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08:イベントまで取り違いです!?
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「ここが街かぁ……」
ヨーロッパ風の、石造り…レンガ造りっていうのかな。カラフルに作られた家が並んで、石畳の道路には露店が並んでいたりして……うん。旅行に来た気分だ。
なんか待ちゆく人がみんなわたしのことをじろじろと見ているけど、堂々としているのできっといいところのお嬢様程度にしか見られていないだろう。
「ままーあの人なんで泥だらけなのー?」
「しっ見ちゃいけません!」
……思っているよりも汚れがひどくて目立っているらしい。いや気にしてないけどね?指差されて恥ずかしいとか思ってないけどね?でも、せめて着替えを持って出てくるべきだった。こんな恰好をしていたらお城の人にすぐに見付かってしまうかもしれないし……どうにか誤魔化すことできないだろうか。
その時視界にぼろぼろの布を被った女の子が見えた。どこかで見たことあるような顔の女の子だな…。
「あっそうだ、ああいう風に布を被ればいいんだ!」
名案をひらめいて、手をポンと叩いて辺りを見回す。
適当なぼろ布が落ちていればいいんだけど……と、家と家の間にある薄暗い路地裏のほうを見たとき、ちょうど良さそうな布が落ちている。
手を伸ばしたらひらひらと布が奥へと行ってしまって……風なんて吹いてないのに妙だけど、布の後を追って路地の奥へと足を踏み入れた――。
――――五分前のわたしを叱りつけたい。
「お嬢ちゃんどこから来たんだい?」
「なんていうお家なのかな~?」
なんと布は罠だったらしい。
ああやって布を不思議そうにはためかせることで子供の好奇心を擽って路地の奥へと誘う手法らしく……まんまと引っ掛かったのがわたしである。別に好奇心ではなくて布がほしかっただけではあるんだけど……とにかく、今窮地に立たされている。
「このガキ黙ったままだな」
「あんちゃんの顔が怖いんだよ」
「泣く子も黙る悪人面で悪かったなぁ」
がははと笑う悪人二人。
……漫画の、過去の回想回でこんな話があった。アリスが幼いときに街にきたとき誘拐されそうになった話だ。その時の悪人が確かこんな顔だったような。…さっき見掛けた女の子はアリスだったんだと気付いたのが遅かった。
…つまり、主人公に起こるイベントがわたしに起こってしまったわけだ。
あのときすぐにアリスだと気付いていれば入れ替わり大作戦が出来たのに!わたしったら物覚えが悪いんだから!
「おい聞いてんのかガキ!」
「あっごめんなさいもう一度良いですか!」
自己反省していたら悪人の一人に声を掛けられて、慌てて顔を上げる。
「やっぱりさっきのピンク髪の子のが良かったんじゃないのかあんちゃん」
「バカ野郎あのガキなんて精々売っ払うくらいしかできないだろ。このガキは汚れてるけど相当お高いドレスだぞ」
どうやらアリスも一応候補だったらしい。確かにアリスの格好はお金持ちとは言えないけど…あの子本当は王女なのよ!身代金ならそっちの方が――――
「ひっ」
突然ナイフが喉元に突き付けられて、息を止めてしまう。
身代金目的なら殺されることはないだろうけど……恐怖を与えるには十分だ。
震えたくないのに体が勝手に震えてしまう。
ああ、下兄様ごめんなさい。ちゃんと説得していればこんなことにならなかったのに。
涙で滲む視界の中で、悪人たちの後ろから人影が見えて――回想回の展開を思い出したのであった。
ヨーロッパ風の、石造り…レンガ造りっていうのかな。カラフルに作られた家が並んで、石畳の道路には露店が並んでいたりして……うん。旅行に来た気分だ。
なんか待ちゆく人がみんなわたしのことをじろじろと見ているけど、堂々としているのできっといいところのお嬢様程度にしか見られていないだろう。
「ままーあの人なんで泥だらけなのー?」
「しっ見ちゃいけません!」
……思っているよりも汚れがひどくて目立っているらしい。いや気にしてないけどね?指差されて恥ずかしいとか思ってないけどね?でも、せめて着替えを持って出てくるべきだった。こんな恰好をしていたらお城の人にすぐに見付かってしまうかもしれないし……どうにか誤魔化すことできないだろうか。
その時視界にぼろぼろの布を被った女の子が見えた。どこかで見たことあるような顔の女の子だな…。
「あっそうだ、ああいう風に布を被ればいいんだ!」
名案をひらめいて、手をポンと叩いて辺りを見回す。
適当なぼろ布が落ちていればいいんだけど……と、家と家の間にある薄暗い路地裏のほうを見たとき、ちょうど良さそうな布が落ちている。
手を伸ばしたらひらひらと布が奥へと行ってしまって……風なんて吹いてないのに妙だけど、布の後を追って路地の奥へと足を踏み入れた――。
――――五分前のわたしを叱りつけたい。
「お嬢ちゃんどこから来たんだい?」
「なんていうお家なのかな~?」
なんと布は罠だったらしい。
ああやって布を不思議そうにはためかせることで子供の好奇心を擽って路地の奥へと誘う手法らしく……まんまと引っ掛かったのがわたしである。別に好奇心ではなくて布がほしかっただけではあるんだけど……とにかく、今窮地に立たされている。
「このガキ黙ったままだな」
「あんちゃんの顔が怖いんだよ」
「泣く子も黙る悪人面で悪かったなぁ」
がははと笑う悪人二人。
……漫画の、過去の回想回でこんな話があった。アリスが幼いときに街にきたとき誘拐されそうになった話だ。その時の悪人が確かこんな顔だったような。…さっき見掛けた女の子はアリスだったんだと気付いたのが遅かった。
…つまり、主人公に起こるイベントがわたしに起こってしまったわけだ。
あのときすぐにアリスだと気付いていれば入れ替わり大作戦が出来たのに!わたしったら物覚えが悪いんだから!
「おい聞いてんのかガキ!」
「あっごめんなさいもう一度良いですか!」
自己反省していたら悪人の一人に声を掛けられて、慌てて顔を上げる。
「やっぱりさっきのピンク髪の子のが良かったんじゃないのかあんちゃん」
「バカ野郎あのガキなんて精々売っ払うくらいしかできないだろ。このガキは汚れてるけど相当お高いドレスだぞ」
どうやらアリスも一応候補だったらしい。確かにアリスの格好はお金持ちとは言えないけど…あの子本当は王女なのよ!身代金ならそっちの方が――――
「ひっ」
突然ナイフが喉元に突き付けられて、息を止めてしまう。
身代金目的なら殺されることはないだろうけど……恐怖を与えるには十分だ。
震えたくないのに体が勝手に震えてしまう。
ああ、下兄様ごめんなさい。ちゃんと説得していればこんなことにならなかったのに。
涙で滲む視界の中で、悪人たちの後ろから人影が見えて――回想回の展開を思い出したのであった。
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