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7.浅緋の泣く場所
浅緋の泣く場所②
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「お待たせしてすみません」
そう言って個室に入ってきた浅緋は、今日は紺色の清楚なワンピースだった。
首元にシンプルなパールのネックレスが似合っている。
ふわりと揺れる髪と少しだけ慌てた様子なのが、とても可愛らしくて、片倉の口元には自然と笑みが浮かんでしまっていた。
先程仕事でささくれ立った気持ちが、ふわりと緩むのを感じる。
2人が揃ったので女将が挨拶に来てくれて、浅緋が馴染みなのであれば、やはりこの店は正解だったと思ったところだ。
「けれど、片倉様とお嬢様が懇意にされているとは存じませんでした」
その女将の声に、片倉は笑顔を向ける。
「僕は園村様にお嬢さんをお願いしますと、生前からお願いされていましたが……。浅緋さんはとても素敵な方ですし、僕はお嫁に来てほしいとお願いしているところなんです」
浅緋はふらふらと男性と会うような人ではないし、この会食は園村の意思でもあったということはハッキリさせておきたい。
「まあ……」
女将は笑顔になった。
「良かったわ。園村様がお亡くなりになったのはとても残念なことだけど、ご結婚はとても素敵なことですわね。お嬢様も頼り甲斐のある旦那様がお出来になるのだし、安心ですね。それは、おめでとうございます」
女将のお祝いの言葉に対して、ありがとうございますと片倉は頭を下げ、ふと見たら浅緋はどうしたらよいのか分からない様子で固まってしまっている。
女将におめでとうございますと言われて、怯んだような浅緋の顔を見ていたら、本当は結婚なんて嫌なのではないかと片倉は不安になった。
冷静に考えたら、聞いている浅緋の性格からしたら、亡き父との約束で来ているのかもしれないのに。
まだ浅緋は、父を亡くして日にちが浅い。
けれど、少しでも自分の存在が慰めになればいいのにと片倉は心から思う。
「浅緋さん?」
「はい」
とても小さな声。
けれど、聞きたかった声だ。
「お食事はお任せで構いませんか?」
「はい。結構です」
浅緋がひとつひとつの質問にとても丁寧に答えてくれる様子はとても好感が持てる。
人見知りでも社交性がない訳ではない。
──あんな笑顔を早く見せてくれたらいいのに。
片倉の心の中には、いつか園村が見せてくれたあの写真の笑顔の浅緋がいるから。
けれど笑顔になるのは、まだ今は無理でも仕方ないか、と思い直し、
「大丈夫ですか?」
そう聞いた。
「だ……いじょうぶです。ごめんなさい」
そう言って浅緋は俯いてしまった。
「まだ、いろいろおつらいですか? お食事できそうですか?」
「いえ。あの、父のことは大丈夫なんです。その……もともと入院期間もありましたし、その分覚悟もしていたので。ただ……そうですね、たまにまだ父が生きていて会社に行っているだけのような、病院に行けば会えるんじゃないかって思ったりすることは、ありますけど……」
「それは……」
聞いた片倉の方が言葉を失う。
それは、まだ受け止めきれていない、ということなんじゃないだろうか。
「つらいですね」
「そうなのかしら」
少し淡白な様子の浅緋の事が、逆に片倉は心配になった。
そう言って個室に入ってきた浅緋は、今日は紺色の清楚なワンピースだった。
首元にシンプルなパールのネックレスが似合っている。
ふわりと揺れる髪と少しだけ慌てた様子なのが、とても可愛らしくて、片倉の口元には自然と笑みが浮かんでしまっていた。
先程仕事でささくれ立った気持ちが、ふわりと緩むのを感じる。
2人が揃ったので女将が挨拶に来てくれて、浅緋が馴染みなのであれば、やはりこの店は正解だったと思ったところだ。
「けれど、片倉様とお嬢様が懇意にされているとは存じませんでした」
その女将の声に、片倉は笑顔を向ける。
「僕は園村様にお嬢さんをお願いしますと、生前からお願いされていましたが……。浅緋さんはとても素敵な方ですし、僕はお嫁に来てほしいとお願いしているところなんです」
浅緋はふらふらと男性と会うような人ではないし、この会食は園村の意思でもあったということはハッキリさせておきたい。
「まあ……」
女将は笑顔になった。
「良かったわ。園村様がお亡くなりになったのはとても残念なことだけど、ご結婚はとても素敵なことですわね。お嬢様も頼り甲斐のある旦那様がお出来になるのだし、安心ですね。それは、おめでとうございます」
女将のお祝いの言葉に対して、ありがとうございますと片倉は頭を下げ、ふと見たら浅緋はどうしたらよいのか分からない様子で固まってしまっている。
女将におめでとうございますと言われて、怯んだような浅緋の顔を見ていたら、本当は結婚なんて嫌なのではないかと片倉は不安になった。
冷静に考えたら、聞いている浅緋の性格からしたら、亡き父との約束で来ているのかもしれないのに。
まだ浅緋は、父を亡くして日にちが浅い。
けれど、少しでも自分の存在が慰めになればいいのにと片倉は心から思う。
「浅緋さん?」
「はい」
とても小さな声。
けれど、聞きたかった声だ。
「お食事はお任せで構いませんか?」
「はい。結構です」
浅緋がひとつひとつの質問にとても丁寧に答えてくれる様子はとても好感が持てる。
人見知りでも社交性がない訳ではない。
──あんな笑顔を早く見せてくれたらいいのに。
片倉の心の中には、いつか園村が見せてくれたあの写真の笑顔の浅緋がいるから。
けれど笑顔になるのは、まだ今は無理でも仕方ないか、と思い直し、
「大丈夫ですか?」
そう聞いた。
「だ……いじょうぶです。ごめんなさい」
そう言って浅緋は俯いてしまった。
「まだ、いろいろおつらいですか? お食事できそうですか?」
「いえ。あの、父のことは大丈夫なんです。その……もともと入院期間もありましたし、その分覚悟もしていたので。ただ……そうですね、たまにまだ父が生きていて会社に行っているだけのような、病院に行けば会えるんじゃないかって思ったりすることは、ありますけど……」
「それは……」
聞いた片倉の方が言葉を失う。
それは、まだ受け止めきれていない、ということなんじゃないだろうか。
「つらいですね」
「そうなのかしら」
少し淡白な様子の浅緋の事が、逆に片倉は心配になった。
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