時の記憶

知る人ぞ知る

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村長は痛みに耐えられる様に瞼を固く閉じた


けれど想像していた痛みは何時までたっても来ない。

かわりに聞こえたのは焦っている少年の声だった。


「怪我はありませんか?」

ぱちりと瞳を開ければ自分の腕を掴んでいるのは、猫の様な目をしたとても綺麗な白髪の少年だった。

少しぶかぶかの民族衣装のような物を着て下駄を履いている。

カチューシャに付いている飾りがシャラリと揺れた。


美麗な少年。堂々と黒い物体と向き合う彼は、とても余裕があるように見える


「大丈夫じゃが、君は--」

「詳しい話は後で!ほら、こっちに逃げてっ」

グイッと再び手を引かれ、バランスを崩す村長。
倒れそうになるも少年が肩でしっかりと支えてくれる。

先程まで村長がいた場所は黒い物体の力で、広範囲に地割れがおきていた。


「これ食らったら確実にこの世とおさらばだね」

「!?」

村長は振り返って地面を見れば、雪で覆われていた地面が掘り返され、はっきり見えた。


少年は黒い物体を見据えたまま、村長に荒く告げる

「村長さん、あなたはこのまま村へ引き返すんだ。一刻も速くね」

「それはどういう--それに何故村長だと」

「それについては気にしないで--って」

会話の途中で真っ黒な物体はこちらに向き直すと、よろめきながらも、ものすごい速さで突進してくる。

奴は何処か怪我をしたのだろう。ボタボタとまるで血の様な黒い粒を落としていた。


「会話の途中で邪魔すんなよ」


少年はドスのきいた声で吐き捨てると、パチンと指を鳴らした。

すると途端に奴は動かなくなる。

まるで奴の周りに結界が張られているかのようだった。


更に目に見える壁が3枚、奴を取り囲むように現れた。
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