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そういう目で見ていますがそれが?
そういう目で見ていますがそれが?③
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その質問に彼女はびくん、として俯いた。
──え?
けれど、そのうなじがふわりと赤味を帯びている。
そのこれは……すごく、ヤバいんだけど。
その首元から耳たぶの柔らかいラインが、ふんわり赤くて、妙に色っぽい。
「あの……ご不快でしたら、失礼を」
俯いたまま、小声でそんな事を言う。
「いや? なぜか教えてほしい。俯いてしまうのはなぜ?」
答えは帰ってこないけれど、もう目の前に晒されている無防備な、激好みのうなじを、どうしたらいい!?
「あまり俺の前で、そんな風にうつむかないでほしいんだけど。月蔵さん」
そんな風にして……もういい。
知らない。
好みすぎるんだ。
それで玉砕しても構わない。
「俺ね」
そうっと後ろから、詩乃の耳元に近づいた。
耳に息がかかるんじゃないかくらいの位置で、囁く。
「うなじフェチなんだ」
「うな……じ?」
彼女はきょとん、とした声を出す。
「そう。月蔵さんのうなじ……たまらない……。首元は細過ぎてもいけなくて、俺は色白の方が好みなんだけど。特に今日みたいに緩くアップにしている時の、しどけなく首元にかかる髪がすごく、いい……」
つい、うっとりとその首元に目線を注いでしまう。
けれど、彼女の視線もたまに熱を持って見えるような気がするんだ。
その理由が聞きたかった。
「月蔵さんの視線には何か感じる。君は何を見ているの?」
躊躇うのは分かるけれど……だから、俯かないでって……!
「スーツ……です」
スーツって……?
「スーツ?」
「正確にはスーツを着ていらっしゃる社長のお姿、です」
目を逸らして、頬から首の当たりを赤く染めてそんな風に言う。
「へえ……」
つまりスーツを着ている俺の姿、を見ていたのか。
「それが、月蔵さんのツボなの?」
コクリと彼女は頷いた。
潤んだ瞳と赤く上気した肌。
俯いて、無防備な首元……。
気づいたら、指で触れていた。
「ん……っ」
甘い声。
ああ、最高だ。
「感度までいいなら、最高だな」
「え!?」
思わず、といった感じで彼女はうなじを手で押さえてしまう。
「俺のこと、嫌い?」
ふるふるっと彼女は首を横に振る。
隠さないでほしい。
それに嫌いじゃないなら、俺のものだ。
彼女の手をそっと取ると、少しだけ困った顔で、そのくせ上気したような顔で俺の事を見る。
それはずるいだろう。
つい吸い込まれるように、そのうなじに唇をつけた。
ぴくん、と揺れる身体。
首元からはいい匂いがして、緩く歯を立てる。
「あ……」
感じやすいのかもしれないけれど、先程からのその声は、堪らない。
「堪らないな。詩乃ちゃんは?」
スーツにキスしたいわけではないだろう。
その手を自分の首の後ろに回してみた。
途端に触れ合う身体は、お互いの鼓動も聞こえそうだ。
さらに、彼女は赤くなる。
「なんか……どきどきします」
「うん。俺も」
初めて抱き締める彼女は、柔らかくて抱き心地もたまらないし、その潤んだ瞳も甘い声も全部全部、可愛らしい。
うなじはもちろんだけれど、その全てが好みだ。
「詩乃ちゃんの、うなじ……もちろん最高なんだけど、君をこの3ヶ月見てきて、その仕事への前向きさもすごく惹かれて、つまり、俺と付き合わないかなってことなんだけど」
そうだな……
「いつでも、スーツ姿を見せてあげるよ?」
そう付け足すと、彼女は少しだけ困った顔をして……けれど、こくんと頷いた。
お互いにフェチが噛み合う相手、なんてそうそういないと思う。
✽+†+✽―END―✽+†+✽
──え?
