64 / 87
15.プレゼントの意味
プレゼントの意味①
しおりを挟む
浅緋は出社してくるとまず、社長である槙野宛ての文書の振り分けから始める。
社外社内問わず、会社の代表あてには一日で様々な文書が届く。
槙野に言われているのは、親展以外は全部開封して至急と対応要と不要に分けて欲しいということだ。
文書の振り分けの後はメールのチェックをする。
メールも同じくで、その振り分けだけでもかなりの時間がかかってしまうのだ。
ほとんどをパソコンからのメールで対応する槙野だが、ごく稀に、文書で返信することもあって、その際に宛先を書くのは浅緋の仕事だ。
子供の頃から毛筆を習っていた浅緋の字はとても綺麗だと好評らしい。
そんな風に仕事を進めていたら、社内がザワザワしだしたのを感じた。
──どうしたのかしら?
ふと、顔を上げた時、会社の入口に槙野や他の役員を伴って現れた片倉の姿を見つけて、浅緋は動けなくなってしまった。
え⁉︎慎也さん?
どうして?
朝、一緒に食事した時は何も言っていなかったはずだ。
片倉は槙野から何か説明を受けているのかうんうん、と頷いている。
他の役員も時折発言している様子なのが見てとれた。
とてもスマートなスーツ姿と真剣な表情、片倉が槙野に向かって何か言うと、役員が必死で頷いて中にはメモをとっている人もいた。
すごい……と浅緋は見とれてしまう。
あんな風に誰にも物怖じせず、指導力を発揮しているのが浅緋の婚約者なのだ。
浅緋はいつまでも見とれてしまいそうな片倉の姿から目を離して、手元の仕事を進めていく。
「浅緋、大丈夫? 槙野にいじめられてない?」
笑いを含んだ声で声をかけられて、浅緋はびくん、としてしまった。
先程までの厳しい顔とは違う、いつもの片倉だ。
おい!だれがいじめて……とか言う槙野を片倉は全く無視して、「いじめられたらいつでも言うんだよ」と笑っている。
つい、浅緋もくすりと笑ってしまった。
「慎也さん、槙野さんはいじめたりしませんよ?」
先ほどまでの緊迫した雰囲気はどこに行ったのかというくらい、2人の間に流れる空気は柔らかい。
社内の人たちは槙野も含め、浅緋と片倉が一緒にいるところは見たことがなかったのだ。
浅緋の事を愛おし気に見つめる片倉と、片倉の事を心から信頼している浅緋が片倉を見つめるその雰囲気は、誰も邪魔できないようなものだった。
スマートな片倉と清楚な浅緋は見ていてうっとりするようなカップルなのだ。
それまで、政略結婚では⁉︎という噂があったなど、この片倉の訪問でどこかに行ってしまっただろう。
それくらいに2人の雰囲気はお似合いで甘い。
片倉は浅緋に笑顔を向ける。
「何かあったらいつでも言ってくださいね」
浅緋はにっこり笑った。
「はい」
周りの同僚も浅緋が無防備な笑顔を向けるところなどあまり見たことがなくて、元々綺麗だとは思っていたけれど、あんな表情をするんだ、と浅緋の表情を見た人は驚いている。
「片倉CEO? みんな仕事に集中できなくなるんだが?」
槙野がそう声をかけると、片倉は出口の方に顔を向けた。
「ああ、悪い。じゃあ、浅緋、後でね」
それでも、浅緋に一言声をかけることは忘れない。
社外社内問わず、会社の代表あてには一日で様々な文書が届く。
槙野に言われているのは、親展以外は全部開封して至急と対応要と不要に分けて欲しいということだ。
文書の振り分けの後はメールのチェックをする。
メールも同じくで、その振り分けだけでもかなりの時間がかかってしまうのだ。
ほとんどをパソコンからのメールで対応する槙野だが、ごく稀に、文書で返信することもあって、その際に宛先を書くのは浅緋の仕事だ。
子供の頃から毛筆を習っていた浅緋の字はとても綺麗だと好評らしい。
そんな風に仕事を進めていたら、社内がザワザワしだしたのを感じた。
──どうしたのかしら?
