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黒王子の休日
黒王子の休日②
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噂には聞いていた。
あの黒王子がメロメロで、甘々だと。
そんな訳はないだろうと思っていたのだが、あながち噂は嘘でもないらしい。
デスクの上には、食べかけのおにぎりが転がっている。
ちょうど、ぽいっと口に入りそうな感じだ。
スープジャーまで置いてあって、その中身がお味噌汁のようだった。
──お嬢様と聞いていたけれど、なんと献身的な……。
倉田は感心してつい、おにぎりをじっと見つめてしまう。
「おい。俺のだからな」
「誰も食べませんよ。けど、美味しそうですね……。手作りのおにぎりなんて、ここ何年も食べてないです」
「確かに、おにぎりがそもそもこんなに美味しいと思ったことはなかったからな」
「美桜さんの愛情がこもっているというわけですか」
「そうだ。そんなものやる訳ないだろう」
柾樹に真顔で返される。
今まで、結婚というものに倉田は憧れはなかったが……なんだこの2人、ラブラブすぎるだろう!
心の中で密かに応援するようになったのだ。
そんなことをつらつらと思い出していたら、柾樹に声をかけられた。
「視察……な」
倉田は即答する。
「そうです。仕事のようなものです。それに……ここはコテージにはプライベートプールがあるんですよね……」
「プール? ああ、資料にもあったな」
「つまりですね、誰にも見られることなく美桜さんの水着姿を堪能できる、と」
「で、視察はいつにする?」
──早っ。
資料としてしか見ていなかったその内容が、倉田の一言で柾樹の中で、一気にリアリティが出てきたらしい。
水着? 美桜の…?
確かに誰にも見せたくない。けど、柾樹自身はとんでもなく見たい!
プライベートプールだと? そんなこと考えるやつバカか何かか? と普通なら思うところだが、ここは感謝の一言しかなかった。感じよかったらなんとかしてやってもいい、と思うくらいには。
家に帰った柾樹が早速その話をすると、美桜が瞳を輝かせたのである。
「プール付きのリゾートホテルですか? 素敵ですっ‼︎ 柾樹さんと一緒? 本当ですか⁉︎」
柾樹が忙しいことは知っているので、いつもはそのサポートを献身的にしてくれている美桜だ。
そのことに感謝しているけれど、確かに婚約してからゆっくり2人で旅行などしたことはない。
こんなに喜ぶのなら、早く連れて行ってやれば良かったと思う柾樹だ。
「嬉しい……」
口元に両手を当てて、頬を染めている美桜の頬をいつものように指で撫でる。
「そんなに喜ぶと思わなかった」
「柾樹さんと一緒ならなんでも嬉しいですけど、こんな旅行なんて……。すごく嬉しいです」
「そうか」
「あの……」
一生懸命、美桜が柾樹を見上げて聞いてくる。
「ん? どうした?」
「あ、あの、無理はしなくていいんですけど本当に。でも、今度2人でお出かけしたいです」
「いつも出かけるだろう?」
「そうなんですけど。そういうのじゃなくて、あの……デートしたいんです。柾樹さんと」
なんだこの生き物、可愛いかよっ!!
