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おまけのお話:その1
似た者同士①
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「むちゃくちゃ緊張した」
翠咲の実家に挨拶に行った帰り道、実家に来ると翠咲がよく行くというカフェに、二人で寄ることにした。
駅にほど近いそこは、ウッドデッキにパラソルが並べられている開放的なお店だ。
そこの椅子に深く座った陽平は、普段見たこともないような大きな息をついていた。
「お疲れ様ー。あははー、警察署に行っても襲われても動揺しない陽平さんが緊張するって、よっぽどなんだね」
陽平は普段はホットの飲み物を注文するのに、アイスを頼むところにその緊張度合いが現れている。
「喉がカラカラだよ」
「貴重な陽平さんだー」
「他人事のように言っているけれど、今度は翠咲の番なんだからな」
……うっ……面白がっている場合ではなかった。
「あれ……翠咲?」
ウッドデッキに面した道を通りかかったのは制服を着た少年で、今時の高校生らしく、首にはワイヤレスのヘッドホンをかけている。
「あ、晃希? あらーすごく身長が伸びてる‼︎」
少年と言っても身長は180センチ弱の陽平とほぼ変わらない。
翠咲によく似た柔らかげな茶色い髪と、重めにカットした前髪。二重のキリッとした目元がなかなかのイケメンだ。
「翠咲は変わんねーな」
「この歳になって身長が伸びるわけないでしょ⁉︎」
「まあ、そうか……」
顔立ちは翠咲に少し似て、整っているのだが……。
──この愛想のなさ、どこかで……。
自分だとは気づかない陽平だ。
「部活じゃなかったの?」
翠咲がおいでおいで、と呼ぶと晃希は素直にウッドデッキの階段を登ってきた。
「今は部活っていうか、別の活動してる」
「そうなんだー。あ、紹介するね。倉橋陽平さん。うちの会社の顧問弁護士で……えーと、恋人?」
「婚約者でいいんじゃないか?」
相変わらず自分たちの関係性を説明するのが上手くない翠咲に代わって、陽平が合いの手を入れてくれる。
「そうか! そうだね、うん。婚約者。結婚前提で彼と一緒に住むことになったんでうちの方に挨拶に来てくれたの」
晃希は陽平に向かって頭を下げた。
「そうなんだ。翠咲の弟の晃希と言います」
「倉橋陽平です」
陽平も晃希に軽く頭を下げる。
その時、陽平の携帯が着信を知らせた。
「愛梨沙だ」
「あ、出てあげて?」
「うん。ごめん」
そう言って席を陽平は席を立つ。
その様子を横目で見ながら、翠咲は晃希に話しかける。
「部活って聞いていたけど、違うの?」
「うん。今は違う」
翠咲は晃希に向かってカフェのメニューを渡す。晃希はそれを受け取って割と熱心にメニューを見ていた。
歳が離れているだけに接点はないが、仲は悪くない。晃希のこの淡々とした感じは小学校の高学年くらいからなのだ。
翠咲は知らなかったのだけれど小学校の低学年くらいまでは、晃希はそこそこ愛想が良かった。
しかし、この綺麗な顔立ちで争いが起き『晃希くんは私のよ! だって笑ってくれたもの‼︎』とか言われるに至って、笑顔が争いを生むなどと知らなかった晃希は、愛想良くするのをやめたのだ。
今でも引きこもれるものなら、引きこもりたいと思っている少年だ。
「部活、やっていたんだけど、興味ないやつまで入ってこようとするようになって、活動しにくくなっちゃって」
目を伏せて話す晃希は、陽平にも負けず劣らずの整った顔立ちだ。
「へー、そうなんだー。大変だったね」
「うん」
翠咲の実家に挨拶に行った帰り道、実家に来ると翠咲がよく行くというカフェに、二人で寄ることにした。
駅にほど近いそこは、ウッドデッキにパラソルが並べられている開放的なお店だ。
そこの椅子に深く座った陽平は、普段見たこともないような大きな息をついていた。
「お疲れ様ー。あははー、警察署に行っても襲われても動揺しない陽平さんが緊張するって、よっぽどなんだね」
陽平は普段はホットの飲み物を注文するのに、アイスを頼むところにその緊張度合いが現れている。
「喉がカラカラだよ」
「貴重な陽平さんだー」
「他人事のように言っているけれど、今度は翠咲の番なんだからな」
……うっ……面白がっている場合ではなかった。
「あれ……翠咲?」
ウッドデッキに面した道を通りかかったのは制服を着た少年で、今時の高校生らしく、首にはワイヤレスのヘッドホンをかけている。
「あ、晃希? あらーすごく身長が伸びてる‼︎」
少年と言っても身長は180センチ弱の陽平とほぼ変わらない。
翠咲によく似た柔らかげな茶色い髪と、重めにカットした前髪。二重のキリッとした目元がなかなかのイケメンだ。
「翠咲は変わんねーな」
「この歳になって身長が伸びるわけないでしょ⁉︎」
「まあ、そうか……」
顔立ちは翠咲に少し似て、整っているのだが……。
──この愛想のなさ、どこかで……。
自分だとは気づかない陽平だ。
「部活じゃなかったの?」
翠咲がおいでおいで、と呼ぶと晃希は素直にウッドデッキの階段を登ってきた。
「今は部活っていうか、別の活動してる」
「そうなんだー。あ、紹介するね。倉橋陽平さん。うちの会社の顧問弁護士で……えーと、恋人?」
「婚約者でいいんじゃないか?」
相変わらず自分たちの関係性を説明するのが上手くない翠咲に代わって、陽平が合いの手を入れてくれる。
「そうか! そうだね、うん。婚約者。結婚前提で彼と一緒に住むことになったんでうちの方に挨拶に来てくれたの」
晃希は陽平に向かって頭を下げた。
「そうなんだ。翠咲の弟の晃希と言います」
「倉橋陽平です」
陽平も晃希に軽く頭を下げる。
その時、陽平の携帯が着信を知らせた。
「愛梨沙だ」
「あ、出てあげて?」
「うん。ごめん」
そう言って席を陽平は席を立つ。
その様子を横目で見ながら、翠咲は晃希に話しかける。
「部活って聞いていたけど、違うの?」
「うん。今は違う」
翠咲は晃希に向かってカフェのメニューを渡す。晃希はそれを受け取って割と熱心にメニューを見ていた。
歳が離れているだけに接点はないが、仲は悪くない。晃希のこの淡々とした感じは小学校の高学年くらいからなのだ。
翠咲は知らなかったのだけれど小学校の低学年くらいまでは、晃希はそこそこ愛想が良かった。
しかし、この綺麗な顔立ちで争いが起き『晃希くんは私のよ! だって笑ってくれたもの‼︎』とか言われるに至って、笑顔が争いを生むなどと知らなかった晃希は、愛想良くするのをやめたのだ。
今でも引きこもれるものなら、引きこもりたいと思っている少年だ。
「部活、やっていたんだけど、興味ないやつまで入ってこようとするようになって、活動しにくくなっちゃって」
目を伏せて話す晃希は、陽平にも負けず劣らずの整った顔立ちだ。
「へー、そうなんだー。大変だったね」
「うん」
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