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11.言葉の選び方は気をつけましょう
言葉の選び方は気をつけましょう④
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「分かった。じゃあ。私も資料を少し確認しようかな」
「パソコン?」
「ううん。紙資料。ライン引いたり、ちょっとチェックしながら見たいし、後日後輩にフィードバックしなくちゃいけないから」
「ん」
陽平が自分の横をポンポンと叩く。
ここへ来い、ということなのだろう。
デスクトップを翠咲が借りてしまっていたので、陽平はリビングテーブルでノートパソコンを広げて作業していたのだ。
無言のここにおいで、に翠咲は資料を取り出し、てくてくと陽平の隣に行って横に座った。
そんな距離感には、まだ翠咲は照れてしまうのに、陽平はそうでもないみたいだ。
「え……と、失礼します。でも作業しにくいよね! 良かったらもう大丈夫だから、デスクトップを使って!」
「いや。普段もここでこうして作業することの方が多いんだ。それより、君がそばにいてくれることが嬉しいから」
そんな風に言われると本当に照れてしまう。
「実感したいんだよね。だから、そばにいてよ」
「はい……」
翠咲はそう言って、横で資料を読み始めた。
陽平は翠咲が時折、隣でパラ、パラ、と紙をめくる音をさせているのを、聞くともなしに聞いていて、口元に笑みが浮かびそうになるのを堪えていた。
懐かなかった猫を手懐けたような気分でもある。
きっと上手くない自分は、このまま翠咲に嫌われれてしまうのかもしれないとも感じていたけれど。
まあ、それでも陽平が本気になっていたならば、諦めることはなかったはずではあるが。
その時、陽平は紙をめくる音が止まっていることに気づいた。
──ん?
隣を見てみた。
翠咲が目を閉じている。
昨日はあまり寝ていないだろうし、おそらく眠くなってしまったのだろう。
そして、着替えを持ってきていなかった翠咲は今、陽平の部屋着を着ているのだ。
陽平のぶかぶかの部屋着を着て、うとうとしている彼女という光景は、なんというか……尊い。
ゆるーっと傾いてきたその身体を陽平は受け止めて、そっとクッションに乗せた後、膝にゆっくり倒す。
まあ確かに、昨夜はゆっくりと寝かせることができなかったことは認める。
パサリ、と音を立てて、翠咲の手から資料が落ちた。
そっとその資料を持ち上げて、陽平は笑ってしまった。
『判例タイムズ』
基本的には交通事故などにおける裁判の判例について記載されているものだ。
けれど、一部その中には翠咲の所属している傷害保険についての判例も載っている。
翠咲はそれを確認していたようだ。
よりにもよって、その文書を陽平の家で見ているというのは笑ってしまう。
──聞きたいことがあるなら聞いてくれてもいいのに。
書類には翠咲がラインを引いてあるページも見えた。
会社ではきっと頼りがいのある上司なのだろう。
そんな彼女が自分の膝で、まどろんでいる状況というのは悪くない、と陽平は思ったのだった。
「パソコン?」
「ううん。紙資料。ライン引いたり、ちょっとチェックしながら見たいし、後日後輩にフィードバックしなくちゃいけないから」
「ん」
陽平が自分の横をポンポンと叩く。
ここへ来い、ということなのだろう。
デスクトップを翠咲が借りてしまっていたので、陽平はリビングテーブルでノートパソコンを広げて作業していたのだ。
無言のここにおいで、に翠咲は資料を取り出し、てくてくと陽平の隣に行って横に座った。
そんな距離感には、まだ翠咲は照れてしまうのに、陽平はそうでもないみたいだ。
「え……と、失礼します。でも作業しにくいよね! 良かったらもう大丈夫だから、デスクトップを使って!」
「いや。普段もここでこうして作業することの方が多いんだ。それより、君がそばにいてくれることが嬉しいから」
そんな風に言われると本当に照れてしまう。
「実感したいんだよね。だから、そばにいてよ」
「はい……」
翠咲はそう言って、横で資料を読み始めた。
陽平は翠咲が時折、隣でパラ、パラ、と紙をめくる音をさせているのを、聞くともなしに聞いていて、口元に笑みが浮かびそうになるのを堪えていた。
懐かなかった猫を手懐けたような気分でもある。
きっと上手くない自分は、このまま翠咲に嫌われれてしまうのかもしれないとも感じていたけれど。
まあ、それでも陽平が本気になっていたならば、諦めることはなかったはずではあるが。
その時、陽平は紙をめくる音が止まっていることに気づいた。
──ん?
隣を見てみた。
翠咲が目を閉じている。
昨日はあまり寝ていないだろうし、おそらく眠くなってしまったのだろう。
そして、着替えを持ってきていなかった翠咲は今、陽平の部屋着を着ているのだ。
陽平のぶかぶかの部屋着を着て、うとうとしている彼女という光景は、なんというか……尊い。
ゆるーっと傾いてきたその身体を陽平は受け止めて、そっとクッションに乗せた後、膝にゆっくり倒す。
まあ確かに、昨夜はゆっくりと寝かせることができなかったことは認める。
パサリ、と音を立てて、翠咲の手から資料が落ちた。
そっとその資料を持ち上げて、陽平は笑ってしまった。
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基本的には交通事故などにおける裁判の判例について記載されているものだ。
けれど、一部その中には翠咲の所属している傷害保険についての判例も載っている。
翠咲はそれを確認していたようだ。
よりにもよって、その文書を陽平の家で見ているというのは笑ってしまう。
──聞きたいことがあるなら聞いてくれてもいいのに。
書類には翠咲がラインを引いてあるページも見えた。
会社ではきっと頼りがいのある上司なのだろう。
そんな彼女が自分の膝で、まどろんでいる状況というのは悪くない、と陽平は思ったのだった。
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