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御礼SS

増刷御礼SS イリスのお料理教室

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かつてイリスにとって料理は鬼門だった。
けれどもコーユ様に少しずつ教わって、毎日手伝うようになってほんの少しだけ自信ができてきた。
難しいことは無いんだと少しおもえるようになってきたから。

今日も朝からスープを作っている。
オニョ玉葱を涙を流しながら薄く切って鍋に入れる。コッコの皮を細長く切ってそれも鍋に入れる。
うん。ここまでは大丈夫。前にもできたところ。ここからはコンロに火をつけてから弱火にする。
魔道具のコンロは魔力をたっぷり溜めてあるから誰にでも使える優れもの。炎の調節もレバーで出来るから、簡単なはず。炎がついたら、ごく弱火にしてオニョとコッコの皮を炒める。鍋にくっつかないように混ぜながら……。

皮から油が染み出できたら、その油をオニョに吸わせるように、ゆっくりかき混ぜながら焦げ付かないように混ぜて。前はここで焦げ付いた挙句、鍋にこびりついてしまったのよ。火は弱火でなきゃね。なかなかオニョが透明にならないわ。
ここで焦っちゃダメなのよね。
つい、火を強くしちゃって……。この間は焦げてしまって鍋が真黒焦げに……ううん。失敗を忘れないのが大切ってコーユ様も言ってたわ。あっ!またコーユ様って。コーユさんって言ってねって言われたのに。
難しいわ。もう、コーユ様がくせになっているから。

あっ、オニョが!
ふぅ。大丈夫だった。えっと、透明になってきたら水を入れて。ブクブクを取るんだったわね。

あくって言ってたけど。よく解らなかった。今度ちゃんと聞いてみようとは思っているの。

えっと、あとは刻んだマテを入れて……。これで良かったのかしら?
何か忘れているような。





「まぁ、イリス。おはよう。今朝は早いのね。いい匂いね。何を作ったのかしら」

「コーユ様! おはようございます。先日、教えて頂いた簡単マテスープを作ってみたのですが」

「どうしたの?」

「何か忘れているような……」

「そう? 味見してみましょうね」


コーユ様は木の匙を使って小さな器にほんの一口分掬って入れた。
そうして、器に口をつけると何か頷いていらした。

「イリス、あなたも一口飲んだら分かるわ」

そう言って来た。飲んだだけで分かるのでしょうか。
同じように匙で掬って器にいれる。冷たい器が熱いスープをほんの少し冷ましてくれた。
こくん。口をつけてわかった。

「コーユ様……」

「大丈夫。大丈夫よ」

何てこと。飲めない事は無いけれど。オニョの優しい甘味とマテとコッコの旨味……
ちゃんと教わった優しい味はかすかに有るけれど……

「大丈夫よ、イリス。今から塩を少し足せばいいの。そうすればちゃんとしっかりした味になるから」

そう、私は味付けを忘れてしまっていたのでした。

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