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4.お仕事しましょう
お仕事しましょう①
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その数日後のことだ。
翠咲は上司に呼び出された。
打ち合わせで呼び出されることは、ままあることなので、さほど気にしてはいなかったのだが。
「宝条さん、弊社宛に訴状が届いている」
「え?」
訴状……?
「訴えられたってことだね」
上司である沢村課長は、割と動揺しておらず淡々とした感じだ。
むしろそんなことを聞いて、動揺したのは翠咲の方だった。
「そんな……あの、案件は……?」
沢村は顔を青ざめさせた翠咲を見て、安心させるように笑う。
「以前から報告を受けている件だからね。心配しなくて大丈夫。それに知っていると思うけど、査定の場合は契約者が訴えるっていうことは割とある」
「そうなんですけど……」
それでも人の案件ではそういうこともあると、聞いたり目にしたことはあるけれど、翠咲自身はそんな形になってしまったことはない。
「申し訳ありません。私が関わっていながら……」
それなりに実績は積んできたと思うけれど、まだまだ足りないことや知らないこと、把握していなかったことがあるんだと思うとため息をつきたくなる。
それを見て、沢村はふっと笑った。
「今、何を考えているの?」
「いえ……いまだに知らないことが多くて。役職なのにと自分を不甲斐なく思っていたところです」
「そういうところが宝条さんのいいところだと思う。前向き、向上心がある。だから助けたいと思うよ。それにね本当にこういうことは結構あって、課長職なら誰もが経験しているし、対応もある程度できるから。そのための課長なんで頼ってくださいね」
ここに異動してきてから、正直課長と接点を持つことはあまりなかった。
会議の時や人事評定くらいで。
あまり口数の多い人ではないし、淡々と決裁をしているという印象だったのだが、やはり大人数在籍している課を任されるのは伊達ではないんだなと改めて思う。
「実際、訴訟案件になると担当は主任から課長に引き継ぎされるから、今後は僕が見ることになりますね。宝条さんが対応することはなくなるかな。あー、でもお勉強する?」
そう言って、沢村はにこっと笑って首を傾げる。
沢村課長はとても大人なのに、どこか少年ぽさがあって妙に魅力のある人だった。
こんな人だとは思わなかった。
「お勉強ですか?」
「うん。今後案件がどうなるか、気にならない?」
「なります!」
「じゃあ、補佐についてもらうっていうていで、勉強してください。実際ね、よくあるけど、たまにしかないし関わることは経験にはなると思うからね」
「それって……美味しいとこどりにならないですか?」
「っふ、ははっ、どこが? 誰が訴訟案件に関わりたがるの? 宝条さん、ホント真面目だな。普通は課長に押し付けられた、ラッキー! って思うもんでしょ。手伝ってと言われて、美味しいと言われるのは……君、真面目が過ぎるよ」
くつくつと、課長は肩を揺らしていて、なんだか翠咲はいたたまれなくなった。
「いいんです。これが課長の仕事だし、僕には経験もあります。それにこの後、弁護士チームと打ち合わせがありますからね。僕も彼らと仕事をするのは、ま、たまにはいいかなと思うので」
「この後、打ち合わせなんですか?」
翠咲は上司に呼び出された。
打ち合わせで呼び出されることは、ままあることなので、さほど気にしてはいなかったのだが。
「宝条さん、弊社宛に訴状が届いている」
「え?」
訴状……?
「訴えられたってことだね」
上司である沢村課長は、割と動揺しておらず淡々とした感じだ。
むしろそんなことを聞いて、動揺したのは翠咲の方だった。
「そんな……あの、案件は……?」
沢村は顔を青ざめさせた翠咲を見て、安心させるように笑う。
「以前から報告を受けている件だからね。心配しなくて大丈夫。それに知っていると思うけど、査定の場合は契約者が訴えるっていうことは割とある」
「そうなんですけど……」
それでも人の案件ではそういうこともあると、聞いたり目にしたことはあるけれど、翠咲自身はそんな形になってしまったことはない。
「申し訳ありません。私が関わっていながら……」
それなりに実績は積んできたと思うけれど、まだまだ足りないことや知らないこと、把握していなかったことがあるんだと思うとため息をつきたくなる。
それを見て、沢村はふっと笑った。
「今、何を考えているの?」
「いえ……いまだに知らないことが多くて。役職なのにと自分を不甲斐なく思っていたところです」
「そういうところが宝条さんのいいところだと思う。前向き、向上心がある。だから助けたいと思うよ。それにね本当にこういうことは結構あって、課長職なら誰もが経験しているし、対応もある程度できるから。そのための課長なんで頼ってくださいね」
ここに異動してきてから、正直課長と接点を持つことはあまりなかった。
会議の時や人事評定くらいで。
あまり口数の多い人ではないし、淡々と決裁をしているという印象だったのだが、やはり大人数在籍している課を任されるのは伊達ではないんだなと改めて思う。
「実際、訴訟案件になると担当は主任から課長に引き継ぎされるから、今後は僕が見ることになりますね。宝条さんが対応することはなくなるかな。あー、でもお勉強する?」
そう言って、沢村はにこっと笑って首を傾げる。
沢村課長はとても大人なのに、どこか少年ぽさがあって妙に魅力のある人だった。
こんな人だとは思わなかった。
「お勉強ですか?」
「うん。今後案件がどうなるか、気にならない?」
「なります!」
「じゃあ、補佐についてもらうっていうていで、勉強してください。実際ね、よくあるけど、たまにしかないし関わることは経験にはなると思うからね」
「それって……美味しいとこどりにならないですか?」
「っふ、ははっ、どこが? 誰が訴訟案件に関わりたがるの? 宝条さん、ホント真面目だな。普通は課長に押し付けられた、ラッキー! って思うもんでしょ。手伝ってと言われて、美味しいと言われるのは……君、真面目が過ぎるよ」
くつくつと、課長は肩を揺らしていて、なんだか翠咲はいたたまれなくなった。
「いいんです。これが課長の仕事だし、僕には経験もあります。それにこの後、弁護士チームと打ち合わせがありますからね。僕も彼らと仕事をするのは、ま、たまにはいいかなと思うので」
「この後、打ち合わせなんですか?」
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