とある奇談蒐集家の手稿

赤村雨享

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第六十一話 下水道

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 下水道の点検作業を行った男の話。


 暗い下水道の中を歩いていると、背後からパシャパシャと音がした。

 初めはネズミだろうと気にしなかったが、やがてズルリ、ズルリという音と絞り出すような声が聞こえ始めた。
 同行している同僚もその声に気付き、人が居る可能性を考え確認に向かう。

 下水道の中では酸欠や有毒ガス、更に感染症の危険性もある。急いで声の元に辿り着く必要があった。


 だが、辿り着いた先に居たのは真っ黒な塊……それは、人が踞った程の大きさの外部を長い髪で埋め尽くした『何か』だった………。


 その髪の間から触手の様なものが伸びゆらゆらと揺れていた為に人ではないと気付いた男達は……全力で逃げた。


 幸いそれは移動が遅く男達が捕まることは無かったが、その話は上司へと報告されることとなる。


 上司は話を聞き終わった後、静かな口調で言った……。

「下水道はあらゆるものが集まるからな……生物、その死骸、更に人の一部や汚物に至るまでな……。しかも中で死んだ人間も居る。そういうのが集まって何かが生まれても不思議じゃない……勿論、常識では考えられないけどな」


 以後、点検の際には呼吸や水位の安全確認以外に『得体の知れないものからは退避する』という事項が付け加えられている……。

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