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第七十九話 中古車
しおりを挟むインフラの整っていない田舎では、通勤の為に車が必需品である。
特に車に拘りの無い者は、安い車を選びがちになるのは仕方が無いとも言える。
だが……必要以上に安い車は注意せねばならないだろう。
一般に出回る格安の車は、その被害の度合いに関係無く『車の状態さえ無事なら』市場に出てくる。勿論、お祓いなどする業者も少ない。
それはつまり、誰かを轢いていても、運転手が重症でも、例え死亡事故車であろうとも、その車は最小限の整備で市場に出回るのである。
そんなことを知らずに車を買った新入社員の男が居た。
通勤にさえ使えれば安くて構わない……そう考え購入したその車は、かなり問題を抱えたものだった……。
先ず、車内を幾ら掃除しても長い女の髪が出てくるのである。次に、車のガラスには度々人の手形がベッタリと付いていた。
極め付けは付属していたカーナビ。電源を切っているにも拘わらず、金曜の夜決まった時刻になると勝手に起動しナビゲーションを行うのだ。
気味が悪いが、買い換える金もない。男は仕方無くその後も車を乗り続けた……。
ある日、エンジンの調子が悪くなったので車を買った業者の元へ。
車を買ってまだひと月……当然修理はタダ。その間代車に乗って過ごしたが、一週が過ぎても業者からは連絡が来ない。
そこで様子を窺いに向かった男……しかし、業者は逮捕されたと従業員から聞かされた。
逮捕理由は殺人。あの車は事故車ではなく、殺人が行われていた車だったのだ……。
たまたま修理に出していた男の車は、事件現場の目撃証言と一致……即座に車が押収され証拠が見付かり逮捕と相成った。
男は何故自分の元に連絡が来なかったのかを警察に尋ねたが、全て書類は業者のものになっていたので連絡が付かなかったという。
僅かな間とはいえそんな車に乗っていたことに背筋が寒くなった男は、今度はローンで新車の軽自動車を買った。
不思議なのは、あれ程掃除していた車から殺人の証拠が出たことだ。業者も念入りに掃除をしていた筈だが……今となってはどうでも良いことかもしれない。
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