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37:明日が本番です

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「いよいよ明日は大会当日だな!」

 長く辛い修行を経て(わたしは何もしてないけど…)、ようやく明日はパン大会当日です!
 フランスパンみたいな硬い皮ではなく、わたしの言葉をヒントにコッペパンのようなものを開発した上兄様とマルコ。
 主な主食がパンな文化のこの世界。硬いパンから柔らかいものに変わっていって、新しいパンが出て流行ればいいなあ。

「そうだね。ここまでやったのなら優勝できるといいけど」

 それにしても、だ。上兄様の思惑がイマイチ掴めていない。
 にこにこと穏やかな笑顔を浮かべているけど、その笑顔がとても怖いと感じてしまっている……。

「フィア?大丈夫か?」
「え?何がですの?」
「すげー難しい顔してるから」

 黙ったままのわたしを見て、心配そうにするマルコ。その後ろでは上兄様もわたしのことを同じように心配そうな顔で見ている。
 悩ませている原因が自分だと思ってなさそうな様子にむっとしてしまうけど、反応を見せるのは悔しいので首を横に振る。

「いいえ、大丈夫ですわ」
「明日は本番なんだから、しっかりしてくれよ?」

 わたしはともかく、マルコにはしっかりと優勝してもらいたい。そして上手くいけばわたしはパン屋アドバイザーとしての道が……開かれそうにはない。

「じゃあ帰ろうか、フィア」
「はい、お兄ちゃん」
「また明日な!」

 マルコに見送られて、上兄様と外に出る。辺りはもう真っ暗で人通りが少ないので、歩いて帰る。ずっと後ろからは一応護衛の騎士が付いてきているけど。

「…上兄様」

 城の裏庭の前に近づいたとき、立ち止まって、上兄様を見る。周りに人は居ない。

「どうしたんだい、フィア」
「この前のお話ですわ」

 わたしがそう言うと、上兄様の笑顔が少しだけぴくりと動いたのが見えた。

「……ああ、そのことをずっと気にしていたのか」

 少しして、上兄様がふっと笑った。
 上兄様の反応次第では、わたしは城には戻らない。……もしかしたら、戻れないかもしれない。
 わたしが本当の王女じゃないとみんなに知れれば戻ることなんて出来ないだろうし……このまま追い出されてしまうのは、不安だし…嫌なんて思ってしまっている。お父様にも、お母様にも、お兄様たちにも……そして、レオにもとても愛着してしまっているんだ、わたしは。

「終わったら話そうと思ってたけど…いいよ。じゃあ話そうか」

 上兄様がにっこりと笑ってわたしを見る。ごくりと固唾を飲み込んで、上兄様から語られる言葉を待った。
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