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2.ボタンをかけ違うとズレる
ボタンをかけ違うとズレる①
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皆さんは弁護士にどういうイメージをお持ちだろうか。
頭が良い?お金持ち?
法廷に立って『異議あり!』とか叫んでいる姿だろうか。
あれはないなー……心の中で倉橋陽平はそんなことを考えつつ、顧問先の保険会社への道をてくてく歩いていた。
やってみたい気もするが、そもそも裁判官の許可もなく、そんな発言をしたら法廷を摘み出されること請合いだし、後々までの語り草となるだろう。
だから自分はやりたくないのだが、見てみたい。
誰かやってくんねーかな。
そんな不謹慎なことを考える。
倉橋陽平はいわゆるイソ弁という立場だ。
事務所に雇われて勤務する弁護士の呼び方である。
実はこの呼び方も、陽平自身は気に入らない。
きちんと報酬ももらって勤務しているのに、居候はおかしいだろうと思うのだ。
海外ではパートナー弁護士というものもあるらしいが、それは経営権を持つ弁護士のことだ。
陽平は弁護士になりたいのであって、経営者になりたいわけではない。
そんな話を今のオーナー弁護士としていたところ、小声で『面倒くせ……』と言われた。
聞き逃す陽平ではない。
「面倒くさくて、悪かったですね」
「いや? オレ、陽平のそういうとこ気に入って、来てもらってるか」
そんな事を言っていても、名刺に『イソ弁』と明記される訳ではない。
単純に世間話の流れでそうなっただけだ。
「今はそういう海外の流れを受けて、アソシエイト弁護士とか言うんだろ?」
「まあ、そうですね。実際前の所はそうでした」
倉橋陽平は頭がいい。
そもそも、勉強する事が嫌いではない。
中学生の頃、将来をどうしようかと考えた時に、ある程度報酬の良い職業に付きたいと考えた。
パイロット、医師、弁護士……報酬のいい仕事はいろいろある。
しかし小学校を卒業する頃に既に目を悪くしていたし、パイロットの道は早々に諦めた。
医師も検討の範囲内ではあったが、パイロットも医師も当然頭の良さは求められるけれど、それ以上に専門的な学校に相応の資金が必要なのだと分かった。
倉橋の家は別にそこまで裕福ではない。
普通に大学くらいは行かせてくれるだろうが、結果何千万もかかるような大学に行かせて欲しいとねだるのは難しい……と思った。
士業……これは、自身の勉強次第だ。
これも、税理士、弁護士、いろいろあったけれど、その中で弁護士を選んだのは、ステイタスの高さと単純に子供らしい憧れもあったから。
難関と言われる司法試験は割と早く突破し、大手の弁護士事務所に声をかけてもらって入所した。
親が弁護士だとかでも無い限り、弁護士にも就職活動は存在すると分かったし、弁護士の仕事は裁判だけではないので、かなり幅広い中から自分のやりたいことを、きちんと見極めておかなくてはいけないと強く感じたものだ。
倉橋も最初は弁護士とは、裁判所で依頼人の弁護をする事が主な仕事だと思っていた。
もちろん、裁判所に行かない訳ではないのだが、倉橋のいた事務所では主に代理人としての出廷の方が多かったりした。
事務所が割と民事絡みの依頼が多かったせいもある。
そんな中で、今のオーナー弁護士である渡真利に会ったのだ。
元々大学の先輩で、顔見知りではあったけれど、裁判所で偶然会った。
次の公判の時に席にいたから、関係者の代理人でも引き受けているのかと思ったら、帰り人がいないところで声をかけられた。
「久しぶりだな、今度飲みにでも行かないか?」
「はあ……」
頭が良い?お金持ち?
法廷に立って『異議あり!』とか叫んでいる姿だろうか。
あれはないなー……心の中で倉橋陽平はそんなことを考えつつ、顧問先の保険会社への道をてくてく歩いていた。
やってみたい気もするが、そもそも裁判官の許可もなく、そんな発言をしたら法廷を摘み出されること請合いだし、後々までの語り草となるだろう。
だから自分はやりたくないのだが、見てみたい。
誰かやってくんねーかな。
そんな不謹慎なことを考える。
倉橋陽平はいわゆるイソ弁という立場だ。
事務所に雇われて勤務する弁護士の呼び方である。
実はこの呼び方も、陽平自身は気に入らない。
きちんと報酬ももらって勤務しているのに、居候はおかしいだろうと思うのだ。
海外ではパートナー弁護士というものもあるらしいが、それは経営権を持つ弁護士のことだ。
陽平は弁護士になりたいのであって、経営者になりたいわけではない。
そんな話を今のオーナー弁護士としていたところ、小声で『面倒くせ……』と言われた。
聞き逃す陽平ではない。
「面倒くさくて、悪かったですね」
「いや? オレ、陽平のそういうとこ気に入って、来てもらってるか」
そんな事を言っていても、名刺に『イソ弁』と明記される訳ではない。
単純に世間話の流れでそうなっただけだ。
「今はそういう海外の流れを受けて、アソシエイト弁護士とか言うんだろ?」
「まあ、そうですね。実際前の所はそうでした」
倉橋陽平は頭がいい。
そもそも、勉強する事が嫌いではない。
中学生の頃、将来をどうしようかと考えた時に、ある程度報酬の良い職業に付きたいと考えた。
パイロット、医師、弁護士……報酬のいい仕事はいろいろある。
しかし小学校を卒業する頃に既に目を悪くしていたし、パイロットの道は早々に諦めた。
医師も検討の範囲内ではあったが、パイロットも医師も当然頭の良さは求められるけれど、それ以上に専門的な学校に相応の資金が必要なのだと分かった。
倉橋の家は別にそこまで裕福ではない。
普通に大学くらいは行かせてくれるだろうが、結果何千万もかかるような大学に行かせて欲しいとねだるのは難しい……と思った。
士業……これは、自身の勉強次第だ。
これも、税理士、弁護士、いろいろあったけれど、その中で弁護士を選んだのは、ステイタスの高さと単純に子供らしい憧れもあったから。
難関と言われる司法試験は割と早く突破し、大手の弁護士事務所に声をかけてもらって入所した。
親が弁護士だとかでも無い限り、弁護士にも就職活動は存在すると分かったし、弁護士の仕事は裁判だけではないので、かなり幅広い中から自分のやりたいことを、きちんと見極めておかなくてはいけないと強く感じたものだ。
倉橋も最初は弁護士とは、裁判所で依頼人の弁護をする事が主な仕事だと思っていた。
もちろん、裁判所に行かない訳ではないのだが、倉橋のいた事務所では主に代理人としての出廷の方が多かったりした。
事務所が割と民事絡みの依頼が多かったせいもある。
そんな中で、今のオーナー弁護士である渡真利に会ったのだ。
元々大学の先輩で、顔見知りではあったけれど、裁判所で偶然会った。
次の公判の時に席にいたから、関係者の代理人でも引き受けているのかと思ったら、帰り人がいないところで声をかけられた。
「久しぶりだな、今度飲みにでも行かないか?」
「はあ……」
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