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運命は無情
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突然だが、みなさんは前世と言うものを信じますか?
僕は信じてません。いや、本当に前世と言うものがあるなら何故思い出してしまうのか神とやらに問い詰めたい。
「姫……私は、貴女のことをずっと…」
「ああ、そんな、そんな…いやよ…………」
「来世では、必ず、貴女を――――」
二人の男女が手を握り合い、最初で最後の口付けを交わそうとして――――目が覚める。
ああ、またこの夢か。三十を迎えてからずっと見るこの夢。そしてどうやら僕は夢に出てくる二人だと姫側らしい。姫。
アラサー(三十四だからぎりぎりアラウンドサーティー)のおっさん。ジムで鍛えているのでそれなりに筋肉が付いているがっちりした体型。
……これで姫と言う方が辛い。姫というイメージからまるっと離れている。
「姫はねーわな」
鏡を見て、自分の体と顔をまじまじと見る。夢で見た元自分の体に付いていた豊満な乳はなく、代わりに立派な胸筋が付いている。
姫はない。これで姫はない…と言いたいが、僕の名前は姫川 典正。ひめがわてんせいってなんだよ嫌味な名前すぎるだろ。
「…仕事行くか」
もし前世が本当にあって、生まれ変わりと言うのがあるなら、騎士の方は女性で僕と同じようにアラサーだったら幸せだなぁ……。
「――はい、はい、それではまたお伺いします。いえ、ありがとうございました……ふぅ」
営業の外回りもだいぶ楽な季節になったものだ。スーツを着ていてちょうどいい。
「ぎゃはは、まじでー?」
目の前から恐らく男子高校生のグループが前から歩いてくる。横に三人も四人も並んで邪魔だな…まあ、イマドキの若者なんて謙虚に慎ましく生きる子の方が少ないよな。
手にソフトクリームを持っているのでぶつかったりなんかしたらスーツが汚れてしまうので出来るだけ端っこに避け――――たのに、どうして若い子っていうのは突っかかっていく性質なんだろうか。僕が端に避けるのに吸い寄せられるように端っこに居た子が僕に寄ってきて、ぶつかった。
あーー……お気に入りのスーツが…七人の諭吉はたいて買った奴が…。
「ってぇなおっさん!てめーどこに目ェつけてやがんだこら!」
「す、すみませ――……」
いや古臭いな言い回し!まだそんなこと言う若者がいたなんてびっくりだよ。
と心の中では冷静を振る舞っているが体格の割に小心者な僕は小さくなって、ぶつかった子を見れば――なんだろう。懐かしいような感じがして、思わず見詰めてしまった。色を抜いているのか、ぎらぎらした金髪に、耳はピアスだらけ。制服はもはや原型を留めていないくらい着崩しているけど…僕は彼を知っているような気がした。
恐らく、彼も同じ気持ちなんだろう。暫く二人で見詰めあった後、彼が震える声で言った。
「ひ、姫……!?」
その時、僕の頭の中からすーっと血の気が引いていくのを感じた…。
僕は信じてません。いや、本当に前世と言うものがあるなら何故思い出してしまうのか神とやらに問い詰めたい。
「姫……私は、貴女のことをずっと…」
「ああ、そんな、そんな…いやよ…………」
「来世では、必ず、貴女を――――」
二人の男女が手を握り合い、最初で最後の口付けを交わそうとして――――目が覚める。
ああ、またこの夢か。三十を迎えてからずっと見るこの夢。そしてどうやら僕は夢に出てくる二人だと姫側らしい。姫。
アラサー(三十四だからぎりぎりアラウンドサーティー)のおっさん。ジムで鍛えているのでそれなりに筋肉が付いているがっちりした体型。
……これで姫と言う方が辛い。姫というイメージからまるっと離れている。
「姫はねーわな」
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姫はない。これで姫はない…と言いたいが、僕の名前は姫川 典正。ひめがわてんせいってなんだよ嫌味な名前すぎるだろ。
「…仕事行くか」
もし前世が本当にあって、生まれ変わりと言うのがあるなら、騎士の方は女性で僕と同じようにアラサーだったら幸せだなぁ……。
「――はい、はい、それではまたお伺いします。いえ、ありがとうございました……ふぅ」
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「ぎゃはは、まじでー?」
目の前から恐らく男子高校生のグループが前から歩いてくる。横に三人も四人も並んで邪魔だな…まあ、イマドキの若者なんて謙虚に慎ましく生きる子の方が少ないよな。
手にソフトクリームを持っているのでぶつかったりなんかしたらスーツが汚れてしまうので出来るだけ端っこに避け――――たのに、どうして若い子っていうのは突っかかっていく性質なんだろうか。僕が端に避けるのに吸い寄せられるように端っこに居た子が僕に寄ってきて、ぶつかった。
あーー……お気に入りのスーツが…七人の諭吉はたいて買った奴が…。
「ってぇなおっさん!てめーどこに目ェつけてやがんだこら!」
「す、すみませ――……」
いや古臭いな言い回し!まだそんなこと言う若者がいたなんてびっくりだよ。
と心の中では冷静を振る舞っているが体格の割に小心者な僕は小さくなって、ぶつかった子を見れば――なんだろう。懐かしいような感じがして、思わず見詰めてしまった。色を抜いているのか、ぎらぎらした金髪に、耳はピアスだらけ。制服はもはや原型を留めていないくらい着崩しているけど…僕は彼を知っているような気がした。
恐らく、彼も同じ気持ちなんだろう。暫く二人で見詰めあった後、彼が震える声で言った。
「ひ、姫……!?」
その時、僕の頭の中からすーっと血の気が引いていくのを感じた…。
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