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6.黙秘します!

黙秘します!④

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甘くて蕩けそうで、くらくらとするそれにやっとの思いで翠咲は倉橋を両手で押した。
こんな真っ赤な顔は見られたくない。

それに……すごく良かった、なんて認めたくない‼︎

「どうして押すんだ?」
「……っ、先生こそ、どうしてキスなんてするんです?」

昼間も今もなんて事故じゃない絶対に!

「そんなの、好きだからに決まってるだろう」
当然のことをなぜ聞くんだと言わんばかりの口調で言われた。

「あなたの……そういうところがっ……」
「そういうところが……?」

真っ赤な顔で翠咲は倉橋を睨みつける。
倉橋の顔には言ってごらん、と言わんばかりの表情が浮かんでいた。

その冷静な表情に腹が立つ。
全くもう!
ムダにイケメンなのよっ!

「そういうところが……嫌いなのよ!」

「全く君は……そんな真っ赤な顔で言っても、説得力がないんだ」
腰を強く抱きこまれて、あの倉橋とはとても思えないくらい、熱く、熱く抱きしめられる。

もう抵抗なんて出来なかった。

なんだか嬉しそうに見える倉橋の顔を見つめていたら、その距離が近くなってまた唇が重なってしまったから。

今度は最初から情熱的なキスだった。

熱を伝えるように何度も溶け合うように舌が絡む。
キスだけのはずなのに、翠咲は気持ち良くて立っていられなくなりそうだった。

「嘘つきだ。こんなになってるくせに嫌い?」
「嫌い……」
緩く擦れる舌の甘さに、酔いそうだ。

こうでも言わないと、全てを持っていかれそうだから。
心も身体も、全部。

「本当に?」
分かっているけれど、聞いてあげる。
倉橋はそんな顔をしていて、それはひどく翠咲の心を揺さぶる。

「その顔……ダメ、反則っ……」
「虚偽の申告は……絶対許さないけど……」

どこか妖艶な声音で倉橋はそう言って、逃げることなんて許さないというように、翠咲を強く抱き寄せてその長い指で頬を撫でた。

「で、反則なのって、どんな顔だって?」
「……っ……」
囁くような、それてでいて熱さのこもった声で吐息まじりに耳元で聞かれる。

目を開けていられなくて、思わず翠咲は目を閉じる。
「あ……やっ……」

思わず漏れてしまった声を封じるように、唇が重なり舌が甘く絡まって、指先が耳の形をゆっくりと辿った。

「で……? 逃げない理由は?」
倉橋の追求は止まらない。

理由?
理由、理由なんて……
翠咲は思わず叫んだ。

「……っ、黙秘しますっ……‼︎」
「ふっ……あはは……!」

こんな風に声を上げて笑う倉橋を翠咲は初めて見た。

なんなのもう。
笑い顔、めっちゃ可愛いし。

「黙秘……ね。僕に挑むなんていい度胸だな。本当に、本当に僕は君がすごく気に入っているんだ。僕が本気になることは本当に珍しいんだけど、僕は本気だよ」

いつもは冷静なその表情が、興奮でキラキラしていて、とっても綺麗……なのだけれど、なのだけれど!
気に入っている、とか本気だとか今までそんな雰囲気、かけらも見えなかったような気がするのに。

それに、なんだかスイッチ入った倉橋先生……って、想像するだけで怖いんですが!!


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