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13.インフルエンサー
インフルエンサー③
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「女の子1人で帰るの?こんな遅くに」
「うん。タクシーで帰る」
愛梨沙は淡々としているけれど、翠咲は心配になってしまった。
──こんな美少女が夜に一人で出歩いたら危なすぎるじゃない!
「タクシーに乗るまで一緒に付いてくから」
翠咲はパーカーを羽織って、愛梨沙を追って玄関に向かう。その後を陽平が追ってきた。
「翠咲が行くなら僕もいく」
妹が行くから一緒に行く、ではないんだろうか。
3人でマンションを出て、大きな通りまで歩き、タクシーを捕まえて愛梨沙を乗せた。
「お兄ちゃん、翠咲さんと仲良くね」
車に乗り込みながら愛梨沙はそんなことを言う。
「言われなくともな」
それにも陽平は淡々と返事していた。
愛梨沙にどういう心境の変化があったかは分からないけれど、認めてくれた、ということなのだろうか?
しっかりタクシーを見送ったあと、ん、と陽平に手を差し出されて、翠咲はその手をきゅっと握る。
翠咲の手を握ったまま、陽平はベッドルームに翠咲を連れて行った。
陽平はベッドに腰かけても、翠咲の手をつないだままだ。
こんな時も、陽平の感情は見えない。
それでも、なぜか翠咲は不安な気持ちにはならないのだ。
それは手をつないでベッドに腰かけ、真っすぐ翠咲を見てくる陽平の目が温かいからだ。
「愛梨沙があんな風に人に懐くことは珍しいんだ」
「そうなの?」
確かに表情は分かりにくいかもしれないけれど、あんなに可愛いのに?
翠咲は陽平の隣に座って胸元にもたれた。そんな翠咲を陽平はそっと頭を抱き寄せる。
夜のこんな時間は、なんだかとても静かに感じる。陽平の顔は見えないけれど、声は胸を通じて響いた。
「子供の頃はもっとお人形のようだった。けれど、可愛らしすぎて、連れ去られそうになったり、同性からの妬みもすごかったみたいだな。あまりにひどくて、学校に行けなくなって、勉強はほとんど僕が教えた。ああ見えて頭は悪くない」
「ああ。そんな感じしました。すごくしっかりしてるなって」
そんな翠咲の声を聞いて、陽平がふっと笑う気配がした。
そうして、ぽつん、と言葉が落ちてくる。
「街中でスカウトされて、モデルの仕事を始めてやっと今社会と接点が持てているって感じだな」
なんとなく、綺麗で可愛いことは幸せなような気がするが、そんなことであの可愛い愛梨沙が苦労をしてきたなんて、翠咲にはとても気の毒に感じる。
陽平とこんな風に静かに話をすることはあまりなくて、とても穏やかな気持ちで話しているこんな時間は翠咲には幸せでもある。
その声が淡々としていて、落ち着いていて、とても自然だからだ。
こういうところも翠咲には好ましく思えるのだ。
「陽平さんはそういう苦労はなかったの?」
翠咲は陽平の胸元に甘えるように頭を擦り付ける。
それに気づいた陽平がすり……と翠咲の頭を撫で、つむじにキスをする。
「学生の頃はそうでもなかったな。結構生徒の自主性を重んじる学校だったし、それと僕みたいのは個性の一つで完結していたしな。愛梨沙は、たまたま同級生に問題があるやつがいたんだな。あれもあんな性格だし」
「素直でいい子だけどな」
「嘘がつけないんだ。良くも悪くも」
「そういうところは陽平さんと似てるのね」
「だから上手くいかないことの方が多かったりするんだけどな。弁護士になってからは、そのステータスにひかれて集まってくる人も多いから」
「ああ……」
弁護士になってからは、と言われて翠咲は納得した。
それは確かにそうなのだろう。
そういう人がいるんだろう、ということも分かる。翠咲の会社でもそうやって騒いでいるのを目にしたことがあるから。
「翠咲は外見だけにとらわれていないところが好きだ」
「あら、とらわれているわよ。陽平さんのお顔はとっても好きだわ」
「うん。タクシーで帰る」
愛梨沙は淡々としているけれど、翠咲は心配になってしまった。
──こんな美少女が夜に一人で出歩いたら危なすぎるじゃない!
