69 / 87
16.絆を深めること
絆を深めること①
しおりを挟む
『絆を深めたい・永遠に繋がっていたい』
そんな意味ではなかった。
浅緋が見たサイトと、片倉が見たサイトは違っていたのかもしれない。
片倉が見たものには、輪になったアクセサリーは基本的に独占欲を意味する、と書いてあったのだ。
その通りだ。
片倉は浅緋を独占したい。
──あなたは僕だけのものだと感じたい。
けれど浅緋が見たサイトの方が意味としては気に入ったし、浅緋がそう思ってくれたのなら、それは片倉には嬉しいことだった。
プレゼントの意味は他にもあった。
最初はネックレス。
それをつける片倉との距離感に慣れてもらうこと。
浅緋が素直に背を向けた時、片倉は思わず微笑みそうになった。
ネックレスをつけるためには、首元の髪をよけ、首元に触れなくてはいけない。
浅緋がそれを許したことに、とてつもない喜びを感じたのだ。
そうして、ネックレスに触れるという口実を作りながら、何度も触れた。
嫌がってはいないし、浅緋が慣れてくれようとしていることも感じて、本当にとても嬉しかったのだ。キスにも、触れることにも少しずつ慣れてほしい。
怖がらせたり、嫌なことは一切したくない。
大事な大事な人なのだ。
意味はあった。
距離を縮めることだ。
さすがに園村が思慮深いと言うだけあって、浅緋は正しくその意味を理解した。
しかも、片倉が思っていた以上に。
──心臓が破れそう……。
いや、口から出るかもしれない。
それくらいに、浅緋は今まで経験したことがないくらい、激しく鼓動が鳴っていた。
片倉は今までだって大事にしてくれていた。
これ以上はないほどに。
そうして、浅緋に心の準備が出来るのも待ってくれた。
この人なら大丈夫。
ベッドに横たわっている浅緋を、上から見つめている片倉に浅緋はひたすらドキドキしてしまう。
いつも精悍で整った顔立ちだとは思うけれど、甘やかで、これほどまでに嫣然とした表情は見たことがなくて。
「浅緋……」
その声を聞くだけで、自然に浅緋の瞳が潤んでしまう。
──どうしよう。とても好きだわ。
「怖い?」
そんな浅緋を見る片倉の瞳はこの上なく優しい。
「怖いはずなんて、ありません。ただ……嬉しいだけなんです。慎也さん、大好きです。とても好きなんです」
浅緋は自分から手を伸ばして、きゅっと片倉に抱きつく。
片倉は甘く浅緋の顔を覗き込みながら、そっと顔に触れる。
「僕も大好きだ。浅緋がこの世で一番好きで、一番大事。浅緋さえいてくれたら、他に何もいらない」
囁くような甘い声が浅緋の耳をくすぐる。
最初に会った時から、良く通って響く声の持ち主だと思っていたけれど、こんな時はくすぐるように優しいのだと知った。
「この世で一番……なんて……」
浅緋がくすくす笑うと、片倉は嬉しそうな顔になる。
「本当のことですよ? 浅緋……」
帰ってきてジャケットを脱いだままの片倉が、浅緋の上で首元に指を入れ、ネクタイを外す。
そうして、軽く折り畳んでそれをサイドテーブルに置いた。
その手が浅緋の髪を撫でる。
「大事にしますから、浅緋が欲しい。ずっとずっと欲しかった」
その撫でる手が心地良い。
ふ……と片倉が笑う気配がする。
「不思議だな。あなたが僕に撫でることを許してくれてる」
「だって……、慎也さんですもの」
「浅緋……」
そんな意味ではなかった。
浅緋が見たサイトと、片倉が見たサイトは違っていたのかもしれない。
片倉が見たものには、輪になったアクセサリーは基本的に独占欲を意味する、と書いてあったのだ。
その通りだ。
片倉は浅緋を独占したい。
──あなたは僕だけのものだと感じたい。
けれど浅緋が見たサイトの方が意味としては気に入ったし、浅緋がそう思ってくれたのなら、それは片倉には嬉しいことだった。
プレゼントの意味は他にもあった。
最初はネックレス。
それをつける片倉との距離感に慣れてもらうこと。
浅緋が素直に背を向けた時、片倉は思わず微笑みそうになった。
ネックレスをつけるためには、首元の髪をよけ、首元に触れなくてはいけない。
浅緋がそれを許したことに、とてつもない喜びを感じたのだ。