けれど、そのうなじがふわりと赤味を帯びている。
そのこれは……すごく、ヤバいんだけど。
その首元から耳たぶの柔らかいラインが、ふんわり赤くて、妙に色っぽい。
「あの……ご不快でしたら、失礼を」
俯いたまま、小声でそんな事を言う。
「いや? なぜか教えてほしい。俯いてしまうのはなぜ?」
答えは帰ってこないけれど、もう目の前に晒されている無防備な、激好みのうなじを、どうしたらいい!?
「あまり俺の前で、そんな風にうつむかないでほしいんだけど。月蔵さん」
そんな風にして……もういい。
知らない。
好みすぎるんだ。
それで玉砕しても構わない。
「俺ね」
そうっと後ろから、詩乃の耳元に近づいた。
耳に息がかかるんじゃないかくらいの位置で、囁く。
「うなじフェチなんだ」
「うな……じ?」
彼女はきょとん、とした声を出す。
「そう。月蔵さんのうなじ……たまらない……。首元は細過ぎてもいけなくて、俺は色白の方が好みなんだけど。特に今日みたいに緩くアップにしている時の、しどけなく首元にかかる髪がすごく、いい……」
つい、うっとりとその首元に目線を注いでしまう。
けれど、彼女の視線もたまに熱を持って見えるような気がするんだ。
その理由が聞きたかった。
「月蔵さんの視線には何か感じる。君は何を見ているの?」
躊躇うのは分かるけれど……だから、俯かないでって……!
「スーツ……です」
スーツって……?
「スーツ?」
「正確にはスーツを着ていらっしゃる社長のお姿、です」
目を逸らして、頬から首の当たりを赤く染めてそんな風に言う。
「へえ……」
つまりスーツを着ている俺の姿、を見ていたのか。
「それが、月蔵さんのツボなの?」
コクリと彼女は頷いた。
潤んだ瞳と赤く上気した肌。
俯いて、無防備な首元……。
気づいたら、指で触れていた。
「ん……っ」
甘い声。
ああ、最高だ。
「感度までいいなら、最高だな」
「え!?」
思わず、といった感じで彼女はうなじを手で押さえてしまう。
「俺のこと、嫌い?」
ふるふるっと彼女は首を横に振る。
隠さないでほしい。
それに嫌いじゃないなら、俺のものだ。
彼女の手をそっと取ると、少しだけ困った顔で、そのくせ上気したような顔で俺の事を見る。
それはずるいだろう。
つい吸い込まれるように、そのうなじに唇をつけた。
ぴくん、と揺れる身体。
首元からはいい匂いがして、緩く歯を立てる。
「あ……」
感じやすいのかもしれないけれど、先程からのその声は、堪らない。
「堪らないな。詩乃ちゃんは?」
スーツにキスしたいわけではないだろう。
その手を自分の首の後ろに回してみた。
途端に触れ合う身体は、お互いの鼓動も聞こえそうだ。
さらに、彼女は赤くなる。
「なんか……どきどきします」
「うん。俺も」
初めて抱き締める彼女は、柔らかくて抱き心地もたまらないし、その潤んだ瞳も甘い声も全部全部、可愛らしい。
うなじはもちろんだけれど、その全てが好みだ。
「詩乃ちゃんの、うなじ……もちろん最高なんだけど、君をこの3ヶ月見てきて、その仕事への前向きさもすごく惹かれて、つまり、俺と付き合わないかなってことなんだけど」
そうだな……
「いつでも、スーツ姿を見せてあげるよ?」
そう付け足すと、彼女は少しだけ困った顔をして……けれど、こくんと頷いた。
お互いにフェチが噛み合う相手、なんてそうそういないと思う。
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スリーピース良き💓ですね〜
わかります💓
お互いにそういう目で見てたんですね〜
🥰勤務中なのにお互いニマニマしちゃいそうですね🥰これから始まる2人の物語は幸せで溢れてそうで羨ましい〜❤️
こちらのお話はフェチがテーマのイベントに参加させていただいた際に、書いたものです🥰
スーツ最高✨ですよね‼️