日常。

夏本ゆのす(香柚)

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別視点

敦人視点

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何があったというのか……

落ち着いていたはずの妹の 視線の揺れ。
 

泣きそうな それでいて 瞳以外は見事な微笑み。




右手で頬に触れ、こちらに視線を固定する。
「どうしたの?」
と優しく問えば
「なんでもない。」
と答え。しかし瞳の中の揺らぎが物語る。


なにが、だれが、なにを、だれを… …


しくじった

俺の中で
焦りが
生じる。



考えるんだ、思い出せ、時系列と… 




………




「そう。無理はだめだよ。 そうだ! 体調がいいなら花見でもどうだい?」

蓉子の好みを最優先に、提案する。

はっ!!っと音がしたかのような反応。

「いいの? お勉強をお休みしても?」

小さな、本当に小さな声でこたえる。

「僕とお花見は嫌かな? 体調は大丈夫なんだよね?」

そっと頭に手をやりながら問う。

「寒くないようにね。庭の桜桃のしたでお花見しよう。」

大急ぎで庭の木の下に席を用意させる。
冷えないように、足元にマットをひかせ、
大きめのクッションとブランケットと小さな座卓を。
温かいほうじ茶と大福をそえて。

蓉子を抱き上げて庭に用意した花見席に移る。
もちろん寒くないように厚着をさせて。
ふと考え抱いたままあぐらをかいた間に座らせた。
どうも下から冷たさが伝わるような気がして。

二人で見上げると桜の花によく似た桜桃。

「きれいねぇ。」
蓉子がはにかむように笑う。
ふうふうと、お茶を冷ましながら飲む。
「おいし … …」
小さな口をあけ、大福を食む。

「美味しいか? ふくさんがな、最近、蓉子の食欲がないって気にしてたぞ。」

「これ、ふくさんが?」

「ああ、食べやすく小さめだろ?」

「うん。 心配かけた?」

「皆な? 何か困ってるか? たまにはわがまま言えよ?」

「う ん … なんでかなぁ。蓉子 頭悪くって… お勉強がすすまないの」

「ん? どうした?」

「前はもうちょっと頑張れたんだけど。 … 最近のは解らないのが多くて。次までに覚えててって言われてもできないの。 先生たちため息ついちゃうの。」

「そっか。 でも勉強なんて無理しなくていいんだぞ。」

「う ん  …… でも …」

「もうちょっとしたら、暇になるから。俺がみてやるよ。」

「ちい兄さまが? ほんと?」

「少ししたら、休みになるから。約束するよ。」

「はい。 蓉子も頑張る…」

「頑張らなくていい。 」

「もお。 せっかく、がんばるっていたのに…」

くすくすと、声が、笑い声がでるようになった。

このまま、笑っていてくれ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


家庭教師を調べるか…
今何人付いているんだろうか…

ちっ、暫く家にいない間に…

ため息をつく教師ってろくなもんじゃない。

新しいのを 探そう。



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