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穏やかな就寝前
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ポムが来た日の夜。
水浴びさせてあげたかったけど、玄関でさえぎりぎりなくらいの大きさだから風呂場の扉が潜れないので拭くだけで我慢してもらった。
血が取れて、付いてたところが綺麗になるとまたふさふさになった。怪我が治って、もう少し大きくなれば飛べるようになるだろうってレジェとベレイが言っていた。
「レジェ、まるでわたしが連れて帰ってくることわかってたみたいだったね」
執務室のソファに寝転がって、書類仕事しているレジェを見る。もう外は真っ暗で、深夜の時間帯だろう。ここ最近は屋敷から出て外で動き回って疲れているはずなのに、一周回ってこの時間でも元気なのだ。つまり興奮状態で眠れないだけである。
「…ああ、まあね。屋敷から食材が無くなるスペースも早くなったし、パン屋から果実を持って帰っている話は聞いていたんだよ。連れて帰って来るならそろそろだと思ったから…まさか魔物とは思わなかったけどね」
書類に目を通してはサインをする作業を繰り返しながら言うレジェ。「君は本当に読めないよ」と笑っているが、全然行動パターンは読まれている。
「…で、あの魔物…ポムだっけ、どういうつもりで飼うなんて言い出したのか聞きたいかな」
書類仕事を終えたレジェがにっこり笑ってわたしを見ている。考えはお見通しのくせしてわざわざ聞いてくるんだから意地悪だな。
ベレイには適当に繕った理由で何とかなったがレジェには効かないことはわかっている。わかっているがモノは試しで適当に言ってみる。
「…アラソイハヨクナイトオモッタダケダヨー」
「嘘を吐くならもう少し気持ちこめて言おうか」
いかにも聖女っぽいことを言ってみたけど呆れた顔されて終わった。
茶番を続けて怒られる前に本音を白状しておこう。
「空飛んでお昼寝したら気持ちいいだろうなって……」
「反省しないね」
「外に追い出したのはレジェだよ」
「そうだけど」
結果的に安全ではあったが魔物が残っていたというのは問題なんだろう。複雑な顔をしながら立ち上がるとソファに座ってくる。頭のすぐ上にはレジェの太腿があって、このまま膝枕して貰おうと頭を乗っければおっきい手がおでこの上に乗せられた。
「運が良かっただけだ。あまり危険なことはしないように」
「レジェは心配性だな」
「ホニィが心配かけすぎなんだよ」
下から見上げたレジェの顔はやっぱり整っている。美少年…美青年だろうか。ソファに座って笑う顔はオフモードなのかいつもよりもちょっと幼くて、年相応に見える。普通の女の子だったら簡単に恋に落ちてしまうだろう。
「気を付けるよ」
「そうしてほしい」
やる気のない返事に厳しい声。二人で見詰めあって、どちらからともなく笑みが零れる。
そしてようやく眠気がやってきて、そのままゆっくりと夢の中に落ちて行った…。
水浴びさせてあげたかったけど、玄関でさえぎりぎりなくらいの大きさだから風呂場の扉が潜れないので拭くだけで我慢してもらった。
血が取れて、付いてたところが綺麗になるとまたふさふさになった。怪我が治って、もう少し大きくなれば飛べるようになるだろうってレジェとベレイが言っていた。
「レジェ、まるでわたしが連れて帰ってくることわかってたみたいだったね」
執務室のソファに寝転がって、書類仕事しているレジェを見る。もう外は真っ暗で、深夜の時間帯だろう。ここ最近は屋敷から出て外で動き回って疲れているはずなのに、一周回ってこの時間でも元気なのだ。つまり興奮状態で眠れないだけである。
「…ああ、まあね。屋敷から食材が無くなるスペースも早くなったし、パン屋から果実を持って帰っている話は聞いていたんだよ。連れて帰って来るならそろそろだと思ったから…まさか魔物とは思わなかったけどね」
書類に目を通してはサインをする作業を繰り返しながら言うレジェ。「君は本当に読めないよ」と笑っているが、全然行動パターンは読まれている。
「…で、あの魔物…ポムだっけ、どういうつもりで飼うなんて言い出したのか聞きたいかな」
書類仕事を終えたレジェがにっこり笑ってわたしを見ている。考えはお見通しのくせしてわざわざ聞いてくるんだから意地悪だな。
ベレイには適当に繕った理由で何とかなったがレジェには効かないことはわかっている。わかっているがモノは試しで適当に言ってみる。
「…アラソイハヨクナイトオモッタダケダヨー」
「嘘を吐くならもう少し気持ちこめて言おうか」
いかにも聖女っぽいことを言ってみたけど呆れた顔されて終わった。
茶番を続けて怒られる前に本音を白状しておこう。
「空飛んでお昼寝したら気持ちいいだろうなって……」
「反省しないね」
「外に追い出したのはレジェだよ」
「そうだけど」
結果的に安全ではあったが魔物が残っていたというのは問題なんだろう。複雑な顔をしながら立ち上がるとソファに座ってくる。頭のすぐ上にはレジェの太腿があって、このまま膝枕して貰おうと頭を乗っければおっきい手がおでこの上に乗せられた。
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「気を付けるよ」
「そうしてほしい」
やる気のない返事に厳しい声。二人で見詰めあって、どちらからともなく笑みが零れる。
そしてようやく眠気がやってきて、そのままゆっくりと夢の中に落ちて行った…。
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