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15.プレゼントの意味
プレゼントの意味③
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「あの……慎也さん、お仕事中なので……っ」
「うん。僕がプレゼントしたネックレス、つけているかなって」
あれから浅緋はお風呂に入る時以外はネックレスを外さないのだ。
「はい。外していません」
そう言って、浅緋は確認するように首元を指で撫でる。最近こうして手でネックレスに触れるのが、癖のようになってしまった。
目の前の片倉も、その浅緋の首元を撫でる。
急に首元を撫でられて、浅緋は身体がふるっ、と揺れてしまうのを感じた。
「本当だね。ちゃんとつけてくれている」
ネックレスに触れるだけなのに、なぜ毎回こんなにドキドキしてしまうのだろうか。
「ねえ、浅緋? 今日もプレゼントがあるから、ベッドを確認してみてね」
「え⁉︎ 今日もですか?」
プレゼント、しすぎなのではないだろうか……。
「私もいい加減お礼しなくては……」
「ダメ。浅緋からのお礼は僕がもう決めているから」
そんなことを言って浅緋を見る片倉の表情が艶を含んでいる。
そして、浅緋のネックレスを指で掬って、少しだけ屈むとそれに軽く口付けたのだ。
浅緋の胸がきゅっとする。
「それって……」
「うん。浅緋からのお礼はキスだよ」
まさか、キスだけのためにプレゼントしている訳ではないと思うが。
「後でいいよ。でもお礼だからね。ちゃんともらうから」
「あの……っ、キスだけのためではない、ですよね?」
「うん。違う。けど、僕は意味のないことはしない」
眼鏡の奥の理知的な瞳がきらりと光った。
意味が、あるのだわ。
キス以外の意味が。
「考えてみて? 浅緋」
ネックレスをきゅっと握った浅緋はイタズラっぽい顔をする片倉にこくん、と頷いた。
浅緋と入れ替わりに社長室に入ってきた槙野は、とんでもなく機嫌のいい片倉の姿を見た。
「なんかいいことあったか?」
応接セットのテーブルの上には、コーヒーが置いてある。
先ほどお茶をお願いしたが、浅緋が気を遣ってコーヒーを淹れてくれたことは槙野にも分かった。
それにしても、それだけでこんなに機嫌が良くなるものか?
「ああ。いいことがあったな。浅緋は真面目に仕事していることが分かったし、彼女が真剣に仕事している姿は……家にいる時とは違って、なんか良かったな」
「片倉、お前まさかそれだけのために来たんじゃないよな?」
「まさか」
そう言って片倉は笑ったけれど槙野は最近の片倉を見ていて、そうでもないとは言い切れないんじゃないか……と思い始めていた。
そうして、家に帰った浅緋は早速寝室に向かってみる。
ベッドの上にはこの前のクマが、今日は可愛い香水の瓶を持っていた。
忙しいはずの片倉が時間を作ってプレゼントを置きに来る。
確かに意味がありそうだ。
クマの持っている白色のパッケージには臙脂のリボンがかかっている。
品があって、シンプルなデザインだ。
──香水……?
浅緋も知っているブランドだったけれど、香水を出していることは知らなかった。
パッケージを開けてみると、中は透明の綺麗なボトルが入っていた。
箱もだけれど、中の瓶もとてもシンプルなデザインだ。
浅緋はぽん、と蓋を外して、スプレーしてみる。
花のような香りだけれど、パウダリーなシャボンのような香りもした。
「うん。僕がプレゼントしたネックレス、つけているかなって」
あれから浅緋はお風呂に入る時以外はネックレスを外さないのだ。
「はい。外していません」
そう言って、浅緋は確認するように首元を指で撫でる。最近こうして手でネックレスに触れるのが、癖のようになってしまった。
目の前の片倉も、その浅緋の首元を撫でる。
急に首元を撫でられて、浅緋は身体がふるっ、と揺れてしまうのを感じた。
「本当だね。ちゃんとつけてくれている」
ネックレスに触れるだけなのに、なぜ毎回こんなにドキドキしてしまうのだろうか。
「ねえ、浅緋? 今日もプレゼントがあるから、ベッドを確認してみてね」
「え⁉︎ 今日もですか?」
プレゼント、しすぎなのではないだろうか……。
「私もいい加減お礼しなくては……」
「ダメ。浅緋からのお礼は僕がもう決めているから」
そんなことを言って浅緋を見る片倉の表情が艶を含んでいる。
そして、浅緋のネックレスを指で掬って、少しだけ屈むとそれに軽く口付けたのだ。
浅緋の胸がきゅっとする。
「それって……」
「うん。浅緋からのお礼はキスだよ」
まさか、キスだけのためにプレゼントしている訳ではないと思うが。
「後でいいよ。でもお礼だからね。ちゃんともらうから」
「あの……っ、キスだけのためではない、ですよね?」
「うん。違う。けど、僕は意味のないことはしない」
眼鏡の奥の理知的な瞳がきらりと光った。
意味が、あるのだわ。
キス以外の意味が。
「考えてみて? 浅緋」
ネックレスをきゅっと握った浅緋はイタズラっぽい顔をする片倉にこくん、と頷いた。
浅緋と入れ替わりに社長室に入ってきた槙野は、とんでもなく機嫌のいい片倉の姿を見た。
「なんかいいことあったか?」
応接セットのテーブルの上には、コーヒーが置いてある。
先ほどお茶をお願いしたが、浅緋が気を遣ってコーヒーを淹れてくれたことは槙野にも分かった。
それにしても、それだけでこんなに機嫌が良くなるものか?
「ああ。いいことがあったな。浅緋は真面目に仕事していることが分かったし、彼女が真剣に仕事している姿は……家にいる時とは違って、なんか良かったな」
「片倉、お前まさかそれだけのために来たんじゃないよな?」
「まさか」
そう言って片倉は笑ったけれど槙野は最近の片倉を見ていて、そうでもないとは言い切れないんじゃないか……と思い始めていた。
そうして、家に帰った浅緋は早速寝室に向かってみる。
ベッドの上にはこの前のクマが、今日は可愛い香水の瓶を持っていた。
忙しいはずの片倉が時間を作ってプレゼントを置きに来る。
確かに意味がありそうだ。
クマの持っている白色のパッケージには臙脂のリボンがかかっている。
品があって、シンプルなデザインだ。
──香水……?
浅緋も知っているブランドだったけれど、香水を出していることは知らなかった。
パッケージを開けてみると、中は透明の綺麗なボトルが入っていた。
箱もだけれど、中の瓶もとてもシンプルなデザインだ。
浅緋はぽん、と蓋を外して、スプレーしてみる。
花のような香りだけれど、パウダリーなシャボンのような香りもした。
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