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13.ふたりの休日
ふたりの休日②
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そう言って、片倉は幸せそうに笑ってそっと浅緋の頬を指で辿る。
──そうでしょうか?
まるで平日の夜は触れていないかのようなことを言っているが、そんなことはないと浅緋は思う。
確かに帰りの遅い夜、片倉は自分のことは待たなくていいよ、むしろ待たないで。と言われているので、先に休ませてもらっている浅緋なのだが、最近は朝起きると抱き枕のようにきゅうっと抱き込まれていることがある。
「ん……起こした?」
そんな風に耳元で囁かれたり、
「浅緋、まだ早いよ」
と抱きしめ直されたりしてしまうのは、その……すごく、すごーくドキドキしてしまうんですけれども!
まだ早いと言われても二度寝することなんて、出来ない。
ドキドキと早鐘をうつ自分の鼓動を感じて、じっとしていることしか出来ないのだ。
それだって、パジャマ越しの片倉の肌の暖かさとか、しっかりした腕とか感じてしまって。
最近はその片倉の行動に、ドキドキというか、胸がきゅんとしてしまって、戸惑うばかりの浅緋なのである。
それはあの時の、あの深いキスをした時から感じる感覚と同じなのだけれど。
「迷うんだったら、やってみたらどうかな」
「え?」
つい、ぼうっと考え事をしてしまった浅緋に片倉が笑っている。
「何を考えていたの? 桜華会の件だよ?」
「あ、ああ、そうですね! 桜華会……え? やりますか?」
「ええ。個人の規模としては大きいけど、パーティというほどでもないと思うな。協力しますから。それに園村さんのご友人が楽しみにしていらっしゃったんでしょう?」
「はい……」
「迷うことはやってみよう?」
ねっ?と片倉は浅緋に首を傾げる。
片倉がこうやって浅緋を助けてくれることが浅緋には本当に有難く、嬉しい。
浅緋のことをいちばんに考えてくれていると、とても伝わるから。
片倉が側にいてくれるから、やってみようと思えるのだ。
「分かりました。では、そのように母に伝えます」
「そうして。僕もなんでも手伝うからね」
「はい」
そう言って、浅緋はにこっと笑う。
すると、片倉にきゅっと抱きしめられた。
「浅緋、デートしようか?」
浅緋の顔がぱあっと輝く。
「したいです!」
「普段は浅緋はお休みの日は何しているの?」
「え…っと、本屋さんとか雑貨屋さんが好きなんです。必ず買うとは限らないんですけど、見て歩くだけでも楽しいですし。そう言えば、この近くには本屋さんと雑貨屋さんが一緒になったお店が……なんで笑ってるんです?」
「可愛すぎて」
もちろん片倉は浅緋がショッピングなどと答えるわけもないとは分かっている。
それでも、こんな風に活き活きした表情を自分の目の前で見せてくれることが本当に嬉しいのだ。
「慎也さんは?」
「ん? 僕?」
「お休みの日は何してたんですか?」
「簡単に家事をして、だらっとして過ごす時もあったよ。家でも結構仕事の持ち込みがあったし。休日と言っても外出するようなことはあまりなかったな」
片倉の場合、本も読むけれど、購入は電子で済ませてしまうので本屋に行くことはほとんどない。
それでも、浅緋が立って本を選んでいる姿はきっと絵になるだろうと思うとそれは見てみたいような気がするのだ。
「じゃあ、ゆっくりします?」
それも惹かれるけれど、片倉は今日は本を選ぶ浅緋が見たい気分なのである。
──そうでしょうか?
まるで平日の夜は触れていないかのようなことを言っているが、そんなことはないと浅緋は思う。
確かに帰りの遅い夜、片倉は自分のことは待たなくていいよ、むしろ待たないで。と言われているので、先に休ませてもらっている浅緋なのだが、最近は朝起きると抱き枕のようにきゅうっと抱き込まれていることがある。
「ん……起こした?」
そんな風に耳元で囁かれたり、
「浅緋、まだ早いよ」
と抱きしめ直されたりしてしまうのは、その……すごく、すごーくドキドキしてしまうんですけれども!
まだ早いと言われても二度寝することなんて、出来ない。
ドキドキと早鐘をうつ自分の鼓動を感じて、じっとしていることしか出来ないのだ。
それだって、パジャマ越しの片倉の肌の暖かさとか、しっかりした腕とか感じてしまって。
最近はその片倉の行動に、ドキドキというか、胸がきゅんとしてしまって、戸惑うばかりの浅緋なのである。
それはあの時の、あの深いキスをした時から感じる感覚と同じなのだけれど。
「迷うんだったら、やってみたらどうかな」
「え?」
つい、ぼうっと考え事をしてしまった浅緋に片倉が笑っている。
「何を考えていたの? 桜華会の件だよ?」
「あ、ああ、そうですね! 桜華会……え? やりますか?」
「ええ。個人の規模としては大きいけど、パーティというほどでもないと思うな。協力しますから。それに園村さんのご友人が楽しみにしていらっしゃったんでしょう?」
「はい……」
「迷うことはやってみよう?」
ねっ?と片倉は浅緋に首を傾げる。
片倉がこうやって浅緋を助けてくれることが浅緋には本当に有難く、嬉しい。
浅緋のことをいちばんに考えてくれていると、とても伝わるから。
片倉が側にいてくれるから、やってみようと思えるのだ。
「分かりました。では、そのように母に伝えます」
「そうして。僕もなんでも手伝うからね」
「はい」
そう言って、浅緋はにこっと笑う。
すると、片倉にきゅっと抱きしめられた。
「浅緋、デートしようか?」
浅緋の顔がぱあっと輝く。
「したいです!」
「普段は浅緋はお休みの日は何しているの?」
「え…っと、本屋さんとか雑貨屋さんが好きなんです。必ず買うとは限らないんですけど、見て歩くだけでも楽しいですし。そう言えば、この近くには本屋さんと雑貨屋さんが一緒になったお店が……なんで笑ってるんです?」
「可愛すぎて」
もちろん片倉は浅緋がショッピングなどと答えるわけもないとは分かっている。
それでも、こんな風に活き活きした表情を自分の目の前で見せてくれることが本当に嬉しいのだ。
「慎也さんは?」
「ん? 僕?」
「お休みの日は何してたんですか?」
「簡単に家事をして、だらっとして過ごす時もあったよ。家でも結構仕事の持ち込みがあったし。休日と言っても外出するようなことはあまりなかったな」
片倉の場合、本も読むけれど、購入は電子で済ませてしまうので本屋に行くことはほとんどない。
それでも、浅緋が立って本を選んでいる姿はきっと絵になるだろうと思うとそれは見てみたいような気がするのだ。
「じゃあ、ゆっくりします?」
それも惹かれるけれど、片倉は今日は本を選ぶ浅緋が見たい気分なのである。
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