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14.このままでは済まさない
このままでは済まさない④
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メールアプリでの鷹條からのメッセージだ。亜由美は買い物の手を止めて、返信する。
『お買い物してる。駅前のスーパーにいるよ』
『もう少しで終わるから、一緒に帰ろう。ゆっくり買い物できる?』
『ゆっくり買い物して待ってる』
「あ、そうだ……」
朝はパンが良いのか、ご飯が良いのか聞いておきたい。
『朝はパンとご飯、どっちがいい?』
『どっちも好きだ。無理はするな』
急ぎだったのか、それ以上鷹條からの返信はなかった。結局分からなかったので、やはり両方の準備ができるようにしようと最後にパンをカゴに入れて、ゆっくりとスーパーマーケットの中をもう一度歩く。
その時、ふと先日の写真のことを思い出してしまった。
犯人はこんな風に買い物をしている亜由美のことを写真に撮っていた。捜査を進めてもらっているとはいっても、まだ捕まったわけではない。
こうしている時も、どこかで見ているのかもしれない。
そう思うと、ぞっとした。
──怖い……。
一人で歩いて帰ることなんてできない。写真に撮られるのも気分が悪いが、もしもそれがエスカレートしたら? なにか危害を加えられるようなことをされたら?
今までそういうことに思い至らなかった自分はなんて甘かったんだろう。
それは鷹條にあんな悲しい顔をさせてしまう訳だと自覚した。
「亜由美!」
スパイスの棚の前でつい足を止めてしまっていた亜由美に鷹條が早足で寄ってくる。
「千智さん」
安心したように鷹條は軽く亜由美を抱き寄せた。亜由美もきゅっと抱きつく。
「ん? 大丈夫か? なにかあった?」
腕の中でふるふるっと首を横に振る。
「急に……怖くなっちゃって」
「当然だ。買い物も一緒に行ける時に行こう。一人では怖いだろう。無理しなくていい。あー、俺の食事のことも無理しなくていいからな? なんなら俺は俺で適当にやるし」
「私の手料理はいらない?」
「ほしいけど、無理はしなくていいってこと。あと、俺の腕前もたまには披露させてくれ」
そう言って笑った鷹條は買い物カゴにカレールーを入れる。
「オトコの手料理と言えばカレーだろう」
亜由美の気が晴れるように明るくふるまってくれる鷹條が大好きだ。
「お肉は牛ですか? チキン?」
「え? 豚じゃないのか?」
「お任せします!」
今度は二人でもう一度買い物をして、いつもより多めに買った食材は鷹條も持ってくれた。会計をして二人で歩いてマンションに向かう。
その途中でゆっくりと住宅街を走るパトカーとすれ違った。
「念のためにパトロールを強化してもらってる。いつまでも続けられるわけではないんだが、犯人は動きにくくなるはずだ」
「ありがとう。今日、奥村さんにもお話したの。駅まで一緒に帰ることになりました」
「うん。奥村さんは亜由美のことを本当に大事にしてくれているな。いい人だ」
「今度、もっとちゃんとお礼しなくちゃね。あ、そういえば、千智さんの上司の方にも」
鷹條は苦笑していた。
「なに?」
「お礼はいらない。公務員なら当然だと返したことがあったな」
最初の頃の話だ。その頃と二人の関係はだいぶ変わった。そう思うと妙に気恥ずかしい。
「あった、ね」
「本当は受けてしまいたかった」
「私もです。受けてほしかった。けど、なんとなく千智さんは受けないだろうなって分かってた。だから……大事にしていいかって言われたとき、すごく嬉しかったな」
鷹條がぎゅっと亜由美の手を握る。
「早く帰ろう」
『お買い物してる。駅前のスーパーにいるよ』
『もう少しで終わるから、一緒に帰ろう。ゆっくり買い物できる?』
『ゆっくり買い物して待ってる』
「あ、そうだ……」
朝はパンが良いのか、ご飯が良いのか聞いておきたい。
『朝はパンとご飯、どっちがいい?』
『どっちも好きだ。無理はするな』
急ぎだったのか、それ以上鷹條からの返信はなかった。結局分からなかったので、やはり両方の準備ができるようにしようと最後にパンをカゴに入れて、ゆっくりとスーパーマーケットの中をもう一度歩く。
その時、ふと先日の写真のことを思い出してしまった。
犯人はこんな風に買い物をしている亜由美のことを写真に撮っていた。捜査を進めてもらっているとはいっても、まだ捕まったわけではない。
こうしている時も、どこかで見ているのかもしれない。
そう思うと、ぞっとした。
──怖い……。
一人で歩いて帰ることなんてできない。写真に撮られるのも気分が悪いが、もしもそれがエスカレートしたら? なにか危害を加えられるようなことをされたら?
今までそういうことに思い至らなかった自分はなんて甘かったんだろう。
それは鷹條にあんな悲しい顔をさせてしまう訳だと自覚した。
「亜由美!」
スパイスの棚の前でつい足を止めてしまっていた亜由美に鷹條が早足で寄ってくる。
「千智さん」
安心したように鷹條は軽く亜由美を抱き寄せた。亜由美もきゅっと抱きつく。
「ん? 大丈夫か? なにかあった?」
腕の中でふるふるっと首を横に振る。
「急に……怖くなっちゃって」
「当然だ。買い物も一緒に行ける時に行こう。一人では怖いだろう。無理しなくていい。あー、俺の食事のことも無理しなくていいからな? なんなら俺は俺で適当にやるし」
「私の手料理はいらない?」
「ほしいけど、無理はしなくていいってこと。あと、俺の腕前もたまには披露させてくれ」
そう言って笑った鷹條は買い物カゴにカレールーを入れる。
「オトコの手料理と言えばカレーだろう」
亜由美の気が晴れるように明るくふるまってくれる鷹條が大好きだ。
「お肉は牛ですか? チキン?」
「え? 豚じゃないのか?」
「お任せします!」
今度は二人でもう一度買い物をして、いつもより多めに買った食材は鷹條も持ってくれた。会計をして二人で歩いてマンションに向かう。
その途中でゆっくりと住宅街を走るパトカーとすれ違った。
「念のためにパトロールを強化してもらってる。いつまでも続けられるわけではないんだが、犯人は動きにくくなるはずだ」
「ありがとう。今日、奥村さんにもお話したの。駅まで一緒に帰ることになりました」
「うん。奥村さんは亜由美のことを本当に大事にしてくれているな。いい人だ」
「今度、もっとちゃんとお礼しなくちゃね。あ、そういえば、千智さんの上司の方にも」
鷹條は苦笑していた。
「なに?」
「お礼はいらない。公務員なら当然だと返したことがあったな」
最初の頃の話だ。その頃と二人の関係はだいぶ変わった。そう思うと妙に気恥ずかしい。
「あった、ね」
「本当は受けてしまいたかった」
「私もです。受けてほしかった。けど、なんとなく千智さんは受けないだろうなって分かってた。だから……大事にしていいかって言われたとき、すごく嬉しかったな」
鷹條がぎゅっと亜由美の手を握る。
「早く帰ろう」
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