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11.水も滴る……
水も滴る……①
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助けられたのはまずかっただろうかと亜由美は戸惑う。ふっと奥村は亜由美に微笑んだ。
「まあ、杉原さんに何事もなくて良かったわ。そういうことがあったってことは、私も覚えておくから」
あの時は結局課長も対応してくれたし、亜由美の中ではもう終わったことだったのだけれど、初めて聞く奥村は穏やかではなかったようだ。
「そんなに何度も助けられちゃったら……それは好きになっちゃうし、なんていうか運命的?」
首を傾げて奥村は亜由美に尋ねた。
運命的なんて言われて、嬉しさと恥ずかしさでどうしたらいいのか亜由美は分からなくなってしまった。気づくとなんだか顔が熱い。
「運命的……だったらいいなって思います」
顔を赤くして照れてしまう亜由美を見た奥村は目の前のグラスを手に取ると、ごくごくーっと飲み干す。
「はーっ! ご馳走様っ! なーんか、お二人見てると恋愛っていいなぁって思うわ」
「そんなふうに言ってもらえると嬉しいです」
「杉原さんっ! いえ、亜由美ちゃんと呼んでもいい?」
「ぜひ!」
「亜由美ちゃんって、ツンって澄ました美人で気軽に声なんかかけられない雰囲気なんだけど、実際に話してみるととても素直で可愛らしいのよね。女子の私でもギャップ萌えするの」
ツンと澄ましたとかそういう意識は亜由美にはない。
(それって話しかけにくいとかそういうことかしら?)
良いことなのか悪いことなのか、よく分からなくて戸惑ってしまう。
「良いと思うよ。大事な人だけが本当のことを知っていればいいんじゃないかな?」
大事な人だけが……。
「それを言うなら、奥村さんにも知ってほしいです」
「亜由美ちゃん!」
感極まった様子の奥村に亜由美はぎゅっと手を握られる。
「もちろんよ!」
大好きで尊敬する先輩が亜由美のことも大事にしてくれるのは、本当に嬉しいことだった。
その後はいつも行っている洋服屋の話とか、美味しいお店の情報などを交換しつつ、楽しい夜はふけていった。
駅で奥村とは別れて、亜由美はご機嫌で電車に乗る。今日行ったお店のフォトライブラリーを見返しながら、今度鷹條と一緒に行ってもいいなぁなどと考える。
そして何枚か綺麗に撮れていた写真をメールアプリで鷹條に送っておいた。
鷹條は時間がある時に確認して返信してくれるので、即答ではないこともあるけれど、そんなことは構わない。
気兼ねなくメールしていいと言われていたし、亜由美も返信がないことに不貞腐れたりはしない。
それより、共有できることをたくさん共有したいのだ。
『美味そうだな』
ポンッと返信があって、逆に亜由美は驚いてしまった。
驚きながらも嬉しいことは間違いない。つい微笑んでしまいそうな口元を抑えて、返事を送信する。
『今日はもう終わったの?』
『明日戻るから、今は帰る準備をしたところ。亜由美は帰り道?』
『電車だよ』
『では通話はできないな。残念』
亜由美だって鷹條の声を聞きたかった。残念な気持ちは一緒だ。
少し考えて続きを打ち込む。
『私も通話したかったな。声が聞きたかったから』
自分で送っておいて、ドキドキしてしまった。大胆過ぎただろうか?
しばらくして、メールが送り返されてきた。
『可愛いことを言われたら本当に声が聞きたくてたまらなくなる。けど声を聞いたら見たいとか触れたくなる気もする。明日の朝が早いから今日は休む。明日戻って報告書を作成したら定時に終わりそうなんだが、待ち合わせできる?』
文言はとてもシンプルだけれど、素直な気持ちが書かれている。出張から帰って亜由美の顔を見たいと思ってくれることはとても嬉しい。
『もちろんです! 会うのを楽しみにしているね。おやすみなさい』
「まあ、杉原さんに何事もなくて良かったわ。そういうことがあったってことは、私も覚えておくから」
あの時は結局課長も対応してくれたし、亜由美の中ではもう終わったことだったのだけれど、初めて聞く奥村は穏やかではなかったようだ。
「そんなに何度も助けられちゃったら……それは好きになっちゃうし、なんていうか運命的?」
首を傾げて奥村は亜由美に尋ねた。
運命的なんて言われて、嬉しさと恥ずかしさでどうしたらいいのか亜由美は分からなくなってしまった。気づくとなんだか顔が熱い。
「運命的……だったらいいなって思います」
顔を赤くして照れてしまう亜由美を見た奥村は目の前のグラスを手に取ると、ごくごくーっと飲み干す。
「はーっ! ご馳走様っ! なーんか、お二人見てると恋愛っていいなぁって思うわ」
「そんなふうに言ってもらえると嬉しいです」
「杉原さんっ! いえ、亜由美ちゃんと呼んでもいい?」
「ぜひ!」
「亜由美ちゃんって、ツンって澄ました美人で気軽に声なんかかけられない雰囲気なんだけど、実際に話してみるととても素直で可愛らしいのよね。女子の私でもギャップ萌えするの」
ツンと澄ましたとかそういう意識は亜由美にはない。
(それって話しかけにくいとかそういうことかしら?)
良いことなのか悪いことなのか、よく分からなくて戸惑ってしまう。
「良いと思うよ。大事な人だけが本当のことを知っていればいいんじゃないかな?」
大事な人だけが……。
「それを言うなら、奥村さんにも知ってほしいです」
「亜由美ちゃん!」
感極まった様子の奥村に亜由美はぎゅっと手を握られる。
「もちろんよ!」
大好きで尊敬する先輩が亜由美のことも大事にしてくれるのは、本当に嬉しいことだった。
その後はいつも行っている洋服屋の話とか、美味しいお店の情報などを交換しつつ、楽しい夜はふけていった。
駅で奥村とは別れて、亜由美はご機嫌で電車に乗る。今日行ったお店のフォトライブラリーを見返しながら、今度鷹條と一緒に行ってもいいなぁなどと考える。
そして何枚か綺麗に撮れていた写真をメールアプリで鷹條に送っておいた。
鷹條は時間がある時に確認して返信してくれるので、即答ではないこともあるけれど、そんなことは構わない。
気兼ねなくメールしていいと言われていたし、亜由美も返信がないことに不貞腐れたりはしない。
それより、共有できることをたくさん共有したいのだ。
『美味そうだな』
ポンッと返信があって、逆に亜由美は驚いてしまった。
驚きながらも嬉しいことは間違いない。つい微笑んでしまいそうな口元を抑えて、返事を送信する。
『今日はもう終わったの?』
『明日戻るから、今は帰る準備をしたところ。亜由美は帰り道?』
『電車だよ』
『では通話はできないな。残念』
亜由美だって鷹條の声を聞きたかった。残念な気持ちは一緒だ。
少し考えて続きを打ち込む。
『私も通話したかったな。声が聞きたかったから』
自分で送っておいて、ドキドキしてしまった。大胆過ぎただろうか?
しばらくして、メールが送り返されてきた。
『可愛いことを言われたら本当に声が聞きたくてたまらなくなる。けど声を聞いたら見たいとか触れたくなる気もする。明日の朝が早いから今日は休む。明日戻って報告書を作成したら定時に終わりそうなんだが、待ち合わせできる?』
文言はとてもシンプルだけれど、素直な気持ちが書かれている。出張から帰って亜由美の顔を見たいと思ってくれることはとても嬉しい。
『もちろんです! 会うのを楽しみにしているね。おやすみなさい』
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