39 / 83
10.恋愛っていいものですね
恋愛っていいものですね②
しおりを挟む
「どうした?」
「ドキドキしてた……」
「俺もだよ」
鷹條の側に立っていた亜由美は首の後ろを軽く引き寄せられて、顔を上げる。
そっと重なった唇はたった今水を飲んだせいなのか、少しひんやりとしていた。
(どうしよう。大好き)
少しだけ背伸びした亜由美がぎゅっと鷹條に抱きつく。
「甘える亜由美って可愛いな」
唇から頬、耳元へと移る唇は色香をふんだんに含んだ声で亜由美に囁く。
「ベッドに、行こうか?」
亜由美はこくこくっと頷くだけで精一杯だ。
かかる吐息も、その声にもくらくらとしてしまって、力が抜けてしまいそうだった。
ふっ……と甘く笑った鷹條が亜由美を抱き上げて寝室へと運んでくれるのも最近はいつものことになってしまっていた。
軽いベッドの軋みと、体温が離れてしまう感覚で亜由美は目を覚ました。
「ん……帰る?」
「うん。起こして悪いな。そのまま寝ていていい。カギはポストに入れておく」
「……うん」
『所在の明確化のルール』があるから、基本的に鷹條は外泊をしない。
じゃあ、いちばん最初に亜由美のところに泊まった時は?と単純に疑問に思って聞いてみたことがある。
鷹條は口元を抑えてふっと顔を横に向けて、とても小さい声で「いや……許可は取ってた……」と言ったのだ。
その耳が赤くて、亜由美も言葉を返せなくなってしまった。
あわよくば、の下心。好きな人のものならばなぜか嬉しいものらしい。正直に亜由美に打ち明ける鷹條が好きだなぁと微笑ましく嬉しくなったものだった。
鷹條の時間はとても貴重だ。
その貴重な時間を亜由美と一緒にいることに使ってくれていることが本当に嬉しい。
大事にされていることを亜由美も実感していたのだった。
今日は楽しみにしている恋愛コミックスの新刊の発売日だ。
朝から亜由美は本屋さんに寄って帰ると決めていた。電子でも読めるけれど、しっかり浸って読める紙本もどうしても好きで、大好きな作家さんのものだけ買うと決めている。
なかなか時計の進まない中、定時に終わるとダッシュで電車に乗り最寄り駅近くの大型書店に足を向けた。
「杉原さん! お待ちしてましたよー!」
店員は亜由美とも仲良しで同じようなジャンルが好きらしく話も合うし、時にオススメを教えてもらったりもする。
亜由美は笑顔を向けた。
「楽しみにしてたの」
「お取り置きしてありますよ。もー、今回もきゅんきゅんです」
「ね……ネタバレ禁止!」
慌てて亜由美が言うと、店員にくすくす笑われてしまう。
「了解です! 楽しんでください」
今回は特典が付いていたからと特典のカードを同封してもらって丁寧に包装された本を受け取る。亜由美はお礼を言って足取り軽やかに自宅に帰った。
大事な本はリビングのテーブルにそっとおいて、着替えて作り置きの料理を温める。
テレビをつけニュースを確認しつつ、食事を済ませる。今日はゆっくりと本の世界に浸りたいので、片付けをしたらすぐにお風呂に入った。
髪を乾かしながら、メールアプリを確認する。特に新しいメッセージは入っていないようだ。
鷹條は今、警護の関係で遠方の県に出張中でメールアプリでの連絡もなかなか既読にならなかったり、亜由美が気づかない間に返信があったりする。
それでも自宅に帰ると連絡するようにはしていた。いろんなトラブルがあって鷹條との交際に発展した経緯もあって、とても心配されてしまうのだ。
「ドキドキしてた……」
「俺もだよ」
鷹條の側に立っていた亜由美は首の後ろを軽く引き寄せられて、顔を上げる。
そっと重なった唇はたった今水を飲んだせいなのか、少しひんやりとしていた。
(どうしよう。大好き)
少しだけ背伸びした亜由美がぎゅっと鷹條に抱きつく。
「甘える亜由美って可愛いな」
唇から頬、耳元へと移る唇は色香をふんだんに含んだ声で亜由美に囁く。
「ベッドに、行こうか?」
亜由美はこくこくっと頷くだけで精一杯だ。
かかる吐息も、その声にもくらくらとしてしまって、力が抜けてしまいそうだった。
ふっ……と甘く笑った鷹條が亜由美を抱き上げて寝室へと運んでくれるのも最近はいつものことになってしまっていた。
軽いベッドの軋みと、体温が離れてしまう感覚で亜由美は目を覚ました。
「ん……帰る?」
「うん。起こして悪いな。そのまま寝ていていい。カギはポストに入れておく」
「……うん」
『所在の明確化のルール』があるから、基本的に鷹條は外泊をしない。
じゃあ、いちばん最初に亜由美のところに泊まった時は?と単純に疑問に思って聞いてみたことがある。
鷹條は口元を抑えてふっと顔を横に向けて、とても小さい声で「いや……許可は取ってた……」と言ったのだ。