「タクシーに乗るまで一緒に付いてくから」
翠咲はパーカーを羽織って、愛梨沙を追って玄関に向かう。その後を陽平が追ってきた。
「翠咲が行くなら僕もいく」
妹が行くから一緒に行く、ではないんだろうか。
3人でマンションを出て、大きな通りまで歩き、タクシーを捕まえて愛梨沙を乗せた。
「お兄ちゃん、翠咲さんと仲良くね」
車に乗り込みながら愛梨沙はそんなことを言う。
「言われなくともな」
それにも陽平は淡々と返事していた。
愛梨沙にどういう心境の変化があったかは分からないけれど、認めてくれた、ということなのだろうか?
しっかりタクシーを見送ったあと、ん、と陽平に手を差し出されて、翠咲はその手をきゅっと握る。
翠咲の手を握ったまま、陽平はベッドルームに翠咲を連れて行った。
陽平はベッドに腰かけても、翠咲の手をつないだままだ。
こんな時も、陽平の感情は見えない。
それでも、なぜか翠咲は不安な気持ちにはならないのだ。
それは手をつないでベッドに腰かけ、真っすぐ翠咲を見てくる陽平の目が温かいからだ。
「愛梨沙があんな風に人に懐くことは珍しいんだ」
「そうなの?」
確かに表情は分かりにくいかもしれないけれど、あんなに可愛いのに?
翠咲は陽平の隣に座って胸元にもたれた。そんな翠咲を陽平はそっと頭を抱き寄せる。
夜のこんな時間は、なんだかとても静かに感じる。陽平の顔は見えないけれど、声は胸を通じて響いた。
「子供の頃はもっとお人形のようだった。けれど、可愛らしすぎて、連れ去られそうになったり、同性からの妬みもすごかったみたいだな。あまりにひどくて、学校に行けなくなって、勉強はほとんど僕が教えた。ああ見えて頭は悪くない」
「ああ。そんな感じしました。すごくしっかりしてるなって」
そんな翠咲の声を聞いて、陽平がふっと笑う気配がした。
そうして、ぽつん、と言葉が落ちてくる。
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なんとなく、綺麗で可愛いことは幸せなような気がするが、そんなことであの可愛い愛梨沙が苦労をしてきたなんて、翠咲にはとても気の毒に感じる。
陽平とこんな風に静かに話をすることはあまりなくて、とても穏やかな気持ちで話しているこんな時間は翠咲には幸せでもある。
その声が淡々としていて、落ち着いていて、とても自然だからだ。
こういうところも翠咲には好ましく思えるのだ。
「陽平さんはそういう苦労はなかったの?」
翠咲は陽平の胸元に甘えるように頭を擦り付ける。
それに気づいた陽平がすり……と翠咲の頭を撫で、つむじにキスをする。
「学生の頃はそうでもなかったな。結構生徒の自主性を重んじる学校だったし、それと僕みたいのは個性の一つで完結していたしな。愛梨沙は、たまたま同級生に問題があるやつがいたんだな。あれもあんな性格だし」
「素直でいい子だけどな」
「嘘がつけないんだ。良くも悪くも」
「そういうところは陽平さんと似てるのね」
「だから上手くいかないことの方が多かったりするんだけどな。弁護士になってからは、そのステータスにひかれて集まってくる人も多いから」
「ああ……」
弁護士になってからは、と言われて翠咲は納得した。
それは確かにそうなのだろう。
そういう人がいるんだろう、ということも分かる。翠咲の会社でもそうやって騒いでいるのを目にしたことがあるから。
「翠咲は外見だけにとらわれていないところが好きだ」
「あら、とらわれているわよ。陽平さんのお顔はとっても好きだわ」
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