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6.黙秘します!
黙秘します!②
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なんだかいい匂いだし、ふんわり倉橋の腕に包まれているのは、なんだか悪い気分ではなくて。
なんて言うか、こうしてたい……とか。
「逃げないな」
「え……」
逃げなきゃいけなかったですか?
そう聞こうとして、翠咲は倉橋と顔がとても近いのに気づく。
ふ……っと倉橋が笑った気配がして、軽く息が唇にかかる。
唇に息がかかるくらい近くにいるんだ……そう翠咲が思って、そうして、そのまま唇は重なっていた。
強引でもなく、ふわりと重なった唇は翠咲が呆然としている間、何度も何度も重なる。
「逃げない、な」
もう一度言って倉橋がその整った顔に笑みを浮かべるから、いつもは氷のように冷たい無表情なのに、ふわりと笑って翠咲の頬を撫でて笑うから……、
逃げるなんてできるわけがない!
ガタっと背中で脚立が動いた。
脚立と倉橋の間に、翠咲はしっかりと挟まれてしまう。
「後悔したんだよ」
そうそう!
後悔の話でしたね!
「ええ。あの、ご飯のお金なら私、出すので……」
「違う。君の連絡先も聞いていなくて」
「あ……」
それは、実は翠咲も少し思ったのだ。
家についてからお礼を言おうと思って携帯を手にしたものの、倉橋の連絡先が分からなくて。
「そうですよね。私もお礼も言わずに申し訳ないな……って」
「じゃあ、お礼して」
「あ、ご馳走さまでした」
「違う。なんでキスなんかしたと思うんだ?」
「えー……」
そう言えば、なんでだろう?
「事故……とか?」
「したかったからしたんだ」
なんだかそのセリフ、前にも聞いたような……。
「僕は理由のないことはしない」
それにはとっても納得だ。この人は絶対に意味のないことなんてしない。
「なんか、分かる気がします」
「お礼して?」
うーん、どうやらご馳走様でしたと言うだけではダメのようだ。
「そうだな……。君の時間を僕にくれるか?」
そう耳元で囁かれて、翠咲はつい真っ赤になりこくこくと頷いてしまったのだ。
……っ!イケメン弁護士……囁くだけでエロい! んですけど‼︎
「時間をくれって、こーゆーことですか……」
その後連絡先を交換させられた翠咲は倉橋からのメールをもらい、渡真利弁護士事務所の倉橋の部屋にいた。
デスクの上は驚くほど資料や書類が積み上がっていて、倉橋はその隙間で作業している様子なのだ。
先程からその整理を翠咲は手伝っている。
「悪いな、仕事終わってから……」
「まあ、こういうのはそこそこ得意なので大丈夫ですけど」
「何となく、そんな気がしたんだ」
「倉橋先生だって得意そうなのに……」
「ちょっと案件が重なりすぎて、時間なくてな」
あ、その書類は時系列順に並べてくれと言われ、翠咲は手元の書類を見直す。
ほぼ翠咲が手を入れる必要もなく、倉橋は翠咲が思った通り書類を確認する際にも綺麗に時系列順に並べながら見ていたようだ。
先程からいくつかの書類の山を確認して何となく分かっていた事だが、そう言われるとなおさらに納得したし、笑ってしまう。
「なんだ?」
「っふ……だって先生、書類確認するのも綺麗に時系列順なんですもん。こんな、几帳面に書類を見る人はうちでもなかなかいないですよ」
「……それ、こっちに持ってきてくれるか?」
「はい」
なんて言うか、こうしてたい……とか。
「逃げないな」
「え……」
逃げなきゃいけなかったですか?
そう聞こうとして、翠咲は倉橋と顔がとても近いのに気づく。
ふ……っと倉橋が笑った気配がして、軽く息が唇にかかる。
唇に息がかかるくらい近くにいるんだ……そう翠咲が思って、そうして、そのまま唇は重なっていた。
強引でもなく、ふわりと重なった唇は翠咲が呆然としている間、何度も何度も重なる。
「逃げない、な」
もう一度言って倉橋がその整った顔に笑みを浮かべるから、いつもは氷のように冷たい無表情なのに、ふわりと笑って翠咲の頬を撫でて笑うから……、
逃げるなんてできるわけがない!
ガタっと背中で脚立が動いた。
脚立と倉橋の間に、翠咲はしっかりと挟まれてしまう。
「後悔したんだよ」
そうそう!
後悔の話でしたね!
「ええ。あの、ご飯のお金なら私、出すので……」
「違う。君の連絡先も聞いていなくて」
「あ……」
それは、実は翠咲も少し思ったのだ。
家についてからお礼を言おうと思って携帯を手にしたものの、倉橋の連絡先が分からなくて。
「そうですよね。私もお礼も言わずに申し訳ないな……って」
「じゃあ、お礼して」
「あ、ご馳走さまでした」
「違う。なんでキスなんかしたと思うんだ?」
「えー……」
そう言えば、なんでだろう?
「事故……とか?」
「したかったからしたんだ」
なんだかそのセリフ、前にも聞いたような……。
「僕は理由のないことはしない」
それにはとっても納得だ。この人は絶対に意味のないことなんてしない。
「なんか、分かる気がします」
「お礼して?」
うーん、どうやらご馳走様でしたと言うだけではダメのようだ。
「そうだな……。君の時間を僕にくれるか?」
そう耳元で囁かれて、翠咲はつい真っ赤になりこくこくと頷いてしまったのだ。
……っ!イケメン弁護士……囁くだけでエロい! んですけど‼︎
「時間をくれって、こーゆーことですか……」
その後連絡先を交換させられた翠咲は倉橋からのメールをもらい、渡真利弁護士事務所の倉橋の部屋にいた。
デスクの上は驚くほど資料や書類が積み上がっていて、倉橋はその隙間で作業している様子なのだ。
先程からその整理を翠咲は手伝っている。
「悪いな、仕事終わってから……」
「まあ、こういうのはそこそこ得意なので大丈夫ですけど」
「何となく、そんな気がしたんだ」
「倉橋先生だって得意そうなのに……」
「ちょっと案件が重なりすぎて、時間なくてな」
あ、その書類は時系列順に並べてくれと言われ、翠咲は手元の書類を見直す。
ほぼ翠咲が手を入れる必要もなく、倉橋は翠咲が思った通り書類を確認する際にも綺麗に時系列順に並べながら見ていたようだ。
先程からいくつかの書類の山を確認して何となく分かっていた事だが、そう言われるとなおさらに納得したし、笑ってしまう。
「なんだ?」
「っふ……だって先生、書類確認するのも綺麗に時系列順なんですもん。こんな、几帳面に書類を見る人はうちでもなかなかいないですよ」
「……それ、こっちに持ってきてくれるか?」
「はい」
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