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 ジョーはジークベルトに向けて手紙を書いていた。
 書き終えた手紙は、1度俺に見せつつ小声で朗読し、ものすごく細かな指示をレッドドラゴンに出した。
 「(ご主人に分かったと伝えて)」
 「チビが分かったって言ってる」
 「(チビって言うな)」
 ふふっ。
 「今のはなんて?」
 「……チビって言われるのが嫌みたいだ」
 アハハと笑うジョーの姿は、15王女としてやってきた時からは想像できないくらいに生き生きとしているように見えて、それで俺は少しの間だけ”父親殺し”ではなく”王子の護衛”として生きることに決めた。
 「アールはホーンドオウル領を出たことはある?」
 魔物退治を任されていたから、遠出はしたことがないから、確かに領から出たことは1度もなかったな。
 「ないよ」
 ついでに言えば教育を受けたこともないから、父さんと兄さんが教えてくれたことが全てだ。
 「俺も大陸に来るのは初めてだから、王都までの道のりは分からない……」
 あ、王都までの道のりなら知ってる。
 でも、これから島に戻るんじゃなかった?
 「島には?父さんを説得に行くんじゃなかった?」
 1人でなんて行かせないからな。嫌だと言ってもついて行くし、俺が盾になるから。
 「さっきの手紙でホーンドオウル侯爵の行方が分からなくなったと兄さん達に知らせただろ?その後の行動が知りたい。場合によっては島に行く必要がなくなるから」
 その後、か……レッドドラゴンにしていた指示を思い返せば、手紙を渡した後は一旦ホーンドオウル家のジョーの部屋にゆっくりと飛んで戻って、兄さん達が屋敷に戻って行動を起こし始めたら森を経由して見張りがないことを確認してから宿に戻って来いって言ってたな。
 兄さん達の行動か……父さんの亡骸を見つけた後は跡を継ぐわけだから、王城にいって許可をとるんだっけ?それで王都に行こうとしてるのか。
 「チビが戻ってくるまではここで待機するんだよな?」
 「兄さん達は侯爵が行方不明になったのではなく死亡していることに気が付くだけじゃなく、公爵の遺体を見つけて葬儀をあげなければならない。だから行動を起こすにも時間はかかる筈だ。だから先に王都に行って大陸の王に島の王が戦争を仕掛けようとしていると忠告をする」
 なるほど。
 だけど、王様が俺達の話を聞いてくれるだろうか?
 下手をすればその時点で俺は父親殺しの罪で捕らえられて処刑だ。
 そうなると、俺と一緒にいるジョーも疑われてしまう……ジョーを守りたいというのに、俺のせいで危険に晒すわけにはいかない。
 だからって、ここへきて俺が「1人で王都に行く」と言って納得してくれるわけないから……。
 「手紙を出そう。王様と王妃様、王子達全員に同じ手紙を出せば、誰か1人でも目を通してくれる人がいるかもしれない」
 いや、手当たり次第に同じ文面で手紙を送ったら、イタズラだと思われる可能性もあるか……。
 「現時点で侯爵が死んでいることは俺達しか知らない。だからできるだけ早く王都に行って、大陸の王に2人で知らせる必要がある」
 ジョーだけが行くのではなくて、俺も行く理由はなんだろう?護衛かなにかだろうか?
 確かに、王子が護衛の1人もつけていないのは不自然だな。
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