とある奇談蒐集家の手稿

赤村雨享

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第五十八話 合唱

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 ある学校の合唱部には視聴禁止のビデオテープがある。


 その映像の中には聞いてはいけない声があるのだと噂されていた。


 ある年の生徒達はそんな噂に興味を持ち、顧問が居ない時を狙いそれを視聴することにした……。


 映像は画像が荒く声も時折掠れていたが、過去の合唱コンクールのものと直ぐに判った。
 全て見終わった生徒達に異変はない。映像にも異常はなかったと安心しコッソリとビデオテープを元の場所に戻すことに……。


 が──異変は翌日から起こった。


 合唱部が練習していると、どこからか低く掠れた声が邪魔に入るのだ。


 顧問教師は初め生徒の悪巫山戯と怒ったが、生徒達にはそんなことをした覚えがなく困惑するしかない。


 そんな日が数日続いたある日……ソプラノの生徒が声を出しているパートに掠れた声が混じる……。そこでようやく声の出所に気付いた顧問は、学校と相談し神社に御祓に向かうことに……。


 結論から言えば、その声は何かもわからないという。


 学校の合唱部には在学中死んだ者はなく、また音楽室にもそんな事件はない。


 ただ……ビデオテープにあった合唱コンクールに参加して以来、合唱部ではその声が聞こえ始めたのだという。


 『声』は合唱部全員に憑く……原因に気付いてビデオテープを封印し生徒を御祓いした後、あの『声』は聞こえなくなった。


 恐ろしいのは、その声はどんな大舞台にも憑いて来て合唱に加わること。そして、神社に預けた筈のビデオテープが学校の音楽室に戻っていることだ。


 以来、時折生徒が盗み見て神社の世話になる……それが繰り返されているらしい。

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