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15.フォンダンショコラな恋人
フォンダンショコラな恋人②
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こんな語彙力の崩壊している陽平はきっと誰も見たことがないだろう。
そう思うとふっと翠咲の表情も緩んでしまった。
「いいよ。結婚前提の同棲、ね」
「結婚してもいいんだって」
「だーからー、それは順序を経て、にしましょうね?倉橋弁護士?」
「明日、翠咲のご両親に挨拶に行く!」
「急に行ったら、びっくりしちゃうよ」
先日の沢口のことがあってから、陽平はことさらに翠咲に甘くなった。
──甘くなったというか過保護というか……。
その後、一度だけ翠咲は一人暮らししていた部屋に帰ったのだが、妙にさみしかったし、一人になると不安でもあった。
陽平と一緒にいることは、思いのほか楽しかったから。
だから、結局陽平に乞われるがまま、今の陽平のマンションに居着いてしまっていることも間違いのない事実なのだ。
いわく一人では危ない、また何があるか分からない、あげく僕が不安になるから目の届くところにいて、である。
心配してくれる人がいるのは嬉しい。
翠咲は最近は外見はともかく中身が熱くて甘い、この人に甘やかされるのは悪くないなあと思うようになったのだ。
「明日じゃなくてもいい。けど本気でご両親にご挨拶していいと思うならアポ取ってくれる?」
「いいよ」
アポ……って業務じゃないっていうのに……。
けれど、翠咲はすぐにその場で電話する。
『翠咲? どうしたの?』
電話に出た母親が急な翠咲からの電話に驚いていた。
「あ、お母さん? 急にごめんね。えーと、来週……」
陽平の顔に『今週!』と大きく書いてある。
「いや、今週末時間あるかな?お父さんも一緒に。晃希はいる?」
『あら……いいお話?ちょっと待ってね』
電話の向こうの母がやけに楽しそうな声になり、向こうで家族に確認してくれている声が受話器から漏れてきていた。
「晃希?」
陽平が首を傾げている。
「弟なの」
「弟さんいるのか」
「うん。私は大学生の時に家を出てしまっているし、年が離れているからあまり接点はないんだけどね。今、高校生くらいかなあ……」
「ふうん」
翠咲の年を考えると10歳ほども離れている。
確かにそれくらい離れていたら、接点はないのかもしれなかった。
翠咲は携帯をスピーカーにする。
そこへ母の声が聞こえてきた。
『翠咲? 晃希は部活があるから無理だけれど、お父さんと私はいるわよ。どなたかと一緒?』
横にいた陽平が声を出す。
「こんにちは」
『あらっ⁉︎ ご一緒なの? まあ! びっくりしたわ』
「突然すみません。私、翠咲さんと交際をさせて頂いております、倉橋陽平と申します」
もう名乗り方が完全に業務で、翠咲には
『突然すみません。私、翠咲さんの代理人をしております、弁護士の倉橋と申します』
と聞こえてしまって、おかしくて陽平の横で声が漏れないように笑い転げている翠咲なのだ。
『初めまして。翠咲の母です。あら、翠咲、本当にいいお話なのね? まぁー、嬉しいわ』
笑い転げている翠咲に無表情な顔を向けた陽平が、その身体をぎゅうっと抱きしめる。
その仕草に翠咲がドキマギしてしまうと、陽平は嬉しそうな顔になっていた。
「翠咲さんと結婚前提で一緒に住もうという話が出ていまして」
『あら、そうなの。でしたら今週末、お待ちしていますわ』
「お母さん、堅苦しいのはやめてね。私も陽平さんもそういうの、あまり得意じゃないから」
得意ではない、というのは堅苦しくなってしまうと、どこまでも業務になってしまいそうな怖さがあるからだ。
『はいはい』
電話の向こうでくすくす笑っている声が聞こえた。母は翠咲のことがよく分かっているからなのだろう。
その後日程や時間などの打ち合わせをして、翠咲は電話を切った。
そう思うとふっと翠咲の表情も緩んでしまった。
「いいよ。結婚前提の同棲、ね」
「結婚してもいいんだって」
「だーからー、それは順序を経て、にしましょうね?倉橋弁護士?」
「明日、翠咲のご両親に挨拶に行く!」
「急に行ったら、びっくりしちゃうよ」
先日の沢口のことがあってから、陽平はことさらに翠咲に甘くなった。
──甘くなったというか過保護というか……。
その後、一度だけ翠咲は一人暮らししていた部屋に帰ったのだが、妙にさみしかったし、一人になると不安でもあった。
陽平と一緒にいることは、思いのほか楽しかったから。
だから、結局陽平に乞われるがまま、今の陽平のマンションに居着いてしまっていることも間違いのない事実なのだ。
いわく一人では危ない、また何があるか分からない、あげく僕が不安になるから目の届くところにいて、である。
心配してくれる人がいるのは嬉しい。
翠咲は最近は外見はともかく中身が熱くて甘い、この人に甘やかされるのは悪くないなあと思うようになったのだ。
「明日じゃなくてもいい。けど本気でご両親にご挨拶していいと思うならアポ取ってくれる?」
「いいよ」
アポ……って業務じゃないっていうのに……。
けれど、翠咲はすぐにその場で電話する。
『翠咲? どうしたの?』
電話に出た母親が急な翠咲からの電話に驚いていた。
「あ、お母さん? 急にごめんね。えーと、来週……」
陽平の顔に『今週!』と大きく書いてある。
「いや、今週末時間あるかな?お父さんも一緒に。晃希はいる?」
『あら……いいお話?ちょっと待ってね』
電話の向こうの母がやけに楽しそうな声になり、向こうで家族に確認してくれている声が受話器から漏れてきていた。
「晃希?」
陽平が首を傾げている。
「弟なの」
「弟さんいるのか」
「うん。私は大学生の時に家を出てしまっているし、年が離れているからあまり接点はないんだけどね。今、高校生くらいかなあ……」
「ふうん」
翠咲の年を考えると10歳ほども離れている。
確かにそれくらい離れていたら、接点はないのかもしれなかった。
翠咲は携帯をスピーカーにする。
そこへ母の声が聞こえてきた。
『翠咲? 晃希は部活があるから無理だけれど、お父さんと私はいるわよ。どなたかと一緒?』
横にいた陽平が声を出す。
「こんにちは」
『あらっ⁉︎ ご一緒なの? まあ! びっくりしたわ』
「突然すみません。私、翠咲さんと交際をさせて頂いております、倉橋陽平と申します」
もう名乗り方が完全に業務で、翠咲には
『突然すみません。私、翠咲さんの代理人をしております、弁護士の倉橋と申します』
と聞こえてしまって、おかしくて陽平の横で声が漏れないように笑い転げている翠咲なのだ。
『初めまして。翠咲の母です。あら、翠咲、本当にいいお話なのね? まぁー、嬉しいわ』
笑い転げている翠咲に無表情な顔を向けた陽平が、その身体をぎゅうっと抱きしめる。
その仕草に翠咲がドキマギしてしまうと、陽平は嬉しそうな顔になっていた。
「翠咲さんと結婚前提で一緒に住もうという話が出ていまして」
『あら、そうなの。でしたら今週末、お待ちしていますわ』
「お母さん、堅苦しいのはやめてね。私も陽平さんもそういうの、あまり得意じゃないから」
得意ではない、というのは堅苦しくなってしまうと、どこまでも業務になってしまいそうな怖さがあるからだ。
『はいはい』
電話の向こうでくすくす笑っている声が聞こえた。母は翠咲のことがよく分かっているからなのだろう。
その後日程や時間などの打ち合わせをして、翠咲は電話を切った。
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