもシフトや残業がある。
半同棲のような生活を続けて1ヶ月近くが経とうとしていた。お互いに相手が部屋にいることにも慣れてきた頃だ。
「亜由美……」
帰り道、駅からマンションに向かう途中で声をかけられ亜由美は顔を上げる。
そこにいたのは前に『亜由美以外にも女性はいる』と亜由美を振った元カレの姿だった。
コンサルティング会社で営業をしているはずだが、それにしてはスーツなどが少しよれているのが気になった。
営業マンならまず身なりには気を配るものだ。
声をかけられたことに戸惑いつつも亜由美は返事をするしかなかった。
「久しぶりね」
交際期間は短かったと思う。彼も亜由美に執着はしていなくてサッパリとした別れだったはずだ。
今さら、何の用があるのか分からない。
「別れた?」
そう声をかけられ一瞬何のことか分からなかったけれど、亜由美を見る目に粘着質なものが混じっているような気がして亜由美は血の気が引くのを感じた。
『別れろ!』
白い便箋に印刷されていた文字が頭をよぎる。
「誰と?」
鷹條と過ごす時間の中で亜由美は冷静に対応することについてのレクチャーを何度も受けていた。
穏やかで力強い鷹條の声がよみがえってくる。
『もしかしたら俺のいない時に接触がある可能性もある』
それを聞いた時は怖かった。けれど、真っすぐ亜由美を覗き込む鷹條の顔を見ていたら少しずつ落ち着いたのだ。
亜由美なら大丈夫だからと何度も繰り返し言ってくれた。
『心の準備がないものにはとっさに対応することがとても難しい。けど心の準備をして何度もシミュレーションしていたら対応できる。訓練と一緒だ』
鷹條がカレーを作っている間に亜由美もサラダを作ったり、お風呂の準備も済ませる。
鷹條はキッチンに立つことを全く厭わないし、逆に亜由美がキッチンにいる時はお風呂の準備をしてくれたり、洗濯物を畳んだりもしてくれる。
新婚生活ってこんな感じなんだろうか? と想像して亜由美は慌てて否定する。
(ち、違うからっ。千智さんは今はただストーカーのことがあるから側にいてくれているだけ)
つい幸せな新婚生活というものに思いを馳せそうになって、慌てて亜由美は今日のことを報告した。奥村のことだ。
「だからね、奥村さんはいかにも! って感じの方が好きなんですって」
「久木さんはいかにもって感じだな」
キッチンで手を動かしながら亜由美の話を聞いて、鷹條は苦笑していた。
「私もそう思ったんだけど、久木さんのイメージを上手く伝えられなくて」
「久木さんも元カノと別れて大分経つからなぁ。興味があれば一緒に食事とか行ってもいいかもな?」
余計なことをするつもりはないが、もしも二人の気が合えば亜由美も嬉しい。
「奥村さんに聞いてみるね。喜びそうだわ」
程なくして鷹條がローリエを取り出し、アクを取っているのが見えた。
「すごくきちんとしているわ」
「適当だぞ」
亜由美に向かって笑った鷹條はカレールーを入れて鍋の中身をかき回している。
部屋の中にスパイシーな香りが漂ってきていた。
「お腹空いたぁ」
「あとちょっとだ」
しばらくしてキッチンにいる鷹條が亜由美を呼ぶ。
「ん?」
「味見して」
小皿にカレーが少しだけ載せられていて、近寄っていった亜由美の口元に鷹條がカレーを一口流し込む。
そんなようすまでじっと見るから、亜由美は飲み込むだけのことにとても緊張してしまった。
「美味しい!」
「こんなもんか」
テーブルをセットして二人でいただきますと言って食べる。
一緒に食べるカレーは幸せの味がしたような気がする。
週の半分くらいは鷹條と帰ることにしているが、鷹條にもシフトや残業がある。
半同棲のような生活を続けて1ヶ月近くが経とうとしていた。お互いに相手が部屋にいることにも慣れてきた頃だ。
「亜由美……」
帰り道、駅からマンションに向かう途中で声をかけられ亜由美は顔を上げる。
そこにいたのは前に『亜由美以外にも女性はいる』と亜由美を振った元カレの姿だった。
コンサルティング会社で営業をしているはずだが、それにしてはスーツなどが少しよれているのが気になった。
営業マンならまず身なりには気を配るものだ。
声をかけられたことに戸惑いつつも亜由美は返事をするしかなかった。
「久しぶりね」
交際期間は短かったと思う。彼も亜由美に執着はしていなくてサッパリとした別れだったはずだ。
今さら、何の用があるのか分からない。
「別れた?」
そう声をかけられ一瞬何のことか分からなかったけれど、亜由美を見る目に粘着質なものが混じっているような気がして亜由美は血の気が引くのを感じた。
『別れろ!』
白い便箋に印刷されていた文字が頭をよぎる。
「誰と?」
鷹條と過ごす時間の中で亜由美は冷静に対応することについてのレクチャーを何度も受けていた。
穏やかで力強い鷹條の声がよみがえってくる。
『もしかしたら俺のいない時に接触がある可能性もある』
それを聞いた時は怖かった。けれど、真っすぐ亜由美を覗き込む鷹條の顔を見ていたら少しずつ落ち着いたのだ。
亜由美なら大丈夫だからと何度も繰り返し言ってくれた。
『心の準備がないものにはとっさに対応することがとても難しい。けど心の準備をして何度もシミュレーションしていたら対応できる。訓練と一緒だ』
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