東美晴の怪奇録 第二巻 〜桜散る緑の季節に〜

箱天天音/hakoten amane

文字の大きさ
上 下
4 / 5
番外 <それはいつもの日常?>

添の誕生日

しおりを挟む

ある日の夜、もう人間達はとっくに寝ているというのに琥珀川は突然目覚める。そしてそのまま琥珀川はこの日のために用意しておいた酒を取りそのまま縁側の方へ向かう。
 どっとあぐらをかいて琥珀川は酒を飲み始める。何杯か口にして左側に話しかける。
「どうした、添。なんか用か」
 と言う。
 さわやかな風が吹きそこに出てきたのは添だった。
「どうしたじゃないですよ。琥珀川様。覚えててくれたのですね。私の誕生日」
 と添が言う。
 そう言われると琥珀川は
「ふん、そうだったかの」
 と言う。それに対して添は
「そんなこと言って、きちんと覚えてるじゃないですか。覚えてないのなら、じゃあなんで酒器が二つもあるんですか」
 と言う。
「……忘れるものか。今日はお前の誕生日なんて」
 そう琥珀川が言うと添は『お隣、失礼しますね』と言って琥珀川の隣に座る。
 そして琥珀川の隣に座るなり添が
「いやー、良かったです。結構人の誕生日とかをよく忘れる琥珀川様が私の誕生日覚えててくださるなんて」
 と言う。それに対して琥珀川は
「添と鈴と華と白蘭の誕生日は完全に記憶してる。美晴と優馬、桜狐の誕生日は覚えてないしそもそも聞いてない」
 と言う。
 それから少し添と酒を飲み交わし、程よく酔いが回ってきた頃、添がこんな事を言ってきた。
「琥珀川様~。久しぶりにあの呼び名で呼んでいいですか~。でも眠くなっちゃいましたよ~」
「添、お前は本当に酒に弱いな」
 そう琥珀川が言うと添はえへへと笑いながら琥珀川に寄りかかる。
「んー。おやすみなさーい。
 そう言って添はそのまま寝てしまった。
 『添にお父さんなんて呼ばれるのはいつぶりだろうか』そんな事を琥珀川は思っていた。添を含め鈴と華にも普段はあまり言うなと言っているが、たまにそう言われるのも良いものだと琥珀川は感じた。
 さて、と琥珀川は思い、もう寝る事にした。琥珀川は布団に入る瞬間、星を読むのを忘れたと思ったがそんなことお構いなしで寝るという結論に辿り着いた。
 その日の夜空は晴れていて星々がキラキラと輝いてとても幻想的な夜空だった。
 ――だが一つ、妙に輝いていた星があったのを琥珀川は気づいてなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

処理中です...