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黒王子の休日
黒王子の休日③
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柾樹は玄関先でそのシャツワンピースのボタンを、一つづつ指でたどる。
そうして思わせぶりな顔をした。
「帰ってきたら……一つづつ外して、恥ずかしがる美桜にエッチなことしたいな」
ぽぽぽっと、美桜が赤くなる。
「もう……今はダメ、です」
「分かってる。今はしない。帰ってきたらな」
美桜の頬を両手で包み込んでふわりとキスをし、柾樹は玄関のドアを美桜のために開けた。
店に到着すると、二人は水着コーナーに向かった。
「プールも海もあまり行ったことがないので、水着もよく分からないんですよね」
「俺も女性ものはな……店員に聞くか」
とにかく目立つ二人組なのだ。
柾樹が店員を探すために顔を上げ周りを見渡すと、すぐにベテラン風の店員がやってきた。
実を言えば、美桜と柾樹は店に入ってきた時から、なんなのあのカップル! むちゃくちゃ、お似合いなんですけど⁉︎ と店員たちの注目を集めていたのだ。
柾樹は着ている服こそ落ち着いたものだけれど、シンプルだからこそ本人の個性が際立つ。
元々の品の良さとスタイルの良さ、もちろん顔立ちも際立って目立つ。
美桜もさらりと長い髪はツヤツヤでお人形のような顔立ちに、華奢な身体と柔らかいその表情は同性でも守ってあげたくなるような雰囲気を持っているのだ。
何か聞かれたらすぐ行きたい! とどの店員も二人を見守っていたのだが、結局はベテラン店員がその権利を獲得した。
「なにかお探しですか?」
「ええ。彼女に水着を選んであげたいんだけど」
ベタベタするでもなく、彼が自然に彼女の肩に手を置く様子に好感が持てる。
「あまり選んだことがなくて。お願いします」
正に鈴を転がすような声とはこの事か? という彼女の声。にこっと微笑むその笑顔は天使? と思わせるような笑顔だ。
「ぴったりのものをお選びするなら服の上からでも構わないので、サイズをお測りしたいんですけど」
「はい。柾樹さんはむこう向いててくださいっ!」
「はいはい」
くすくす笑っている彼は黙っていると少し怖いような感じだが、こんな風に笑うと急に雰囲気が柔らかくなり、そのギャップに海千山千の店員すら、どきんとする。
それでも言われた通り後ろを向くのは、何だか大人だ。
お似合いでやりとりも可愛くて、微笑ましくなってしまう。
「失礼しますね」
そう言って女性のサイズを計らせてもらうと、外見からは分からないナイスバディ。
細いけれど、出るところはきちんと出ていると言うか。
どんな水着でも着こなせるであろうスタイルの持ち主のようだった。
「そうですね、とてもスタイルよろしいので……セパレートタイプのものが良いかと思いますけど」
「セパレート?」
「上下が分かれているものですね。今の主流はほとんどそれなんですけど」
「そうだな……。あまり露出はしない方がいいな。けど美桜に似合うものならなんでもいいんだが……」
顎に手を置き、淡々と話し出す柾樹だ。
えっ……? と顔を上げた店員を見て、真っ赤になった美桜は柾樹の口元を手で抑える。
「もうっ! 柾樹さん、店員さんにお任せしましょう! 驚いてるじゃないですか」
何とか立ち直った店員はサイズの合うもので、黒のちょっとセクシーなビキニと花柄、白に刺繍の入ったものと可愛いチェック柄など、いくつかのものを持ってくる。
「黒……なかなかセクシーだな」
「黒は却下です」
美桜はにっこり笑う。
「エロくていいのに……」
「だからですっ!」
柾樹が脳内でその水着を着た美桜を脱がすことや、あれやこれや……想像していたのを見抜いていたわけではないだろうが、なにかを察知した美桜だ。
そうして思わせぶりな顔をした。
「帰ってきたら……一つづつ外して、恥ずかしがる美桜にエッチなことしたいな」
ぽぽぽっと、美桜が赤くなる。
「もう……今はダメ、です」
「分かってる。今はしない。帰ってきたらな」
美桜の頬を両手で包み込んでふわりとキスをし、柾樹は玄関のドアを美桜のために開けた。
店に到着すると、二人は水着コーナーに向かった。
「プールも海もあまり行ったことがないので、水着もよく分からないんですよね」
「俺も女性ものはな……店員に聞くか」
とにかく目立つ二人組なのだ。
柾樹が店員を探すために顔を上げ周りを見渡すと、すぐにベテラン風の店員がやってきた。
実を言えば、美桜と柾樹は店に入ってきた時から、なんなのあのカップル! むちゃくちゃ、お似合いなんですけど⁉︎ と店員たちの注目を集めていたのだ。
柾樹は着ている服こそ落ち着いたものだけれど、シンプルだからこそ本人の個性が際立つ。
元々の品の良さとスタイルの良さ、もちろん顔立ちも際立って目立つ。
美桜もさらりと長い髪はツヤツヤでお人形のような顔立ちに、華奢な身体と柔らかいその表情は同性でも守ってあげたくなるような雰囲気を持っているのだ。
何か聞かれたらすぐ行きたい! とどの店員も二人を見守っていたのだが、結局はベテラン店員がその権利を獲得した。
「なにかお探しですか?」
「ええ。彼女に水着を選んであげたいんだけど」
ベタベタするでもなく、彼が自然に彼女の肩に手を置く様子に好感が持てる。
「あまり選んだことがなくて。お願いします」
正に鈴を転がすような声とはこの事か? という彼女の声。にこっと微笑むその笑顔は天使? と思わせるような笑顔だ。
「ぴったりのものをお選びするなら服の上からでも構わないので、サイズをお測りしたいんですけど」
「はい。柾樹さんはむこう向いててくださいっ!」
「はいはい」
くすくす笑っている彼は黙っていると少し怖いような感じだが、こんな風に笑うと急に雰囲気が柔らかくなり、そのギャップに海千山千の店員すら、どきんとする。
それでも言われた通り後ろを向くのは、何だか大人だ。
お似合いでやりとりも可愛くて、微笑ましくなってしまう。
「失礼しますね」
そう言って女性のサイズを計らせてもらうと、外見からは分からないナイスバディ。
細いけれど、出るところはきちんと出ていると言うか。
どんな水着でも着こなせるであろうスタイルの持ち主のようだった。
「そうですね、とてもスタイルよろしいので……セパレートタイプのものが良いかと思いますけど」
「セパレート?」
「上下が分かれているものですね。今の主流はほとんどそれなんですけど」
「そうだな……。あまり露出はしない方がいいな。けど美桜に似合うものならなんでもいいんだが……」
顎に手を置き、淡々と話し出す柾樹だ。
えっ……? と顔を上げた店員を見て、真っ赤になった美桜は柾樹の口元を手で抑える。
「もうっ! 柾樹さん、店員さんにお任せしましょう! 驚いてるじゃないですか」
何とか立ち直った店員はサイズの合うもので、黒のちょっとセクシーなビキニと花柄、白に刺繍の入ったものと可愛いチェック柄など、いくつかのものを持ってくる。
「黒……なかなかセクシーだな」
「黒は却下です」
美桜はにっこり笑う。
「エロくていいのに……」
「だからですっ!」
柾樹が脳内でその水着を着た美桜を脱がすことや、あれやこれや……想像していたのを見抜いていたわけではないだろうが、なにかを察知した美桜だ。
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