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未来を
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あれから、一年が経った。
国はもう落ち着きを取り戻しており、都では穏やかさの中に賑やかな喧騒も混ざってきている。
わたしは、というと……
「綺麗ですわ、王妃様!」
「き、気が早いわ……」
「いいえ、今日が結婚式ですもの! ああ、王妃様のドレス姿素敵ですわ」
……そう。今日は、ギル王子との結婚式…なのである。さっさと婚姻を結んでしまえとお父様が言い出し、婚約式からそう時間も経っていないが、今日という日に帝国・王国合同で挙げる事となった。
正式に和平が結ばれる、記念すべき日ともなる。
メイドが慌ただしく部屋中を駆け回るのを横目に、純白のドレスを身に纏ったわたしを鏡で見る。自分のはずなのに、なんだか全くの別人に見えてしまう。
本当に、わたしなんだろうか……。こんなに綺麗に、丁寧に支度をしてくれたメイドたちに感謝しかない。
「さ、時間ですわ。王妃様」
「え、ええ……」
にこにこしたメイドたちと共に部屋を出る。今日はなんだか、いつもよりもずっと世界が眩しい。
国民が喜んでいる声が城の中からでも聞こえる。
支度を終えて、立ち上がる。緊張して上手く足が踏み出せない。両国の記念となる日であり、一国の姫としての重責もあるが、一番は……。
「――……天使かと、思った」
同じく純白のタキシードを着たギル王子が部屋の前で待っていた。さらりと恥ずかしい事を告げられて、まさしく王子にふさわしい彼の姿にわたしの顔に熱が集まる。
「ギルも…恰好良いですわ」
上手く声が出なくて、小さな声で告げる。でもその言葉はしっかりと届いていたらしい。 二人で顔を真っ赤にして、俯いているとお父様に背中を叩かれた。
「さあ、国民が待っている。堂々と行ってきなさい」
国民達にお披露目しながら、式場とする広場まで二人で歩いていくのだ。
「――いこう、リア」
「……はい」
優しい笑みを向けられて、わたしもつられて笑みを返す。差し出された手のひらは昔よりもずっと大きく、しっかりしたもので。胸の高鳴りは治まらないけれど、握り締められるととても安心した。
「おめでとうございます!」
「素敵だわ…!!」
「両国万歳!」
広場までゆっくりと二人で歩いていると、花を投げかけられながら笑顔の国民達に祝福をされる。
……なんだか、早いようで長かった日々を思い出して、涙が出てしまいそうだ。
広場まで赤く敷かれた絨毯を歩いていれば、前の方から悲鳴が上がる。
「ゆるさ、ない…」
ナイフを持ったぼろぼろの女が、わたし達の前を立ちふさがっていた。あの、女は……。
「アリア…!?」
護衛の騎士たちが走り出す。
それよりも早く、アリアがわたしを目掛けて走り出してーーーーわたしの視界は、赤く染まった。
※
久しぶりの更新になってしまい申し訳ありません…!完結まであと1、2話程度ですので、頑張って描き上げたいと思います…!
国はもう落ち着きを取り戻しており、都では穏やかさの中に賑やかな喧騒も混ざってきている。
わたしは、というと……
「綺麗ですわ、王妃様!」
「き、気が早いわ……」
「いいえ、今日が結婚式ですもの! ああ、王妃様のドレス姿素敵ですわ」
……そう。今日は、ギル王子との結婚式…なのである。さっさと婚姻を結んでしまえとお父様が言い出し、婚約式からそう時間も経っていないが、今日という日に帝国・王国合同で挙げる事となった。
正式に和平が結ばれる、記念すべき日ともなる。
メイドが慌ただしく部屋中を駆け回るのを横目に、純白のドレスを身に纏ったわたしを鏡で見る。自分のはずなのに、なんだか全くの別人に見えてしまう。
本当に、わたしなんだろうか……。こんなに綺麗に、丁寧に支度をしてくれたメイドたちに感謝しかない。
「さ、時間ですわ。王妃様」
「え、ええ……」
にこにこしたメイドたちと共に部屋を出る。今日はなんだか、いつもよりもずっと世界が眩しい。
国民が喜んでいる声が城の中からでも聞こえる。
支度を終えて、立ち上がる。緊張して上手く足が踏み出せない。両国の記念となる日であり、一国の姫としての重責もあるが、一番は……。
「――……天使かと、思った」
同じく純白のタキシードを着たギル王子が部屋の前で待っていた。さらりと恥ずかしい事を告げられて、まさしく王子にふさわしい彼の姿にわたしの顔に熱が集まる。
「ギルも…恰好良いですわ」
上手く声が出なくて、小さな声で告げる。でもその言葉はしっかりと届いていたらしい。 二人で顔を真っ赤にして、俯いているとお父様に背中を叩かれた。
「さあ、国民が待っている。堂々と行ってきなさい」
国民達にお披露目しながら、式場とする広場まで二人で歩いていくのだ。
「――いこう、リア」
「……はい」
優しい笑みを向けられて、わたしもつられて笑みを返す。差し出された手のひらは昔よりもずっと大きく、しっかりしたもので。胸の高鳴りは治まらないけれど、握り締められるととても安心した。
「おめでとうございます!」
「素敵だわ…!!」
「両国万歳!」
広場までゆっくりと二人で歩いていると、花を投げかけられながら笑顔の国民達に祝福をされる。
……なんだか、早いようで長かった日々を思い出して、涙が出てしまいそうだ。
広場まで赤く敷かれた絨毯を歩いていれば、前の方から悲鳴が上がる。
「ゆるさ、ない…」
ナイフを持ったぼろぼろの女が、わたし達の前を立ちふさがっていた。あの、女は……。
「アリア…!?」
護衛の騎士たちが走り出す。
それよりも早く、アリアがわたしを目掛けて走り出してーーーーわたしの視界は、赤く染まった。
※
久しぶりの更新になってしまい申し訳ありません…!完結まであと1、2話程度ですので、頑張って描き上げたいと思います…!
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