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それぞれのつぶやき

旅の始まり《緑の風の会話》

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☆☆☆  《緑の風ヴァンベール》のメンバーの会話  ☆☆☆


「コーユさま、危ないです。鋏なんて持ち出して何をなさるんです」
「コーユさま、編み棒も危ないので馬車に慣れてからになさって下さい。ほら、ふらついてるじゃないですか」
「コーユさま、ご不浄ですか? あ、トイレですね。近くで見張ってますから、あの灌木のところでどうぞ。危険は無いようです。確認しました」
「お湯ですか? 少しでいいと?何をなさるんです」
「コーユさま、この食べ物はどこから出したんですか。生肉ではないですか? え? これはハムですか? 塩漬けだからそのままで良いと」
「これは、お茶ですか?色が黄色いですが。あ、さっぱりしてますね」
「コーユさま、いいですか? 何かなさる前におっしゃって下さい。心の準備をしますから」


 コーユさまは…… どこまでもコーユさまだった。
 馬車の中でさえうろちょろ。挙動不審で。
 いきなり、鋏を持ち出したり、長目の棒で編物を始めたり、昼食時だというのに火をおこして欲しいと言う。直ぐ出発するというのに。


「馭者台にいたリーダーとイーヴァは良いわよね。中の騒ぎを知らずにすんで」
「いや、びっくりしたから。いきなり生肉サンドやお茶をだしたり」
「パン、旨い。お茶、初めての味」
「どっから出したんだ? 鋏も棒もあの食料も」
「あーはははっ」



 小さい声で話し合うメンバー達。
 まだまだ、旅は続く。
 そう、出発して初めての小休憩が終わったばかり。


そして、襲撃後の会話


《シェヌの視点》
 予想していた通り、盗賊の襲撃があった。大金持ちの一人旅となると襲われるのは分かりきっている。
 ゆっくり進む事により、街からほど遠くない場所で狙われるように誘い込んだ。
 馭者台には、エルムとサパン。幌の中には婆さんとイリスとイーヴァと俺。普段だと馬も連れてくるが、今は馬車を引く二頭だけ。油断しているように見せるため、のんびり進む。
 イーヴァの索敵に引っ掛かった。人数がかなり多そうだ。予想外に多い。
 開けたところまで引き返せるか?
 矢が…… あそこまで戻りきるのは無理か? あと少しだが…… 
 馬車が止まる。中はイリスに任せ、俺たちは飛び出す。
 エルムと俺は敵を斬り倒す。相手の人数が多く少しずつ劣勢に。イーヴァは隠れながら、遠くから矢を放つ敵を倒していく。呼びに行ったサパンが間にあえばいいが。
 何? イリスが馬車から飛び出してきた。
 あ、えっ? 婆さんが倒れるようにでてきた。

 

《イーヴァの視点》
 …… 襲撃。隠れて矢を放つヤツを一人ずつ、仕留める。確実に。
 はっ? えっ? ひ、と、が…… 飛んできた……
 きを失ってる。縛る。縛る。…… 終わった。戻ろう。



《エルムの視点》
 途中まで計画通りだったが、敵の人数を見誤ったか。
 人数的に厳しそうだ。サパンには馬を馬車から離して町まで戻ってもらう事にした。繋いでいた金具を外して用意をする。
 ここで迎え撃つしかない。イーヴァに指で合図を出しながら、剣を構える。さあ、俺達に討たれるが良い。
 ひたすら、斬りむすび戦力を減らす。幾人か切り倒した。加減なんて出来ない。
 そして、次の敵に斬りかかろうとしたその時、突然飛んできた物が相手にぶつかり…… どちらも動かなくなった。それは人だった。
 辺りには何人も倒れている。終わったのか? あまりに突然だったが…… まあいい、縛り上げて集めるか……


《サパンの視点》
 御者台で気づいた。どうやら敵の数を兄貴は見誤っていたようだ。どうするのかと見ていると、どうやら俺は援軍を呼びに行かされるようだな。どうせこんな事をする奴らはギルドからも睨まれているし、街の衛兵たちからも睨まれているはずだ。ここで一気に捕まえてしまえば町の治安もさぞかし良くなることだろう。
どちらにも恩を売ることが出来るな。
 金具を外した馬に乗り、一気に駆ける。
 町についてすぐ門の衛兵に伝える。慌ただしく数人の兵が用意をした。門の責任者が使える奴でよかったぜ。
 大急ぎで現場に戻ってみると
 縛られたヤツが転がっている。馬車の方角はっと。
 思ったより早く終わったみたいだな。
 何故か食事の用意までしてある……
 何が有ったんだ?




「いなくなった?」
「吹っ飛んだ?」
「900?」
「不明スキル?」
「は? あの食料どっから?」
「何、作るんだ?」
「何を入れたんだ?」

「「「「説明を求めるっ!!」」」」
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