フォンダンショコラな恋人

如月 そら

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14.「おれおれって……詐欺ですか?」

「おれおれって……詐欺ですか?」④

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「あいつ……なんも持ってなくて良かった。それに偶然でも目の前で助けられて、本当に良かった……」

心から安心したような声に翠咲はとても嬉しくなる。
翠咲は陽平の腕にぎゅうっと抱きついた。

「陽平さん、ありがと」
「うん」

しかし、陽平の凄いところはそこだけではなくて、その後警察署についてからも、テキパキと手続きを進め、翠咲に被害届の提出を指導し、なんとあの状況でICレコーダーまで作動させていたと証拠物件まで提出してきたのだ。

──ほんっとうにこの人、敵に回したくない!!

そう思ったのは翠咲だけではないはずだ。
多分、対応した警察官もそれは思っただろう。



その後、マンションに帰りついたのは夜中だった。

翠咲はぐったりだったけれど、陽平は思いのほか通常通りで、翠咲をリビングのソファに座らせ、お風呂の準備をし、この前の温かいロイヤルミルクティーを作ってくれた。

「ごめんね、全部させちゃって……なんだか申し訳ないな」
陽平は軽く首を傾げて翠咲を見た。
「いや?むしろ当然だろ」

カップに入った暖かいロイヤルミルクティーを翠咲に渡しつつ、隣に座る。

「まあ、警察署に仕事で行くこともあるから。翠咲は慣れないし、疲れただろう」

陽平はすらりと長い足を組んで、ソファーに座った。その身体はほとんど翠咲の方を向いていて、翠咲はこんな時なのにドキドキしてしまった。

──本当にその綺麗な顔で真っ直ぐ見るのはやめてほしい。

そんな気持ちをごまかすように翠咲は手元のカップにふーと息を吹きかける。

「差し出がましいかなとは思ったけど、沢村さんには連絡させてもらった」
そんな翠咲に陽平は淡々と伝えてきた。

翠咲は一瞬きょとん、とする。
──さわむ……?え?課長?!

「いつの間に!」
「翠咲が事情聴取を受けている間に。明日は休みにしていいってさ」

本当に陽平は翠咲に甘いのだ。

そして陽平は心配そうに翠咲の顔を覗き込んでくるから、翠咲は困ってしまう。

しかも、会社にまで連絡し……ん?
「ちょっと待って……。どうやって言ったの?」
んー?と少しだけ陽平は考えているような顔をしていた。

「普通に」
普通ってなに?!そこ詳しく!
「守秘義務があるから言えないんですけど、とかそんな感じで」

さすが過ぎる。
「なに?翠咲は僕とのお付き合いが会社に知られると困るわけ?」
拗ねてしまったように陽平は翠咲にそう言った。

「そんなことはないわよ!ただ……」
……照れくさいだけなのだ。

「なんか顔赤くないか?大丈夫か?」
「だって……慣れない。陽平さんの顔、綺麗すぎる」

翠咲の近くにある少しだけきょとんとしたような顔は他の人には絶対見せないようなものだなのだ。
その後の花が開いたような笑顔も。

「翠咲、慣れて」

そう言って、翠咲の頬を指の背で撫でる陽平の声が甘い。

「ほら!さっきまで無表情に淡々としてたくせして、そんなのズルいんだってば」
悔しいけれど、翠咲にだけ甘い陽平が、カッコよすぎるのだ。

「いつまでたっても、そんな風に見とれてくれるところが可愛い」
「そうやって人をからかって!」
「違うってば本当に」
何?!その可愛い言葉遣い!ギャップで死にそうなんですけど!!

とんっ!とリビングテーブルにカップを置いた翠咲は陽平を見る。
「ありがとう。大好き」
そうしてぎゅっと抱きついた。

実際凶器はなかったとはいえ、危なかったのだ。けれど、陽平は迷いなく翠咲を背に庇った。

「うん。大好きだよ。ねぇ?翠咲、リラックス効果のある香りのするお風呂、一緒に入らない?」
翠咲にしか聞かせない甘い声と、甘い顔をした陽平が翠咲を抱き返す。

『この香りを嗅ぐたびに思い出せよ。気持ちよく、体に触れられている時のこと』
そのセリフの方を思い出して、真っ赤になる翠咲だ。

「んー?何か思い出した?」
少し翠咲をからかうような声音が耳をくすぐる。

──わ、わざとらしいっ!

でも、いやではないから翠咲も困るのだ。

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