その耳が赤くて、亜由美も言葉を返せなくなってしまった。
あわよくば、の下心。好きな人のものならばなぜか嬉しいものらしい。正直に亜由美に打ち明ける鷹條が好きだなぁと微笑ましく嬉しくなったものだった。
鷹條の時間はとても貴重だ。
その貴重な時間を亜由美と一緒にいることに使ってくれていることが本当に嬉しい。
大事にされていることを亜由美も実感していたのだった。
今日は楽しみにしている恋愛コミックスの新刊の発売日だ。
朝から亜由美は本屋さんに寄って帰ると決めていた。電子でも読めるけれど、しっかり浸って読める紙本もどうしても好きで、大好きな作家さんのものだけ買うと決めている。
なかなか時計の進まない中、定時に終わるとダッシュで電車に乗り最寄り駅近くの大型書店に足を向けた。
「杉原さん! お待ちしてましたよー!」
店員は亜由美とも仲良しで同じようなジャンルが好きらしく話も合うし、時にオススメを教えてもらったりもする。
亜由美は笑顔を向けた。
「楽しみにしてたの」
「お取り置きしてありますよ。もー、今回もきゅんきゅんです」
「ね……ネタバレ禁止!」
慌てて亜由美が言うと、店員にくすくす笑われてしまう。
「了解です! 楽しんでください」
今回は特典が付いていたからと特典のカードを同封してもらって丁寧に包装された本を受け取る。亜由美はお礼を言って足取り軽やかに自宅に帰った。
大事な本はリビングのテーブルにそっとおいて、着替えて作り置きの料理を温める。
テレビをつけニュースを確認しつつ、食事を済ませる。今日はゆっくりと本の世界に浸りたいので、片付けをしたらすぐにお風呂に入った。
髪を乾かしながら、メールアプリを確認する。特に新しいメッセージは入っていないようだ。
鷹條は今、警護の関係で遠方の県に出張中でメールアプリでの連絡もなかなか既読にならなかったり、亜由美が気づかない間に返信があったりする。
それでも自宅に帰ると連絡するようにはしていた。いろんなトラブルがあって鷹條との交際に発展した経緯もあって、とても心配されてしまうのだ。
86
お気に入りに追加
161
あなたにおすすめの小説
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
日下奈緒
恋愛
課長としてキャリアを積む恭香。
若い恋人とラブラブだったが、その恋人に捨てられた。
40歳までには結婚したい!
婚活を決意した恭香を口説き始めたのは、同期で仲のいい柊真だった。
今更あいつに口説かれても……
イケメンエリート軍団の籠の中
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり
女子社員募集要項がネットを賑わした
1名の採用に300人以上が殺到する
松村舞衣(24歳)
友達につき合って応募しただけなのに
何故かその超難関を突破する
凪さん、映司さん、謙人さん、
トオルさん、ジャスティン
イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々
でも、なんか、なんだか、息苦しい~~
イケメンエリート軍団の鳥かごの中に
私、飼われてしまったみたい…
「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる
他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「絶対にキモチイイと言わせてやる」
私に多額の借金を背負わせ、彼氏がいなくなりました!?
ヤバい取り立て屋から告げられた返済期限は一週間後。
少しでもどうにかならないかとキャバクラに体験入店したものの、ナンバーワンキャバ嬢の恨みを買い、騒ぎを起こしてしまいました……。
それだけでも絶望的なのに、私を庇ってきたのは弊社の御曹司で。
副業がバレてクビかと怯えていたら、借金の肩代わりに妊娠を強要されたんですが!?
跡取り身籠もり条件の愛のない関係のはずなのに、御曹司があまあまなのはなぜでしょう……?
坂下花音 さかしたかのん
28歳
不動産会社『マグネイトエステート』一般社員
真面目が服を着て歩いているような子
見た目も真面目そのもの
恋に関しては夢を見がちで、そのせいで男に騙された
×
盛重海星 もりしげかいせい
32歳
不動産会社『マグネイトエステート』開発本部長で御曹司
長男だけどなにやら訳ありであまり跡取りとして望まれていない
人当たりがよくていい人
だけど本当は強引!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる