転生悪役王女は平民希望です!

くしゃみ。

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18:認められたい気持ちはわかるんです…

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 アシュリーは女の子だった……はずだ。いやはっきりと女の子だと言われていたわけじゃない。思い返してみれば「こう見えて、恋愛対象は女の子なのよ」という台詞を彼女…いや、彼が言っていた。一緒にお風呂入らないだとか、着替えないだとか意味深な言動は多かった。
 今考えてみれば、男の子だったからと言われればその言動にも納得する。するけど……。

「ふん……」

 ごってごての下手な化粧に、ふてくされた態度。漫画のアシュリーとは全く正反対だ。アシュリーは控えめで、大人しくていつも主人公の事を隣で励ましてくれた完璧な令嬢(令嬢じゃなくて正しくは令息になるんだろうけど…)だった。
 今はまだ少年っぽさの残る顔をする彼女……いや、彼を見れば睨み返されてしまった。ええと、わたし一応お呼ばれしてる立場なんだよね?
 ドーラはこの件でばたついてしまって、レオもどこかに行ってしまった。部屋にはアシュリーと二人きりの状況である。

「あ、あのー…?」

 沈黙が気まずくて、とりあえず声を掛けてみる。アシュリーは返事もないままわたしのことを鋭い目で見てくる。

「どうして、わたくしを?」

 とりあえず本人に理由を聞くのが一番早い。わたしの質問にアスフェリオスは困ったような顔を浮かべて、俯いてしまった。

 沈黙が、流れる。
 言いたくないことなら無理に聞かないけど……何か違う話題を考えていれば、アスフェリオスの方から口を開いた。

「王女に認めてほしかったから」
「…なにを?」

 わたしの権限なんて物凄く低いのだから、何かあるならあの兄二人に言った方がいいのに。厳しいけれど、利益になるだとか実力があるだとかならちゃんと向き合ってくれるだろう。

「"私"のことを」

 ……その一言で、思い出した。
 アシュリーも、フィアーナのことを嫌っていた。その理由が、初めてあったときにフィアーナに「まあ、なんてブサイクな娘」と言われたんだっけ…。
 そりゃあお兄様たちじゃダメよね。男より同じ女で、王女なれば男の子でも女の子の格好していいよと言えば貴族のなかで認められるかもしれないし。
 でも……

「わたくしが認めるよりも、先に認められたい方がいらっしゃるのではなくて?」
「…!」

 ドーラが隠したがっていた理由や、お茶会に出ない理由は、きっとアスフェリオスが令嬢の格好をするから。辺境伯なんか深々とわたしに謝罪して、アスフェリオスのことを睨み付けていたし……。
 アシュリーはおしとやかだけど、意外と負けず嫌いな性格をしていたから、知らないわたしにじゃなくて、家族に認められたくて躍起になってしまっていたんだろう。

「でも、そんな顔では認められないですわね。お化粧道具はございまして?」

 このまま原作通りになんてさせない。
 わたしの言葉に、アスフェリオスが驚いた顔をしていた。
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