遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました

如月 そら

文字の大きさ
上 下
31 / 83
8.大事なことは言いましょう

大事なことは言いましょう②

しおりを挟む
 好きな人は大事にすると言った鷹條の言葉は信頼に足るものだったし、それ以上に優しくて甘い。

「どうしよう……すごく、好き……」
「うん。俺もすごく、好きだ」
 そう言った鷹條の顔が近づいた。

 何度も何度も唇が重なる。緩く触れ合って、その度に鼓動が大きくなってゆくのを亜由美は感じた。

 強そうに見えても弱い亜由美も、大人びて見えても女子っぽい可愛いものが大好きな亜由美も鷹條は全部全部受け入れてくれる。

 この人の前で、背伸びしたり見栄張ったり、頑張りすぎなくていい。
 そう思うとつい目が潤んでしまう。

「意外と泣き虫だよな? それとも本当は嫌? 俺とはこういうことしたくない?」

 そう言って優しく鷹條は亜由美の頬に触れてくれる。
 聞かれた亜由美は慌てて首を横に振った。

「やじゃ……ない」
 ふっと微笑んで口角の上がった鷹條の唇が亜由美の口元から頬、頬から耳元、そして首元へと徐々に降りてゆく。

 ブラウスのボタンが外されて胸元に手と唇が触れた。その優しい手つきに思わず声が漏れてしまう。

「んっ……あ」
 それが恥ずかしくて慌てて口元を抑えた。
 聞いたこともないような甘えた声で、自分がそんな声を出すなんて思わなかった。

「やじゃない……んだよな?」
 目線が絡み合って、鷹條からは優しいだけではなくて情欲を含んだ瞳で見つめられていることに亜由美は気づく。恥ずかしいよりそんな瞳で見られることが嬉しかった。

 いつもは表情を変えない鷹條の欲情にあふれた、堪えきれない表情には胸が高鳴る。
 やじゃないのは事実なので、こくんとうなずく。

「やじゃないなら、声も聞かせて。俺、亜由美の声も好きだ」
「呆れ……ないでね?」

 そう言った亜由美にはーっと大きなため息の音が聞こえた。そしてぎゅうっと抱かれる。

「呆れるわけがないだろう。俺の彼女、可愛すぎて困るくらいなのに」

 買いかぶりすぎなのでは? と思うが、鷹條はとても真剣に見える。

 亜由美の上にいる鷹條は脱いだジャケットをベッドの下に放り投げ、着ていた黒いTシャツもかなぐり捨てるように脱いだ。
 その下から現れた見事な裸体はまるでギリシャの彫像のようだった。

「ん? なに?」
 つい、じーっと見つめてしまって、その視線に気づいた鷹條が戸惑ったように亜由美に視線を落とす。

「だって……すごく、カッコいい」
「多少は、鍛えているからな? 亜由美にそんな目で見られるのは悪くない」
 軽々と亜由美を抱き上げられるわけだ。

「亜由美のも見たい」
 ブラウスを脱がせて、ブラジャーのホックを外される。するりとブラジャーを外されたら、なんだかとても心もとない気がした。

 思わず胸元を抑えてしまうと、くすりと笑われる。その手に鷹條の指が絡んだら、きゅっと繋ぎたくなってしまって、胸元はあっという間に暴かれてしまった。

「亜由美も綺麗」
 見られていることに恥ずかしくてどきどきしているはずなのに、綺麗と言われて下腹部がきゅうっと熱くなった。

 鷹條は亜由美の上になり、その腕の中に亜由美を捉える。
「怖い?」
 亜由美はふるふるっと首を横に振った。
 鷹條にされることで怖いことなんかない。

「良かった」
 安心したように微笑む鷹條の顔が近づいた。そっと亜由美の唇と重なる。

 一気に二人の距離がなくなって、肌と肌が触れ合う。唇の重なる感触も、肌の触れ合う感触も、どちらも亜由美を戸惑わせるほどに感じさせられてしまっていた。

 重なり合うだけだった唇の隙間から鷹條の熱い舌が亜由美を追って、少しでも弱いところを見つけられるとそこを執拗にねぶられる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

知らずに双子パパになっていた御曹司社長は、愛する妻子を溺愛したい

及川 桜
恋愛
児童養護施設の学習ボランティアにとんでもない男が入ってきた!? 眉目秀麗、高学歴、おまけに財閥御曹司。 不愛想でいけすかない奴だと思っていたのに、どんどん惹かれていって・・・ 子どもができたことは彼には内緒。 誰よりも大切なあなたの将来のために。

優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~

けいこ
恋愛
人生に疲れ、自暴自棄になり、私はいろんなことから逃げていた。 してはいけないことをしてしまった自分を恥ながらも、この関係を断ち切れないままでいた。 そんな私に、ひょんなことから同居生活を始めた個性的なイケメン男子達が、それぞれに甘く優しく、大人の女の恋心をくすぐるような言葉をかけてくる… ピアノが得意で大企業の御曹司、山崎祥太君、24歳。 有名大学に通い医師を目指してる、神田文都君、23歳。 美大生で画家志望の、望月颯君、21歳。 真っ直ぐで素直なみんなとの関わりの中で、ひどく冷め切った心が、ゆっくり溶けていくのがわかった。 家族、同居の女子達ともいろいろあって、大きく揺れ動く気持ちに戸惑いを隠せない。 こんな私でもやり直せるの? 幸せを願っても…いいの? 動き出す私の未来には、いったい何が待ち受けているの?

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

処理中です...