そうして、ネックレスに触れるという口実を作りながら、何度も触れた。
嫌がってはいないし、浅緋が慣れてくれようとしていることも感じて、本当にとても嬉しかったのだ。キスにも、触れることにも少しずつ慣れてほしい。
怖がらせたり、嫌なことは一切したくない。
大事な大事な人なのだ。
意味はあった。
距離を縮めることだ。
さすがに園村が思慮深いと言うだけあって、浅緋は正しくその意味を理解した。
しかも、片倉が思っていた以上に。
──心臓が破れそう……。
いや、口から出るかもしれない。
それくらいに、浅緋は今まで経験したことがないくらい、激しく鼓動が鳴っていた。
片倉は今までだって大事にしてくれていた。
これ以上はないほどに。
そうして、浅緋に心の準備が出来るのも待ってくれた。
この人なら大丈夫。
ベッドに横たわっている浅緋を、上から見つめている片倉に浅緋はひたすらドキドキしてしまう。
いつも精悍で整った顔立ちだとは思うけれど、甘やかで、これほどまでに嫣然とした表情は見たことがなくて。
「浅緋……」
その声を聞くだけで、自然に浅緋の瞳が潤んでしまう。
──どうしよう。とても好きだわ。
「怖い?」
そんな浅緋を見る片倉の瞳はこの上なく優しい。
「怖いはずなんて、ありません。ただ……嬉しいだけなんです。慎也さん、大好きです。とても好きなんです」
浅緋は自分から手を伸ばして、きゅっと片倉に抱きつく。
片倉は甘く浅緋の顔を覗き込みながら、そっと顔に触れる。
「僕も大好きだ。浅緋がこの世で一番好きで、一番大事。浅緋さえいてくれたら、他に何もいらない」
囁くような甘い声が浅緋の耳をくすぐる。
最初に会った時から、良く通って響く声の持ち主だと思っていたけれど、こんな時はくすぐるように優しいのだと知った。
「この世で一番……なんて……」
浅緋がくすくす笑うと、片倉は嬉しそうな顔になる。
「本当のことですよ? 浅緋……」
帰ってきてジャケットを脱いだままの片倉が、浅緋の上で首元に指を入れ、ネクタイを外す。
そうして、軽く折り畳んでそれをサイドテーブルに置いた。
その手が浅緋の髪を撫でる。
「大事にしますから、浅緋が欲しい。ずっとずっと欲しかった」
その撫でる手が心地良い。
ふ……と片倉が笑う気配がする。
「不思議だな。あなたが僕に撫でることを許してくれてる」
「だって……、慎也さんですもの」
「浅緋……」
1
お気に入りに追加
461
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。
クリスマスに咲くバラ
篠原怜
恋愛
亜美は29歳。クリスマスを目前にしてファッションモデルの仕事を引退した。亜美には貴大という婚約者がいるのだが今のところ結婚はの予定はない。彼は実業家の御曹司で、年下だけど頼りになる人。だけど亜美には結婚に踏み切れない複雑な事情があって……。■2012年に著者のサイトで公開したものの再掲です。
出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
玖羽 望月
恋愛
親族に代々議員を輩出するような家に生まれ育った鷹柳実乃莉は、意に沿わぬお見合いをさせられる。
なんとか相手から断ってもらおうとイメージチェンジをし待ち合わせのレストランに向かった。
そこで案内された席にいたのは皆上龍だった。
が、それがすでに間違いの始まりだった。
鷹柳 実乃莉【たかやなぎ みのり】22才
何事も控えめにと育てられてきたお嬢様。
皆上 龍【みなかみ りょう】 33才
自分で一から始めた会社の社長。
作中に登場する職業や内容はまったくの想像です。実際とはかけ離れているかと思います。ご了承ください。
初出はエブリスタにて。
2023.4.24〜2023.8.9
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
18話、加筆修正しました。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる