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13.インフルエンサー
インフルエンサー②
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「ねえ、愛梨沙ちゃん、インフルエンサーって何なの? さっきはSNSで情報を発信する、と言っていたけど」
愛梨沙は「その通りよ」と言ってから少し考えて、
「翠咲さんSNSやってる?」
「ん……まあ、一応は。あまり自分から発信はしないけれど」
「普通はそうね。フォロワー何人?」
「300人……くらいかなあ……」
最初は顔を知っている人だけだったはずなのに、気づいたらそうなっていたのだ。
それでも翠咲には多いような気がする。
「私のフォロワーは3万人なの」
「え……すごくない?」
「全然よ。目標はせめて10万人なの。私くらいのはマイクロインフルエンサーと呼ばれていて、料理とか美容、ファッションなんかの特定の分野に特化している人が多いって言われてるわ。フォロワーとの距離が近くて、親近感があることが売りなのよ」
こうして話を聞いていると、やはり成人しているのだと感じるし、自立している感じがする。
しかも年齢の割にはしっかりしているような気がした。
「フォロワーが多いことがお金になるの?」
「なるわね。多ければ多い方がいい。影響力が大きければ企業からの案件も大きいものが持ち込まれるし」
「企業からの持ち込み? 口コミとかするの?」
「それじゃステマになっちゃうわ。それはステルスマーケティングと言って違法なの。広告だと明記して意見を載せるとかはよくあるけど」
「難しいわね」
「そうでもない。ねえ、私のことはどうでもいいの。翠咲さん、本当にお兄ちゃんの彼女なの?」
「えーと……多分?」
先日の流れからすると、多分そのはずだが改めて聞かれるとそんな回答になってしまう翠咲だ。
「そこはハッキリ肯定するところだろ」
お風呂から上がってきた陽平が翠咲の頭にポン、と手をのせた。
「そうなんですけど、私もまだ実感わかなくてー」
「へーえ?じゃあ実感わくくらいまで、思い知りたい?論より証拠ってこういう時に使うんだよな?」
だから、目が怖いんだよなぁ。
翠咲はへらりと笑顔を向けた。
「お口で陽平さんに勝てる気はしません」
「論ずる気はないよ?」
口元をきゅっと笑みの形にした陽平が、そんな風に返してくる。
論ずる気はない……その意味を改めて考えて、翠咲は顔が熱くなった。
「お兄ちゃんがデレてるわ」
「え?」
「いえ、翠咲さんて何している人なの?」
「会社員です」
「業種は?」
たたみかけるような愛梨沙の質問に、陽平が割って入った。
「金融機関だ。なんでそんなこと聞く?」
「割とまともそうだし、あんな返しをしてくる人ってどんなお仕事しているんだろうって思ったのよ。インフルエンサーと聞いてもピンときていない風だったし」
確かにピンと来なかったが、アラサーならばそんなものではないのだろうか。
「偏見のある目で見ない人は好きだわ」
「ああ、翠咲はあまり先入観で人を見ないようにしているんだろ。仕事上そういうところもあるよな。公平に見ようとする、というか」
陽平がそんな風に見てくれているなんて、翠咲は思っていなくて、照れてしまう。
「その割には僕にはツンツンしていたけどなあ」
あははー。ツンツンしてた、かぁ。
そういう言い方もあるよねー。
「だって、陽平さんはお客様じゃないもの」
「本当に後で覚えていてほしい」
「イチャイチャするなら、勝手にして。分かった。私は今日は帰る」
そう言った愛梨沙はソファを立ってカバンを手にしている。
「用事あったんじゃないのか?」
「契約書、来ているから確認してほしかったの。メールで送るわ。時間がある時に見ておいてくれたらいいから」
淡々と要件を伝える愛梨沙と淡々と受ける陽平は驚くくらいに似ていて、間違いなく兄妹なのだと翠咲は確信して笑ってしまう。
「分かった」
愛梨沙はてくてくと玄関に向かって歩いていった。
愛梨沙は「その通りよ」と言ってから少し考えて、
「翠咲さんSNSやってる?」
「ん……まあ、一応は。あまり自分から発信はしないけれど」
「普通はそうね。フォロワー何人?」
「300人……くらいかなあ……」
最初は顔を知っている人だけだったはずなのに、気づいたらそうなっていたのだ。
それでも翠咲には多いような気がする。
「私のフォロワーは3万人なの」
「え……すごくない?」
「全然よ。目標はせめて10万人なの。私くらいのはマイクロインフルエンサーと呼ばれていて、料理とか美容、ファッションなんかの特定の分野に特化している人が多いって言われてるわ。フォロワーとの距離が近くて、親近感があることが売りなのよ」
こうして話を聞いていると、やはり成人しているのだと感じるし、自立している感じがする。
しかも年齢の割にはしっかりしているような気がした。
「フォロワーが多いことがお金になるの?」
「なるわね。多ければ多い方がいい。影響力が大きければ企業からの案件も大きいものが持ち込まれるし」
「企業からの持ち込み? 口コミとかするの?」
「それじゃステマになっちゃうわ。それはステルスマーケティングと言って違法なの。広告だと明記して意見を載せるとかはよくあるけど」
「難しいわね」
「そうでもない。ねえ、私のことはどうでもいいの。翠咲さん、本当にお兄ちゃんの彼女なの?」
「えーと……多分?」
先日の流れからすると、多分そのはずだが改めて聞かれるとそんな回答になってしまう翠咲だ。
「そこはハッキリ肯定するところだろ」
お風呂から上がってきた陽平が翠咲の頭にポン、と手をのせた。
「そうなんですけど、私もまだ実感わかなくてー」
「へーえ?じゃあ実感わくくらいまで、思い知りたい?論より証拠ってこういう時に使うんだよな?」
だから、目が怖いんだよなぁ。
翠咲はへらりと笑顔を向けた。
「お口で陽平さんに勝てる気はしません」
「論ずる気はないよ?」
口元をきゅっと笑みの形にした陽平が、そんな風に返してくる。
論ずる気はない……その意味を改めて考えて、翠咲は顔が熱くなった。
「お兄ちゃんがデレてるわ」
「え?」
「いえ、翠咲さんて何している人なの?」
「会社員です」
「業種は?」
たたみかけるような愛梨沙の質問に、陽平が割って入った。
「金融機関だ。なんでそんなこと聞く?」
「割とまともそうだし、あんな返しをしてくる人ってどんなお仕事しているんだろうって思ったのよ。インフルエンサーと聞いてもピンときていない風だったし」
確かにピンと来なかったが、アラサーならばそんなものではないのだろうか。
「偏見のある目で見ない人は好きだわ」
「ああ、翠咲はあまり先入観で人を見ないようにしているんだろ。仕事上そういうところもあるよな。公平に見ようとする、というか」
陽平がそんな風に見てくれているなんて、翠咲は思っていなくて、照れてしまう。
「その割には僕にはツンツンしていたけどなあ」
あははー。ツンツンしてた、かぁ。
そういう言い方もあるよねー。
「だって、陽平さんはお客様じゃないもの」
「本当に後で覚えていてほしい」
「イチャイチャするなら、勝手にして。分かった。私は今日は帰る」
そう言った愛梨沙はソファを立ってカバンを手にしている。
「用事あったんじゃないのか?」
「契約書、来ているから確認してほしかったの。メールで送るわ。時間がある時に見ておいてくれたらいいから」
淡々と要件を伝える愛梨沙と淡々と受ける陽平は驚くくらいに似ていて、間違いなく兄妹なのだと翠咲は確信して笑ってしまう。
「分かった」
愛梨沙はてくてくと玄関に向かって歩いていった。
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