とある奇談蒐集家の手稿

赤村雨享

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第八十八話 ビル

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 東京のオフィス街ビルのテナントを借りている会社。


 その会社に勤める女の机からは、隣のビルの様子が見える。


 ある日……隣のビルの壁に黒い手形が現れた。


 記憶違いでなければそんな手形は無かった筈……と気になっていた女性社員。
 しかし、次の日になり手形が一つ増えていたことで常識の外の事態と気が付いた。


 手形はビルの二十階以上……しかも周囲の窓は嵌め殺し。手形を付けるには屋上からロープで下りる以外考えられないのである。


 昼間に何かやっていれば皆が気付くので、手形が付くのは夜のうち……しかし女性社員はそれを確認しようとは思わない。関わる気が無かったのだ。


 翌日、翌々日と手形が一つづつ増え、八つになったところで止まった。恐らくあちら側のビルでは、手形の存在すら気付いていないだろう。


 その四ヶ月後にビルの外装清掃の業者が見つけて清掃するまで、手形は残り続けた……。


 今回一番心に残ったのは、女性社員の最後まで関わらない姿勢である……。



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