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15.プレゼントの意味
プレゼントの意味④
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浅緋が香水に対して持っていた、ツンとする香りのイメージとは全く違うものだった。
清廉で爽やかで上品。
しかも、少し香りが飛ぶと、ほんの少しの甘さとリラックスできそうなグリーン系の良い香りになるのだ。
これならば、浅緋でも使えるかも、というものだった。
それにしても片倉の慧眼には恐れいるばかりだ。
確実に浅緋が拒否しなくて、素敵だと思うものをプレゼントしてくれている。
──すごく、いい香り。
片倉の中でこのイメージが浅緋のイメージなのだとするととても嬉しい。
きっと、今日も起きて待っていても怒られないはずだ。
早く、帰ってこないかしら……。
早く会ってとても嬉しいとお礼を言いたい。
けれど、それは『お礼』もしなくてはいけない、ということでもあって。
それに気づいた浅緋は急に顔が熱くなる。
その熱くなった頬を押さえて、浅緋は首を横に振った。
いえ!あの……その、別にすごくキスしたいとかそういうことではなくて……。
誰にともなく言い訳を始める浅緋だ。
ふう……と口から漏れてしまったため息は、意図せず熱っぽいものになってしまったような気がした。
片倉とのキスは嫌ではない。
むしろ、訳が分からなくなるくらいふわふわするし、最近はすごく自分がとろけてしまうような心地になってしまうのも認める。
キスだけではなくて意味がある……。
このプレゼントが始まった意味。
浅緋はネックレスのプレゼントの意味を検索してみた。
出てきたのは、『絆を深めたい・永遠に繋がっていたい』意味を持つという回答だ。
思わず浅緋はスマホをぎゅっと握ってしまった。
──香水を送る意味は?
こちらは『親密になりたい・独占したい』になっている。
どちらも似たような意味のような気がした。
片倉が伝えたいことはこれなんだろうか?
「ただいま」
玄関で声がしたので、浅緋は考えを中断させて、寝室のドアを開けた。
「慎也さん、お帰りなさい」
「ただいま。……ん、いい香り、早速つけてくれたんだ」
「はい」
どれ……と両手で浅緋の肩を抱き寄せて、片倉が首の辺りに顔を近づける。
すう……っと息を吸っている気配がして、浅緋は身体がぴくんと揺れてしまった。
そんな風に自分の匂いを異性に嗅がれたことはないからだ。
「うん。やはり、浅緋に似合う香りだったね」
「ええ。とてもいい香りで、嬉しいです」
「イリスって言うんだって」
そう言った片倉は、浅緋をベッドに誘導して、また横に座る。
「イリス……」
「ニオイアヤメの根から抽出されるとても希少価値の高い香料らしいよ。けれど、希少価値そのものよりも、この香りが、浅緋に合うだろうと思ったんだ」
また、近づいた片倉が嬉しそうに、浅緋の香りを嗅いでいる。
そして、首元にその息がかかって、浅緋はぎゅっと自分の手を強く握ってしまった。
その上から、片倉がそっと手を添える。
「浅緋、お返しのキスをくれる?」
そうなのだ。お礼はキスで。
そう言われているのだった。
眼鏡を外した片倉が浅緋をじっと見て、柔らかく首を傾げた。
「出来る?」
「はい」
大丈夫。だって、慎也さんなのだもの。
浅緋が大好きで、ずっと一緒にいたい人なのだ。
こんな風に優しく浅緋を見守ってくれる人だ。
清廉で爽やかで上品。
しかも、少し香りが飛ぶと、ほんの少しの甘さとリラックスできそうなグリーン系の良い香りになるのだ。
これならば、浅緋でも使えるかも、というものだった。
それにしても片倉の慧眼には恐れいるばかりだ。
確実に浅緋が拒否しなくて、素敵だと思うものをプレゼントしてくれている。
──すごく、いい香り。
片倉の中でこのイメージが浅緋のイメージなのだとするととても嬉しい。
きっと、今日も起きて待っていても怒られないはずだ。
早く、帰ってこないかしら……。
早く会ってとても嬉しいとお礼を言いたい。
けれど、それは『お礼』もしなくてはいけない、ということでもあって。
それに気づいた浅緋は急に顔が熱くなる。
その熱くなった頬を押さえて、浅緋は首を横に振った。
いえ!あの……その、別にすごくキスしたいとかそういうことではなくて……。
誰にともなく言い訳を始める浅緋だ。
ふう……と口から漏れてしまったため息は、意図せず熱っぽいものになってしまったような気がした。
片倉とのキスは嫌ではない。
むしろ、訳が分からなくなるくらいふわふわするし、最近はすごく自分がとろけてしまうような心地になってしまうのも認める。
キスだけではなくて意味がある……。
このプレゼントが始まった意味。
浅緋はネックレスのプレゼントの意味を検索してみた。
出てきたのは、『絆を深めたい・永遠に繋がっていたい』意味を持つという回答だ。
思わず浅緋はスマホをぎゅっと握ってしまった。
──香水を送る意味は?
こちらは『親密になりたい・独占したい』になっている。
どちらも似たような意味のような気がした。
片倉が伝えたいことはこれなんだろうか?
「ただいま」
玄関で声がしたので、浅緋は考えを中断させて、寝室のドアを開けた。
「慎也さん、お帰りなさい」
「ただいま。……ん、いい香り、早速つけてくれたんだ」
「はい」
どれ……と両手で浅緋の肩を抱き寄せて、片倉が首の辺りに顔を近づける。
すう……っと息を吸っている気配がして、浅緋は身体がぴくんと揺れてしまった。
そんな風に自分の匂いを異性に嗅がれたことはないからだ。
「うん。やはり、浅緋に似合う香りだったね」
「ええ。とてもいい香りで、嬉しいです」
「イリスって言うんだって」
そう言った片倉は、浅緋をベッドに誘導して、また横に座る。
「イリス……」
「ニオイアヤメの根から抽出されるとても希少価値の高い香料らしいよ。けれど、希少価値そのものよりも、この香りが、浅緋に合うだろうと思ったんだ」
また、近づいた片倉が嬉しそうに、浅緋の香りを嗅いでいる。
そして、首元にその息がかかって、浅緋はぎゅっと自分の手を強く握ってしまった。
その上から、片倉がそっと手を添える。
「浅緋、お返しのキスをくれる?」
そうなのだ。お礼はキスで。
そう言われているのだった。
眼鏡を外した片倉が浅緋をじっと見て、柔らかく首を傾げた。
「出来る?」
「はい」
大丈夫。だって、慎也さんなのだもの。
浅緋が大好きで、ずっと一緒にいたい人なのだ。
こんな風に優しく浅緋を見守ってくれる人だ。
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