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10.恋愛っていいものですね
恋愛っていいものですね④
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亜由美にとって奥村は尊敬する大好きな先輩で、可愛らしく憧れでもある。
嬉しくて、ぜひと即答してしまった。
一瞬、図々しかったかな? と思ったが、奥村もにこにこして「どこに行こうかなー」などと言っているので亜由美は安心する。
奥村が連れていってくれたのは、四季のお料理が楽しめるという隠れ家風の懐石のお店だった。
前菜から始まり、お造りやすり流し、焼物など手の込んだ料理を楽しむ。
「この前、会社のロビーでお付き合いしてますってきっぱり言ってた彼氏さん、かっこよかったねぇ。鷹條さん、だっけ?」
「はい……」
かっこいいのは事実だからそう言ってもらえるのは嬉しいけれど、あの時のことを思い出すと顔から火が出そうに恥ずかしい亜由美だ。
「私は大事にされてるなぁって、羨ましかったし、嬉しかった。杉原さんは私にも大事な後輩だもの」
「そう言って頂けると嬉しいです」
すると奥村はくすっと笑った。
「あの時の覗き見メンバーの中には男性社員もいたからね。鷹條さんは余計にキッパリ言っておかないと、と思ったかもしれないね」
「そうなんでしょうか?」
「杉原さんのことぎゅーって抱き寄せちゃって、絶対誰にも渡さないって感じだったよ!」
「そ……そうでしょうか」
ふわりと顔を赤くして、両手で頬を包むようにしている亜由美を奥村は微笑ましげに見ていた。
亜由美は見た目が煌びやかで綺麗な顔立ちの持ち主だ。さらに丁寧に施されたお化粧やすらりとした姿も、澄ましていて声をかけづらいという印象を相手に与えがちかもしれない。
けれど実際の亜由美はとても優しくて、周りによく気遣いのできる可愛らしい女性なのだ。むしろその見た目に反して、奥ゆかしすぎるところすらある。
仕事にも真面目で、それは周りのみんなも認めているところだ。
鷹條は亜由美のそんなところも充分に理解しているのではないかと奥村は察していた。
「いつも……他人のことを助けてばかりいるんです」
亜由美の柔らかい声に奥村は顔を上げる。鷹條のことだろう。
「私も助けてもらいました。駅で絡まれた変な人から助けてくれて、転んでしまった私を病院に連れて行ってくれて。で、一条さんに絡まれた時も……」
「はぁ!? ちょっと待って! 一条さんに絡まれてってどういうこと!?」
亜由美の言葉に奥村が声を上げる。
そういえば会社の人には言っていなかったかもしれない。あの日は鷹條に交際を申し込まれたので、それで頭がいっぱいになってしまって、亜由美は一条からされたことなど吹き飛んでしまっていたから。
「営業課から申し入れのあった日なんですけど、お昼に出たら一条さんに絡まれてしまったんです。俺の気を引きたいのかと言って」
会社を出てから起こったことを亜由美は奥村に説明する。奥村は大きくはーっとため息をついて項垂れた。
「……ったく、あのバカ……。それも鷹條さんが助けてくれたの?」
「はい。たまたまお昼で上司の方と通りかかったんです」
奥村はため息を止めることができなかった。
今、穏やかに亜由美は話してくれているけれど、社内の然るべき部署に申し立てられてもおかしくはない事案なのだ。
亜由美と鷹條に一条は救われた。
そしてきっと当人達にはその自覚はない。第三者である奥村だから気付いたことだ。
「その鷹條さんの上司にまでうちの会社にアホがいると知られたわけね」
底冷えしそうな声が奥村から聞こえてきた。
嬉しくて、ぜひと即答してしまった。
一瞬、図々しかったかな? と思ったが、奥村もにこにこして「どこに行こうかなー」などと言っているので亜由美は安心する。
奥村が連れていってくれたのは、四季のお料理が楽しめるという隠れ家風の懐石のお店だった。
前菜から始まり、お造りやすり流し、焼物など手の込んだ料理を楽しむ。
「この前、会社のロビーでお付き合いしてますってきっぱり言ってた彼氏さん、かっこよかったねぇ。鷹條さん、だっけ?」
「はい……」
かっこいいのは事実だからそう言ってもらえるのは嬉しいけれど、あの時のことを思い出すと顔から火が出そうに恥ずかしい亜由美だ。
「私は大事にされてるなぁって、羨ましかったし、嬉しかった。杉原さんは私にも大事な後輩だもの」
「そう言って頂けると嬉しいです」
すると奥村はくすっと笑った。
「あの時の覗き見メンバーの中には男性社員もいたからね。鷹條さんは余計にキッパリ言っておかないと、と思ったかもしれないね」
「そうなんでしょうか?」
「杉原さんのことぎゅーって抱き寄せちゃって、絶対誰にも渡さないって感じだったよ!」
「そ……そうでしょうか」
ふわりと顔を赤くして、両手で頬を包むようにしている亜由美を奥村は微笑ましげに見ていた。
亜由美は見た目が煌びやかで綺麗な顔立ちの持ち主だ。さらに丁寧に施されたお化粧やすらりとした姿も、澄ましていて声をかけづらいという印象を相手に与えがちかもしれない。
けれど実際の亜由美はとても優しくて、周りによく気遣いのできる可愛らしい女性なのだ。むしろその見た目に反して、奥ゆかしすぎるところすらある。
仕事にも真面目で、それは周りのみんなも認めているところだ。
鷹條は亜由美のそんなところも充分に理解しているのではないかと奥村は察していた。
「いつも……他人のことを助けてばかりいるんです」
亜由美の柔らかい声に奥村は顔を上げる。鷹條のことだろう。
「私も助けてもらいました。駅で絡まれた変な人から助けてくれて、転んでしまった私を病院に連れて行ってくれて。で、一条さんに絡まれた時も……」
「はぁ!? ちょっと待って! 一条さんに絡まれてってどういうこと!?」
亜由美の言葉に奥村が声を上げる。
そういえば会社の人には言っていなかったかもしれない。あの日は鷹條に交際を申し込まれたので、それで頭がいっぱいになってしまって、亜由美は一条からされたことなど吹き飛んでしまっていたから。
「営業課から申し入れのあった日なんですけど、お昼に出たら一条さんに絡まれてしまったんです。俺の気を引きたいのかと言って」
会社を出てから起こったことを亜由美は奥村に説明する。奥村は大きくはーっとため息をついて項垂れた。
「……ったく、あのバカ……。それも鷹條さんが助けてくれたの?」
「はい。たまたまお昼で上司の方と通りかかったんです」
奥村はため息を止めることができなかった。
今、穏やかに亜由美は話してくれているけれど、社内の然るべき部署に申し立てられてもおかしくはない事案なのだ。
亜由美と鷹條に一条は救われた。
そしてきっと当人達にはその自覚はない。第三者である奥村だから気付いたことだ。
「その鷹條さんの上司にまでうちの会社にアホがいると知られたわけね」
底冷えしそうな声が奥村から聞こえてきた。
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