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15.プレゼントの意味
プレゼントの意味⑤
しおりを挟む浅緋が傷つくことも、嫌がることも絶対にしない。
ただ、ひたすらに浅緋のことを想って大切にしてくれる人。
ゆっくり近づいた浅緋は片倉の唇に自分の唇をそっと重ね合わせた。
そうして、少しだけちゅ……と音をさせる。
その音に反応したかのように、浅緋の手に自分の手を重ねていた片倉が、浅緋をきゅうっと抱きしめた。
前と同じように深くなったキスは、浅緋の舌と片倉の舌が何度も絡み合うものだ。
その擦れあう感覚に背中が痺れるような感じになるのも前と同じだ。
むしろ、前よりも浅緋はとろけそうな心地になった。
もう絡み合う、と言うよりも蹂躙されているかのような、その刺激に浅緋の身体から力が抜けていってしまう。
とさっ……と音がしたのは、浅緋がベッドに倒れた音で、片倉は浅緋の両手を握って上から浅緋を見ていた。
熱に浮かされたような瞳は、普段は見ないものだった。
「浅緋……」
名前を呼ばれるだけで、身体がぞくんとすることがあるなんて、知らなかった。
「……っあ……」
唇を重ねた片倉が、その唇を頬に滑らせ、浅緋の首元に軽く口付けする。
「怖い……?」
片倉の唇が首元に触れた時、思ったよりもぞくんっとして、足元がもどかしいような、心もとないような気持ちになったのだ。
だからつい、ぎゅうっと目を瞑ってしまっていた浅緋の顔を心配げに片倉が覗き込んでいた。
一生懸命考えたプレゼントの意味を伝えなくては、と浅緋は必死で口を開く。
「あの……っ、プレゼントの意味を考えてみたんです」
「ふん……?」
そんなことを言っても、浅緋の上から片倉が退いてくれる気配はなかった。
浅緋はそのままで話し始める。
「ネックレスの贈り物は『絆を深めたい・永遠に繋がっていたい』でした。香水は『親密になりたい・独占したい』だったんです」
「ああ、なるほどね」
浅緋を見ている片倉の瞳が、今度は期待感のようなものできらきらしている気がした。
「その意味を私に伝えようとしてくださっていて、そして、私とこうやって触れ合うことに心の準備ができるように少しずつ、慣らしてくださっているのかと……。それがプレゼントの意味なんだと思いました」
キスすらも初めてだった浅緋から、キスできるように。
触れ合うことはこういうことなんだと、片倉は言葉を使わずに浅緋に伝え続けていた。
ゆっくり、浅緋のペースに合わせて。
そして、浅緋がそれに気づくように。
浅緋は繋がっている両手をきゅっと握って、片倉に笑いかける。
「慎也さん、私に甘いです……」
「甘くもなる」
苦笑した片倉が、コツっと浅緋と額を重ねた。
「こんな可愛いことを言う婚約者に甘くならない訳がない。こんなに最速で最適解を出すとは思ってなかったよ。プレゼントはまだあったのにな」
「え? そうなんですか?」
「うん。これ以降のプレゼントは意味とか考えなくていいから純粋に楽しんでくれたらいいよ。気持ちは伝わっているようだ」
「はい……」
その日が今日でも大丈夫。
浅緋は真っ直ぐに片倉を見つめた。
──ああ……綺麗だな。
どれだけ待ち侘びたか。
浅緋が真っ直ぐに自分を見てくれて、その全てに触れることができるこの時を。
「抱いて、いいかな?」
その片倉の言葉に、はい。と浅緋は答えたのだった。
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