ふと、顔を上げた時、会社の入口に槙野や他の役員を伴って現れた片倉の姿を見つけて、浅緋は動けなくなってしまった。
え⁉︎慎也さん?
どうして?
朝、一緒に食事した時は何も言っていなかったはずだ。
片倉は槙野から何か説明を受けているのかうんうん、と頷いている。
他の役員も時折発言している様子なのが見てとれた。
とてもスマートなスーツ姿と真剣な表情、片倉が槙野に向かって何か言うと、役員が必死で頷いて中にはメモをとっている人もいた。
すごい……と浅緋は見とれてしまう。
あんな風に誰にも物怖じせず、指導力を発揮しているのが浅緋の婚約者なのだ。
浅緋はいつまでも見とれてしまいそうな片倉の姿から目を離して、手元の仕事を進めていく。
「浅緋、大丈夫? 槙野にいじめられてない?」
笑いを含んだ声で声をかけられて、浅緋はびくん、としてしまった。
先程までの厳しい顔とは違う、いつもの片倉だ。
おい!だれがいじめて……とか言う槙野を片倉は全く無視して、「いじめられたらいつでも言うんだよ」と笑っている。
つい、浅緋もくすりと笑ってしまった。
「慎也さん、槙野さんはいじめたりしませんよ?」
先ほどまでの緊迫した雰囲気はどこに行ったのかというくらい、2人の間に流れる空気は柔らかい。
社内の人たちは槙野も含め、浅緋と片倉が一緒にいるところは見たことがなかったのだ。
浅緋の事を愛おし気に見つめる片倉と、片倉の事を心から信頼している浅緋が片倉を見つめるその雰囲気は、誰も邪魔できないようなものだった。
スマートな片倉と清楚な浅緋は見ていてうっとりするようなカップルなのだ。
それまで、政略結婚では⁉︎という噂があったなど、この片倉の訪問でどこかに行ってしまっただろう。
それくらいに2人の雰囲気はお似合いで甘い。
片倉は浅緋に笑顔を向ける。
「何かあったらいつでも言ってくださいね」
浅緋はにっこり笑った。
「はい」
周りの同僚も浅緋が無防備な笑顔を向けるところなどあまり見たことがなくて、元々綺麗だとは思っていたけれど、あんな表情をするんだ、と浅緋の表情を見た人は驚いている。
「片倉CEO? みんな仕事に集中できなくなるんだが?」
槙野がそう声をかけると、片倉は出口の方に顔を向けた。
「ああ、悪い。じゃあ、浅緋、後でね」
それでも、浅緋に一言声をかけることは忘れない。
1
お気に入りに追加
453
あなたにおすすめの小説
社長、嫌いになってもいいですか?
和泉杏咲
恋愛
ずっと連絡が取れなかった恋人が、女と二人きりで楽そうに話していた……!?
浮気なの?
私のことは捨てるの?
私は出会った頃のこと、付き合い始めた頃のことを思い出しながら走り出す。
「あなたのことを嫌いになりたい…!」
そうすれば、こんな苦しい思いをしなくて済むのに。
そんな時、思い出の紫陽花が目の前に現れる。
美しいグラデーションに隠された、花言葉が私の心を蝕んでいく……。
冷血弁護士と契約結婚したら、極上の溺愛を注がれています
朱音ゆうひ
恋愛
恋人に浮気された果絵は、弁護士・颯斗に契約結婚を持ちかけられる。
颯斗は美男子で超ハイスペックだが、冷血弁護士と呼ばれている。
結婚してみると超一方的な溺愛が始まり……
「俺は君のことを愛すが、愛されなくても構わない」
冷血サイコパス弁護士x健気ワーキング大人女子が契約結婚を元に両片想いになり、最終的に両想いになるストーリーです。
別サイトにも投稿しています(https://www.berrys-cafe.jp/book/n1726839)
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
優しい微笑をください~上司の誤解をとく方法
栗原さとみ
恋愛
仕事のできる上司に、誤解され嫌われている私。どうやら会長の愛人でコネ入社だと思われているらしい…。その上浮気っぽいと思われているようで。上司はイケメンだし、仕事ぶりは素敵過ぎて、片想いを拗らせていくばかり。甘々オフィスラブ、王道のほっこり系恋愛話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる