57 / 75
2章 森に引きこもってもいいかしら?
13.教会の子供たち3
しおりを挟む
さあ、ご飯が終わったら住む場所をなんとかしましょう。
ホルストに掛け合ってしばらくソルトと子供たちに部屋を借りたわ。お節介もやり過ぎ?
そうね。私もそう思うわ。でもこのままじゃ同じままだわ。すぐにソルトはまた体の不調に苦しむでしょうし、子供たちも飢えていくだけ。少し食べることが出来たからでしょうか、少しだけ顔色が良くなったソルトさんには今日だけでもといって部屋で休んでいて貰うように言いました。ベッドに横になった彼女をみるとすぐに眠りについたようでした。
何か、何かないかしら。
裏口から外に出てみると、畑のなれの果てが見えました。畑で何かが採れれば……
よく見ると、雑草の中にヨモギとドクダミに似たものが見えました。
ちぎって匂いを嗅ぐと確かにヨモギとドクダミに似ています。
えっと、エルムに見てもらえばこれが使える物かどうかが分かるでしょう。
少しお金も使うのだから、その辺の事を知っている人がいなければね。
「イリス、ギルドに行ってエルムに手伝って貰いたいことが有るって言ってきてくれる? 草や木の鑑定もしてもらいたいから、エルムが無理ならそれの出来る人をお願いね」
「コーユ様はここで何をされるのですか?」
「うん……まずはここの草をみてもらってからだわ」
不安そうなイリスですが、まずは使える手をかんがえないと。
イリスを急いでギルドに向かわせました。
「おばさん、オレらはどうなるん?」
「おばあさん、僕らで何かできますか?」
二人の男の子が不安そうにこちらを見ています。
今から冬が来るこの季節に何が出来るかしら。野菜を植えても育たないでしょうし……
あれらが使える草である事を祈るわ。ここが元教会の畑なら使えるかもしれないわ。
「今、鑑定が出来る人を呼んだから。するのはその後。手伝うわよね?」
二人にそういうとこくんと頷いてくれました。
先程までソルトさんのそばにいた女の子がこちらを見ていってきました。
「アタシにも何かができる?」
「ええ。あなたを頼りにしていますよ。料理は出来るかしら?」
女の子、ミクリンは少し考えるように下を向いていましたが、はっきりした声で答えました。
「おばあちゃんみたいなのは出来ないけど、教えて貰えるのなら頑張れる」
やはり女の子の方がしっかりしているわね。では頑張って貰いましょう。
イリスが戻ってくるまでにすべきことはしてしまいしょう。
ホルストにここをどれだけ使ってよいか聞きます。見捨てられている教会なので本部から何か言われるまではどう使っても構わないと。
ふっ。そう、ね。
確かに何か言われるまでだわ。彼も正式に雇われているわけではないのだもの。
小屋の事を聞くと、確かに馬小屋だったようです。あの小屋の屋根部分を住めるようにしていたらしいのですが、馬もいなくなり少しずつ壊れていったとか。
馬がいないのなら壊しても良いのではと思ったのですが、もし本部から人が来た時に困るというのです。
あれは物置代りにしかならないようですね。
部屋が、使える部屋がほしいわとつぶやくと、ホルストがあっと声を上げました。
「教会の仕事をするのであれば、住むだけなら部屋が使えます。ただし保証金が要りますが」
「保証金? いいわ。少々なら出すつもりよ。どんな部屋かしら。どんなお仕事なのかしら」
「この教会の修理と管理です。私がやっている手伝いです。でも現金収入にはなりませんが」
「例えば?」
「あのあたりの掃除や修理と神像の掃除、机や椅子の修理などです」
そういいながら指さしているのは、屋根に近いところや神像のてっぺんです。ああ、足が悪いのであの辺りは難しいのでしょう。
仕事を探してくれているのが分かります。
「部屋は使用人用の部屋がいくつかあるのでそれを使えば……ただ今は埃だらけですが」
「先ほど借りた部屋は?」
「あれは外から来た方用の物なので。今日はあなた様が宿泊費と同じだけを寄付して頂いたので使えましたが」
私も毎日金貨一枚は払えませんね。すぐ持っているお金が底をついてしまうわ。
「使用人用の部屋なら掃除をすれば、使えるのね?」
肯定の頷きを見た私は、ミクリンに二つの部屋を掃除するように言いました。どうして二つかですって?
男性と女性を分けるためですよ。今は小さくてもすぐに大きくなりますから。今なら二人ずつ使えるでしょう?
イリスが戻る前に、掃除を済ませてしまいましょう。
タッツウには桶に水を入れて持ってくるようにいいました。
セオルには箒を探してくるように言いました。
ミクリンには先ほどまで着ていた服を持ってきてもらいました。
それを雑巾代りにしましょう。部屋に入ってみると埃だらけですが、物はほとんど無いのですぐに掃除も終わるはずです。
三人が部屋に来るまでに、天井部分の埃だけ取ってしまいましょう。
得意の小さな風の魔法です。ほおら、くるくるくるくる……あら、壁の埃も取れて床のゴミもひとところに集まりましたね。
セオルが来る頃には風の掃除は二部屋とも終わり、集めた埃を箒と塵取りで集めてすてるだけです。
タッツウとミクリンが来た時にはそれも終わり、みんなで部屋の作り付けのベッドとクローゼットを拭きあげて終わりました。服を切ってもいいかと聞くとミクリンが自分のワンピースならいいというのでそれを雑巾にしました。どうやらズボンなどは作るのが難しいのでそれに当てをしながら使うのですって。ワンピースはええ、タックやフリルの無いざっくりした作りのもので、それでもあちらこちらに継ぎ当てしてありましたわ。
「コーユ様、どこですかー」
イリスの声が聞こえます。そんな大声で呼ばなくても聞こえますよ。もう。
厨房の近くにある使用人部屋ですからね。
すぐにイリスの所まで行きます。するとそこにはサパンがいました。
「エルムは所用で出かけているのですって。サパンでも鑑定できるから」
「イリス。でもじゃないでしょう。サパン、あなたも鑑定が出来たのね。じゃあ、早速で悪いのだけれども、こっちに来てくれる?」
ついサパンの手を引いて、裏の畑あとに来ました。あ、イーヴァじゃなかったわ……
ま、いいわ。サパンも何も言わなかったもの。
「この植物なんだけど、エルブで合ってる?」
「ああ、それはエルブで間違いない」
「毒は無いのよね?」
「薬の基材になるものだからな。毒ではない」
あ、やっぱり。
「じゃあ、こっちはなんていうの?毒は無いわよね?これも薬の基材になるのかしら?」
小さな木を指さして聞いた。サパンはじっとそれを見て、葉を一つとると揉んで匂いを嗅いだ。
「これはニッキィだ。これは気付け薬の基材だ。毒は無い」
そう……
うんうんと私は頷いて聞いた。
あとは、あ、あれ!
白い十字の花を摘んでサパンに見せた。
「これは何? 毒は無いのでしょう?」
サパンはその花を見るなり嫌そうな顔をした。
「臭い……それはジュウジ草だ。毒は無いが臭い。毒消し草の基材だ」
だと思ってた。独特の匂いがするもの。でもあっちの世界では十薬っていって医者いらずなのよ。お茶にもなるし。肌荒れや便秘にもいいの。
「サパン、これらってお金になるかしら?」
「あ……なるかな? 依頼書が出ている時なら売れると思う」
そう考えながら答えてくれる。
どれも私が使ったことの有るものだわ。じゃあ、これを使った商品なら作れるわね。
とりあえず、見分けがつくこれらを分けてあの小屋に干しておきましょう。もうすぐ冬だもの。必要になるときは来るはず。
三人を呼び、二つの植物を見せる。
ヨモギはミクリンに、タッツウにはジュウジ草を集めて束にするように言った。タッツウはジュウジ草を見てう へぇって言っていたけれど、着替えてからするといって部屋に走って行った。
セオルには木の皮を剥ぐようにいう。木の幹に縦に横に切れ目を入れてそっとはがすのだ。
ちぎれてもいいから、なるべく塊になるように指示を出した。
サパンが男の子を見ていてくれるというので、私は女の子を見ることにしました。
そしてミクリンがいくつかヨモギの束を作ったところで、彼女にはそれを使ったお茶とお菓子を作って貰う事にした。
お茶は簡単なの。
なるべく柔らかい葉を洗い熱湯をかけるだけ。
あとは美味しい時間を見分ければいいの。
もう一つはお菓子。日持ちをさせたいのでクッキーみたいなものに練りこみたいものね。
ただ、砂糖が無いのでどうしようかとも思うの。油も無いし。だからまずは先ほど作った薄焼きのパンに練りこんでみようとおもいます。
練りこむ前に、湯がいて切り刻んで、すり鉢……あ、すり鉢が無いわ。
すり鉢が無いので……包丁で出来るだけ小さく刻みました。
まずは少しだけ試作してみましょう。
小麦粉に水の代わりにミルクを入れて、刻んだヨモギを少しだけ混ぜて。
薄焼きのパンみたいに焼いてみました。
熱々のそれをちぎって口に入れると、ヨモギの香りがして少し気分が落ち着きます。
ほんの少しだけ苦い気がします。やはり少しだけでも甘味を足さなくてはね。
後ろで見ていたミクリンに、一口大に千切ったのを試食してもらいました。
「どう? 苦みは気になるかしら?」
ミクリンは苦みが気になったのか、一口大なのにさらにそれを小さく千切ってから食べていました。
「少しだけ苦いけど、大丈夫食べられる。おばあちゃん、なんでパンの中にこれを入れるの?」
「ん? そうね。ここにはお野菜が少ないでしょう? その代わりになるものを探してみているのよ。私の国ではこの草の葉をお茶やお菓子にしていたの。食べて分かったと思うけど苦みが有るから沢山は食べられないけれども。あとこの葉っぱは薬草なんですって。ポーションの原料の一つになるそうよ」
「えっ? それじゃあ、食べないで誰かに買ってもらう方が良いんじゃないの?」
「そうね。お金にはなるけど、その前にあなた達の健康が先じゃないかと思うのよ。あまり食べて無かったんじゃないの?」
「うん。最近、外に行ったお姉ちゃんからの仕送りが無くなったの。前は少しずつ送ってくれてたんだけど。前は他の人も送ってくれてたけど……最近は無くなって……今は近所の人が持ってきてくれるのを食べてるの」
「そう。大変なのね」
「おばあちゃん、ありがとう。でもね、仕方ないんだよ。もう冬だから。みんなも冬支度をしなきゃいけないから」
「あなたより大きい人はいないの?」
「うん。大きくなるとみんな出て行かなきゃいけないんだよ。自分で食べて行かなきゃ……」
何か決まり事でもあるのかしら?
「男の子はね、冒険者になるの。ギルドで色々仕事を貰うのよ。女の子は料理屋で働いたり、酒場で働くの。お金がたくさん貰えるから。それでね……」
話始めると、堰を切ったように話が止まりません。出て行った子供たちのこと、ソルト先生の事、ホルストの事、近所のおばさんやおじさんのこと、自分の両親の事……
話は飛びながら、とにかく色々な事を話します。
ああ、ソルトさんが病気になってから不安だったことが一度に噴出したみたいね。
そうね、食べるものもない、これから冬になるというのに薪も無い、家として使っていた小屋ももう限界のような状態で……今までは率先していろいろしてくれていたソルトさんも寝込んでしまって。一番年が上なんだからと、気をはっていたみたいなの。ホルストも色々差し入れをしていたようですが、すでに身銭を切って教会自体を修繕していたため援助するお金は残っていなかったようです。
ふぅ、と一息をついたみたいなので、先に入れておいたヨモギ茶をカップに注いで差し出しました。
彼女はそれを両手でぎゅっと握りしめてから、一口飲みました。
こくんと一口……するとびっくりしたようにこちらを見ます。
「おばあちゃん。これ、すっきりするんだね。おいしい……」
そのあとカップに入っているお茶をごくごく飲み干していいました。
「何だか元気になった気がする。お話を聞いてくれてありがとう」
にっこり笑った顔は晴れやかでした。頬に赤みもさして。
元気? 頬が本当に元気な子みたいに赤みが……。
あら。もしかして。
とりあえず、サパンを呼びに行きました。
お茶と、パンを鑑定してもらいましょう。
畑からサパンを厨房に呼んで鑑定を頼もうとしたところに、ソルトさんに付いていたイリスがやってきました。
どうやら彼女は眠ったようです。
イリスに状態を聞くと、全体的に疲れが溜まっているようで体力も無くなっている感じなんですって。
「分かったわ。サパン、このお茶とパンを鑑定してもらえる?」
訝しそうにサパンが私を見ますが、調べるのが先と彼を促しました。
サパンが何やら呟いていましたが……
ビックリしたかのように大きく目を見開いています。あなた、そんなに大きく目が開けられたのね。知らなかったわ。
ではなくて、結果が聞きたいわ。
────────────────────────
誤字脱字はまた今度直します。
同じくルビ振りも。
とりあえず、更新をしました。
ホルストに掛け合ってしばらくソルトと子供たちに部屋を借りたわ。お節介もやり過ぎ?
そうね。私もそう思うわ。でもこのままじゃ同じままだわ。すぐにソルトはまた体の不調に苦しむでしょうし、子供たちも飢えていくだけ。少し食べることが出来たからでしょうか、少しだけ顔色が良くなったソルトさんには今日だけでもといって部屋で休んでいて貰うように言いました。ベッドに横になった彼女をみるとすぐに眠りについたようでした。
何か、何かないかしら。
裏口から外に出てみると、畑のなれの果てが見えました。畑で何かが採れれば……
よく見ると、雑草の中にヨモギとドクダミに似たものが見えました。
ちぎって匂いを嗅ぐと確かにヨモギとドクダミに似ています。
えっと、エルムに見てもらえばこれが使える物かどうかが分かるでしょう。
少しお金も使うのだから、その辺の事を知っている人がいなければね。
「イリス、ギルドに行ってエルムに手伝って貰いたいことが有るって言ってきてくれる? 草や木の鑑定もしてもらいたいから、エルムが無理ならそれの出来る人をお願いね」
「コーユ様はここで何をされるのですか?」
「うん……まずはここの草をみてもらってからだわ」
不安そうなイリスですが、まずは使える手をかんがえないと。
イリスを急いでギルドに向かわせました。
「おばさん、オレらはどうなるん?」
「おばあさん、僕らで何かできますか?」
二人の男の子が不安そうにこちらを見ています。
今から冬が来るこの季節に何が出来るかしら。野菜を植えても育たないでしょうし……
あれらが使える草である事を祈るわ。ここが元教会の畑なら使えるかもしれないわ。
「今、鑑定が出来る人を呼んだから。するのはその後。手伝うわよね?」
二人にそういうとこくんと頷いてくれました。
先程までソルトさんのそばにいた女の子がこちらを見ていってきました。
「アタシにも何かができる?」
「ええ。あなたを頼りにしていますよ。料理は出来るかしら?」
女の子、ミクリンは少し考えるように下を向いていましたが、はっきりした声で答えました。
「おばあちゃんみたいなのは出来ないけど、教えて貰えるのなら頑張れる」
やはり女の子の方がしっかりしているわね。では頑張って貰いましょう。
イリスが戻ってくるまでにすべきことはしてしまいしょう。
ホルストにここをどれだけ使ってよいか聞きます。見捨てられている教会なので本部から何か言われるまではどう使っても構わないと。
ふっ。そう、ね。
確かに何か言われるまでだわ。彼も正式に雇われているわけではないのだもの。
小屋の事を聞くと、確かに馬小屋だったようです。あの小屋の屋根部分を住めるようにしていたらしいのですが、馬もいなくなり少しずつ壊れていったとか。
馬がいないのなら壊しても良いのではと思ったのですが、もし本部から人が来た時に困るというのです。
あれは物置代りにしかならないようですね。
部屋が、使える部屋がほしいわとつぶやくと、ホルストがあっと声を上げました。
「教会の仕事をするのであれば、住むだけなら部屋が使えます。ただし保証金が要りますが」
「保証金? いいわ。少々なら出すつもりよ。どんな部屋かしら。どんなお仕事なのかしら」
「この教会の修理と管理です。私がやっている手伝いです。でも現金収入にはなりませんが」
「例えば?」
「あのあたりの掃除や修理と神像の掃除、机や椅子の修理などです」
そういいながら指さしているのは、屋根に近いところや神像のてっぺんです。ああ、足が悪いのであの辺りは難しいのでしょう。
仕事を探してくれているのが分かります。
「部屋は使用人用の部屋がいくつかあるのでそれを使えば……ただ今は埃だらけですが」
「先ほど借りた部屋は?」
「あれは外から来た方用の物なので。今日はあなた様が宿泊費と同じだけを寄付して頂いたので使えましたが」
私も毎日金貨一枚は払えませんね。すぐ持っているお金が底をついてしまうわ。
「使用人用の部屋なら掃除をすれば、使えるのね?」
肯定の頷きを見た私は、ミクリンに二つの部屋を掃除するように言いました。どうして二つかですって?
男性と女性を分けるためですよ。今は小さくてもすぐに大きくなりますから。今なら二人ずつ使えるでしょう?
イリスが戻る前に、掃除を済ませてしまいましょう。
タッツウには桶に水を入れて持ってくるようにいいました。
セオルには箒を探してくるように言いました。
ミクリンには先ほどまで着ていた服を持ってきてもらいました。
それを雑巾代りにしましょう。部屋に入ってみると埃だらけですが、物はほとんど無いのですぐに掃除も終わるはずです。
三人が部屋に来るまでに、天井部分の埃だけ取ってしまいましょう。
得意の小さな風の魔法です。ほおら、くるくるくるくる……あら、壁の埃も取れて床のゴミもひとところに集まりましたね。
セオルが来る頃には風の掃除は二部屋とも終わり、集めた埃を箒と塵取りで集めてすてるだけです。
タッツウとミクリンが来た時にはそれも終わり、みんなで部屋の作り付けのベッドとクローゼットを拭きあげて終わりました。服を切ってもいいかと聞くとミクリンが自分のワンピースならいいというのでそれを雑巾にしました。どうやらズボンなどは作るのが難しいのでそれに当てをしながら使うのですって。ワンピースはええ、タックやフリルの無いざっくりした作りのもので、それでもあちらこちらに継ぎ当てしてありましたわ。
「コーユ様、どこですかー」
イリスの声が聞こえます。そんな大声で呼ばなくても聞こえますよ。もう。
厨房の近くにある使用人部屋ですからね。
すぐにイリスの所まで行きます。するとそこにはサパンがいました。
「エルムは所用で出かけているのですって。サパンでも鑑定できるから」
「イリス。でもじゃないでしょう。サパン、あなたも鑑定が出来たのね。じゃあ、早速で悪いのだけれども、こっちに来てくれる?」
ついサパンの手を引いて、裏の畑あとに来ました。あ、イーヴァじゃなかったわ……
ま、いいわ。サパンも何も言わなかったもの。
「この植物なんだけど、エルブで合ってる?」
「ああ、それはエルブで間違いない」
「毒は無いのよね?」
「薬の基材になるものだからな。毒ではない」
あ、やっぱり。
「じゃあ、こっちはなんていうの?毒は無いわよね?これも薬の基材になるのかしら?」
小さな木を指さして聞いた。サパンはじっとそれを見て、葉を一つとると揉んで匂いを嗅いだ。
「これはニッキィだ。これは気付け薬の基材だ。毒は無い」
そう……
うんうんと私は頷いて聞いた。
あとは、あ、あれ!
白い十字の花を摘んでサパンに見せた。
「これは何? 毒は無いのでしょう?」
サパンはその花を見るなり嫌そうな顔をした。
「臭い……それはジュウジ草だ。毒は無いが臭い。毒消し草の基材だ」
だと思ってた。独特の匂いがするもの。でもあっちの世界では十薬っていって医者いらずなのよ。お茶にもなるし。肌荒れや便秘にもいいの。
「サパン、これらってお金になるかしら?」
「あ……なるかな? 依頼書が出ている時なら売れると思う」
そう考えながら答えてくれる。
どれも私が使ったことの有るものだわ。じゃあ、これを使った商品なら作れるわね。
とりあえず、見分けがつくこれらを分けてあの小屋に干しておきましょう。もうすぐ冬だもの。必要になるときは来るはず。
三人を呼び、二つの植物を見せる。
ヨモギはミクリンに、タッツウにはジュウジ草を集めて束にするように言った。タッツウはジュウジ草を見てう へぇって言っていたけれど、着替えてからするといって部屋に走って行った。
セオルには木の皮を剥ぐようにいう。木の幹に縦に横に切れ目を入れてそっとはがすのだ。
ちぎれてもいいから、なるべく塊になるように指示を出した。
サパンが男の子を見ていてくれるというので、私は女の子を見ることにしました。
そしてミクリンがいくつかヨモギの束を作ったところで、彼女にはそれを使ったお茶とお菓子を作って貰う事にした。
お茶は簡単なの。
なるべく柔らかい葉を洗い熱湯をかけるだけ。
あとは美味しい時間を見分ければいいの。
もう一つはお菓子。日持ちをさせたいのでクッキーみたいなものに練りこみたいものね。
ただ、砂糖が無いのでどうしようかとも思うの。油も無いし。だからまずは先ほど作った薄焼きのパンに練りこんでみようとおもいます。
練りこむ前に、湯がいて切り刻んで、すり鉢……あ、すり鉢が無いわ。
すり鉢が無いので……包丁で出来るだけ小さく刻みました。
まずは少しだけ試作してみましょう。
小麦粉に水の代わりにミルクを入れて、刻んだヨモギを少しだけ混ぜて。
薄焼きのパンみたいに焼いてみました。
熱々のそれをちぎって口に入れると、ヨモギの香りがして少し気分が落ち着きます。
ほんの少しだけ苦い気がします。やはり少しだけでも甘味を足さなくてはね。
後ろで見ていたミクリンに、一口大に千切ったのを試食してもらいました。
「どう? 苦みは気になるかしら?」
ミクリンは苦みが気になったのか、一口大なのにさらにそれを小さく千切ってから食べていました。
「少しだけ苦いけど、大丈夫食べられる。おばあちゃん、なんでパンの中にこれを入れるの?」
「ん? そうね。ここにはお野菜が少ないでしょう? その代わりになるものを探してみているのよ。私の国ではこの草の葉をお茶やお菓子にしていたの。食べて分かったと思うけど苦みが有るから沢山は食べられないけれども。あとこの葉っぱは薬草なんですって。ポーションの原料の一つになるそうよ」
「えっ? それじゃあ、食べないで誰かに買ってもらう方が良いんじゃないの?」
「そうね。お金にはなるけど、その前にあなた達の健康が先じゃないかと思うのよ。あまり食べて無かったんじゃないの?」
「うん。最近、外に行ったお姉ちゃんからの仕送りが無くなったの。前は少しずつ送ってくれてたんだけど。前は他の人も送ってくれてたけど……最近は無くなって……今は近所の人が持ってきてくれるのを食べてるの」
「そう。大変なのね」
「おばあちゃん、ありがとう。でもね、仕方ないんだよ。もう冬だから。みんなも冬支度をしなきゃいけないから」
「あなたより大きい人はいないの?」
「うん。大きくなるとみんな出て行かなきゃいけないんだよ。自分で食べて行かなきゃ……」
何か決まり事でもあるのかしら?
「男の子はね、冒険者になるの。ギルドで色々仕事を貰うのよ。女の子は料理屋で働いたり、酒場で働くの。お金がたくさん貰えるから。それでね……」
話始めると、堰を切ったように話が止まりません。出て行った子供たちのこと、ソルト先生の事、ホルストの事、近所のおばさんやおじさんのこと、自分の両親の事……
話は飛びながら、とにかく色々な事を話します。
ああ、ソルトさんが病気になってから不安だったことが一度に噴出したみたいね。
そうね、食べるものもない、これから冬になるというのに薪も無い、家として使っていた小屋ももう限界のような状態で……今までは率先していろいろしてくれていたソルトさんも寝込んでしまって。一番年が上なんだからと、気をはっていたみたいなの。ホルストも色々差し入れをしていたようですが、すでに身銭を切って教会自体を修繕していたため援助するお金は残っていなかったようです。
ふぅ、と一息をついたみたいなので、先に入れておいたヨモギ茶をカップに注いで差し出しました。
彼女はそれを両手でぎゅっと握りしめてから、一口飲みました。
こくんと一口……するとびっくりしたようにこちらを見ます。
「おばあちゃん。これ、すっきりするんだね。おいしい……」
そのあとカップに入っているお茶をごくごく飲み干していいました。
「何だか元気になった気がする。お話を聞いてくれてありがとう」
にっこり笑った顔は晴れやかでした。頬に赤みもさして。
元気? 頬が本当に元気な子みたいに赤みが……。
あら。もしかして。
とりあえず、サパンを呼びに行きました。
お茶と、パンを鑑定してもらいましょう。
畑からサパンを厨房に呼んで鑑定を頼もうとしたところに、ソルトさんに付いていたイリスがやってきました。
どうやら彼女は眠ったようです。
イリスに状態を聞くと、全体的に疲れが溜まっているようで体力も無くなっている感じなんですって。
「分かったわ。サパン、このお茶とパンを鑑定してもらえる?」
訝しそうにサパンが私を見ますが、調べるのが先と彼を促しました。
サパンが何やら呟いていましたが……
ビックリしたかのように大きく目を見開いています。あなた、そんなに大きく目が開けられたのね。知らなかったわ。
ではなくて、結果が聞きたいわ。
────────────────────────
誤字脱字はまた今度直します。
同じくルビ振りも。
とりあえず、更新をしました。
157
お気に入りに追加
7,447
あなたにおすすめの小説

幸子ばあさんの異世界ご飯
雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」
伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。
食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
生前SEやってた俺は異世界で…
大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん
ファンタジー
旧タイトル 前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~
※書籍化に伴い、タイトル変更しました。
書籍化情報 イラストレーター SamuraiG さん
第一巻発売日 2017/02/21 ※場所によっては2、3日のずれがあるそうです。
職業・SE(システム・エンジニア)。年齢38歳。独身。
死因、過労と不摂生による急性心不全……
そうあの日、俺は確かに会社で倒れて死んだはずだった……
なのに、気が付けば何故か中世ヨーロッパ風の異世界で文字通り第二の人生を歩んでいた。
俺は一念発起し、あくせく働く事の無い今度こそゆったりした人生を生きるのだと決意した!!
忙しさのあまり過労死してしまったおっさんの、異世界まったりライフファンタジーです。
※2017/02/06
書籍化に伴い、該当部分(プロローグから17話まで)の掲載を取り下げました。
該当部分に関しましては、後日ダイジェストという形で再掲載を予定しています。
2017/02/07
書籍一巻該当部分のダイジェストを公開しました。
2017/03/18
「前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~」の原文を撤去。
新しく別ページにて管理しています。http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/258103414/
気になる方がいましたら、作者のwebコンテンツからどうぞ。
読んで下っている方々にはご迷惑を掛けると思いますが、ご了承下さい。

魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。
「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。
魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。
――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?!
――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの?
私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。
今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。
重複投稿ですが、改稿してます
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。