フォンダンショコラな恋人

如月 そら

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1.あなたのそういうところが嫌いです

あなたのそういうところが嫌いです⑤

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「なんか、すっごく冷たくあしらわれたわ……。話にならない、に近い感じよ」
「確かうちの顧問弁護士は、事務所はそれほど大きくはないんですが、腕利きを揃えていると聞いています。へー……そうなんですねー……」

「すーっごおく冷たくって、表情も全然変わんないの、無表情よ?んで、資料出せ資料出せって、もー、あんな案件終わりにしたいのよ、こっちだって。でも……疑義があるのに折れるのは絶対イヤ!」

よく見ると、結衣はくすくす笑っている。
「何よ……」
「いや、懐かしくて。自分もよくそーやって叫んでたなあって思い出したんです」

そこで、結衣は真顔になる。
「宝条さん、私、査定って保険会社の最後の切り札だと思っています。何かあるならここでしか最終的に食い止めることはできないんです」

「うん……」
それは分かっている……分かっているのだが……、
「酔いそう。お水、もらってくる」

「一緒にいきましょうか?」
「ん、平気……」

ふわりと席を立った、翠咲はカウンターに向かい、大将にお水をお願いする。

そのまま、奥のお手洗いに行って、カウンターに寄ろうとしたところ、視界にスーツが入ってきた。

俯きがちだった、翠咲には磨き上げられたその綺麗な靴が目に入る。
ぶつかるといけないと思い、横に避けようとしたら、靴も同じ方向に動いた。

「あ……すみませ……」
顔を上げたところ、件の弁護士が無表情に、翠咲を見下ろしていたのだ。

「宝条さん、でした? 僕、そんなに感じ悪いですか?」
酔いも一気に冷める心地だ。

「ちなみに僕、吹いたくらいじゃ折れませんから。」
笑うでもなく怒るでもない淡々とした表情が逆に怖い。

ど、どこから?
どこから聞かれていたのだろうか?
ていうか、いつからいたのだろうか?

「別件で、別の席にいたんですけど、同席の方が、ここに知り合いがいる、と言うので、端の方に紛れさせて頂いていたんですが」

確かに、途中からは翠咲も話に夢中になっていたし、結構酔っていたので、周りは見えていなかったと思う。
そもそも、宴席自体が広いのだし。

端の方にひっそり座られたのでは気付かない。
割と結衣との話に夢中になっていたことも、ある。

けど……けど……。
妙に空気だけがひんやりしていて、一切表情が動かないのが、怖すぎる!!

心臓がすごく、どくどく言っていて、身動きできない。
変な汗が出てくるし。

「ご…ごめんなさい」
「何に対して?事実ではないことですか?事実確認をしないで、中傷しようとしたこと?」

「中傷とか、そういうことでは……っ、」
「そうですね。その言い方も適正ではなかった。別に僕の名誉を傷つけられたとかではないので。単なる悪口ですかね。」

何って、何って……
「あなたのそういう所が嫌いなのよ。」
「え……」
し、しまった、口が滑った。



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