「いいぞ。いつでも。美桜の行きたいところに行こう」
「本当⁉︎ いいんですか?」
「ああ。秘書には休みを取れとうるさく言われていたからな。じゃあ、まずは水着でも買いに行くか?」
「嬉しい」
顔を輝かせて嬉しいと喜ぶ美桜は可愛くて、今日は気が済むまで美桜を寝かせないと決めた柾樹だった。
「では、行こうか美桜」
次の休日。いつもとは違い、ラフな格好の柾樹が美桜に声をかける。
黒のヘンリーネックのシャツは胸元が少しだけ見えて、妙にセクシーだし、そのくせ整った顔立ちに眼鏡などかけていて、普段はしっかりセットしている髪を下ろしていたりしている。そんな姿に美桜は何というか言葉をなくす。
──素敵なんですけど……。
その柾樹がじいっと、美桜を見ている。
「え……と、柾樹さん? 行きます……よね?」
「可愛いな、シャツワンピ」
「あ、ありがとうございます。柾樹さんも素敵です」
あの黒王子がメロメロで、甘々だと。
そんな訳はないだろうと思っていたのだが、あながち噂は嘘でもないらしい。
デスクの上には、食べかけのおにぎりが転がっている。
ちょうど、ぽいっと口に入りそうな感じだ。
スープジャーまで置いてあって、その中身がお味噌汁のようだった。
──お嬢様と聞いていたけれど、なんと献身的な……。
倉田は感心してつい、おにぎりをじっと見つめてしまう。
「おい。俺のだからな」
「誰も食べませんよ。けど、美味しそうですね……。手作りのおにぎりなんて、ここ何年も食べてないです」
「確かに、おにぎりがそもそもこんなに美味しいと思ったことはなかったからな」
「美桜さんの愛情がこもっているというわけですか」
「そうだ。そんなものやる訳ないだろう」
柾樹に真顔で返される。
今まで、結婚というものに倉田は憧れはなかったが……なんだこの2人、ラブラブすぎるだろう!
心の中で密かに応援するようになったのだ。
そんなことをつらつらと思い出していたら、柾樹に声をかけられた。
「視察……な」
倉田は即答する。
「そうです。仕事のようなものです。それに……ここはコテージにはプライベートプールがあるんですよね……」
「プール? ああ、資料にもあったな」
「つまりですね、誰にも見られることなく美桜さんの水着姿を堪能できる、と」
「で、視察はいつにする?」
──早っ。
資料としてしか見ていなかったその内容が、倉田の一言で柾樹の中で、一気にリアリティが出てきたらしい。
水着? 美桜の…?
確かに誰にも見せたくない。けど、柾樹自身はとんでもなく見たい!
プライベートプールだと? そんなこと考えるやつバカか何かか? と普通なら思うところだが、ここは感謝の一言しかなかった。感じよかったらなんとかしてやってもいい、と思うくらいには。
家に帰った柾樹が早速その話をすると、美桜が瞳を輝かせたのである。
「プール付きのリゾートホテルですか? 素敵ですっ‼︎ 柾樹さんと一緒? 本当ですか⁉︎」
柾樹が忙しいことは知っているので、いつもはそのサポートを献身的にしてくれている美桜だ。
そのことに感謝しているけれど、確かに婚約してからゆっくり2人で旅行などしたことはない。
こんなに喜ぶのなら、早く連れて行ってやれば良かったと思う柾樹だ。
「嬉しい……」
口元に両手を当てて、頬を染めている美桜の頬をいつものように指で撫でる。
「そんなに喜ぶと思わなかった」
「柾樹さんと一緒ならなんでも嬉しいですけど、こんな旅行なんて……。すごく嬉しいです」
「そうか」
「あの……」
一生懸命、美桜が柾樹を見上げて聞いてくる。
「ん? どうした?」
「あ、あの、無理はしなくていいんですけど本当に。でも、今度2人でお出かけしたいです」
「いつも出かけるだろう?」
「そうなんですけど。そういうのじゃなくて、あの……デートしたいんです。柾樹さんと」
なんだこの生き物、可愛いかよっ!!
「いいぞ。いつでも。美桜の行きたいところに行こう」
「本当⁉︎ いいんですか?」
「ああ。秘書には休みを取れとうるさく言われていたからな。じゃあ、まずは水着でも買いに行くか?」
「嬉しい」
顔を輝かせて嬉しいと喜ぶ美桜は可愛くて、今日は気が済むまで美桜を寝かせないと決めた柾樹だった。
「では、行こうか美桜」
次の休日。いつもとは違い、ラフな格好の柾樹が美桜に声をかける。
黒のヘンリーネックのシャツは胸元が少しだけ見えて、妙にセクシーだし、そのくせ整った顔立ちに眼鏡などかけていて、普段はしっかりセットしている髪を下ろしていたりしている。そんな姿に美桜は何というか言葉をなくす。
──素敵なんですけど……。
その柾樹がじいっと、美桜を見ている。
「え……と、柾樹さん? 行きます……よね?」
「可愛いな、シャツワンピ」
「あ、ありがとうございます。柾樹さんも素敵です」
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