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8.有罪です
有罪です⑤
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「名前を呼ぶだけでドキドキするからダメって、もう付き合ってるんじゃないのか? 僕のこと嫌いじゃないだろう。キスも何度もしてるだろ」
もう……っ!
翠咲はきゅっと倉橋の背中に手を回した。
そうして、服をぎゅうっと掴む。
「それとも、まだ黙秘するか?」
にっ、と倉橋はとんでもなく綺麗に翠咲に微笑んだ。
「僕の経験からすると、黙秘する被告人ていうのは有罪の可能性が高いんだけどな」
倉橋はくすくす笑って、先程の強引な感じではなく、優しく翠咲を抱きしめる。
もう……いいや。
適うわけがない。
「有罪だとどうなるんですか?」
「禁固刑だよ。逃がさないと言っただろう」
言葉の内容の割にはとんでもなく甘い表情で、見たことのないような顔で。
「えーと、執行猶予とかいうの……」
「付くわけないだろう。刑は即時執行だよ」
「即時……?」
「そう、このまま君を閉じ込める。今日は帰さない」
甘い瞳に絡めとられて、翠咲は胸を掴まれた。いつも淡々とした顔しているクセに、こんな時ばっかりそんな甘い表情……、ズルいよ。
けれど、いつでも倉橋は真っ直ぐだった。
外は苦くても、中がこんなに熱くて甘い人なんて、きっと誰も知らない。
──やっぱりフォンダンショコラじゃない……。
そう思うと、翠咲の口元はつい微笑んでしまう。翠咲は柔らかく倉橋にもたれた。
「お手柔らかに、お願いします」
その時、ドン!と身体に響くような音がした。
「あ……花火……」
倉橋は苦笑した。
「花火の間だけ、執行猶予してあげるよ。僕も君と見れたらいいって思ったんだ」
翠咲は倉橋を見上げた。
ん?なんだ?と見下ろされる。
整った綺麗な顔は他の人から見たら、あまり表情は動いていないように見えるはずだ。
けれど、今翠咲を見ている倉橋はいつになく甘くて、優しくて、そして熱を感じる。
「先生って……」
「陽平」
淡々と訂正される。
「……陽平さんって、私といろいろしたいんですね?ご飯を食べたり資料を整理したり、花火を見たり」
「そうだが」
──そうだったのか。
好きだから一緒に食事をしたくて、好きだから一緒に花火を見たい。
翠咲のことが好きだったのなら、それは極自然な行動なのだ。
「ほんっとに、分かりづらい」
理由が分かれば、それほど明快なこともなかった。
くすくすと翠咲は笑う。
「翠咲」
「なんですか?」
倉橋が階段に足をかけて、翠咲の方に手を伸ばす。
手を握れ、ということなのだろう。
今だって、その表情は以前と変わらず無表情に近いけれど、それでも雰囲気は少しだけ柔らかい。
もしかしたら、それは翠咲だけが分かることなのかもしれなかった。
伸ばされたその手を翠咲も素直に握った。
温かくて、ひどくどきりとした。
「一緒に見よう。君と見たい」
それは倉橋にしては真っ直ぐで分かりやすい言葉だった。
違う、この人自身は真っ直ぐな人だ。
ただ翠咲が中身を知らなかっただけ。
けれど、それはまたこれから知っていけばいい。だって倉橋は翠咲をきちんと見てくれている。
これからは翠咲も倉橋を見ればよいのだ。
翠咲は倉橋に笑いかけた。
「はい。」
もう……っ!
翠咲はきゅっと倉橋の背中に手を回した。
そうして、服をぎゅうっと掴む。
「それとも、まだ黙秘するか?」
にっ、と倉橋はとんでもなく綺麗に翠咲に微笑んだ。
「僕の経験からすると、黙秘する被告人ていうのは有罪の可能性が高いんだけどな」
倉橋はくすくす笑って、先程の強引な感じではなく、優しく翠咲を抱きしめる。
もう……いいや。
適うわけがない。
「有罪だとどうなるんですか?」
「禁固刑だよ。逃がさないと言っただろう」
言葉の内容の割にはとんでもなく甘い表情で、見たことのないような顔で。
「えーと、執行猶予とかいうの……」
「付くわけないだろう。刑は即時執行だよ」
「即時……?」
「そう、このまま君を閉じ込める。今日は帰さない」
甘い瞳に絡めとられて、翠咲は胸を掴まれた。いつも淡々とした顔しているクセに、こんな時ばっかりそんな甘い表情……、ズルいよ。
けれど、いつでも倉橋は真っ直ぐだった。
外は苦くても、中がこんなに熱くて甘い人なんて、きっと誰も知らない。
──やっぱりフォンダンショコラじゃない……。
そう思うと、翠咲の口元はつい微笑んでしまう。翠咲は柔らかく倉橋にもたれた。
「お手柔らかに、お願いします」
その時、ドン!と身体に響くような音がした。
「あ……花火……」
倉橋は苦笑した。
「花火の間だけ、執行猶予してあげるよ。僕も君と見れたらいいって思ったんだ」
翠咲は倉橋を見上げた。
ん?なんだ?と見下ろされる。
整った綺麗な顔は他の人から見たら、あまり表情は動いていないように見えるはずだ。
けれど、今翠咲を見ている倉橋はいつになく甘くて、優しくて、そして熱を感じる。
「先生って……」
「陽平」
淡々と訂正される。
「……陽平さんって、私といろいろしたいんですね?ご飯を食べたり資料を整理したり、花火を見たり」
「そうだが」
──そうだったのか。
好きだから一緒に食事をしたくて、好きだから一緒に花火を見たい。
翠咲のことが好きだったのなら、それは極自然な行動なのだ。
「ほんっとに、分かりづらい」
理由が分かれば、それほど明快なこともなかった。
くすくすと翠咲は笑う。
「翠咲」
「なんですか?」
倉橋が階段に足をかけて、翠咲の方に手を伸ばす。
手を握れ、ということなのだろう。
今だって、その表情は以前と変わらず無表情に近いけれど、それでも雰囲気は少しだけ柔らかい。
もしかしたら、それは翠咲だけが分かることなのかもしれなかった。
伸ばされたその手を翠咲も素直に握った。
温かくて、ひどくどきりとした。
「一緒に見よう。君と見たい」
それは倉橋にしては真っ直ぐで分かりやすい言葉だった。
違う、この人自身は真っ直ぐな人だ。
ただ翠咲が中身を知らなかっただけ。
けれど、それはまたこれから知っていけばいい。だって倉橋は翠咲をきちんと見てくれている。
これからは翠咲も倉橋を見ればよいのだ。
翠咲は倉橋に笑いかけた。
「はい。」
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