49 / 100
第四十九話 鐘
しおりを挟む少年の家の近所には大きな寺院があった。
住職は少年の祖父の友人だった為、小さい頃は良く同行し話を聞かされた。
ある日、祖父と住職の話に飽きた少年は寺の探索を始める。歴史ある寺院は子供が探索をするには十分な程に広い。
そんな探索をしていると、少し高台の位置に鐘突堂を見付け登ってみることにした。
寺自体も高台にあるので見下ろす街並みに感動していた少年は、何故か鐘を突きたくなったという。しかし、何ぶん子供の身……手が届かず断念することに。
最後に鐘の中を覗いて鐘突堂を下りようとしたその時……少年は世にも恐ろしいものと目が合ってしまった……。
鐘の中には、白装束で長い髪を乱し酷く痩せた男がへばりついていたのだ……。
骨と筋の浮いた細い手足で内側に突っ張るように身体を支えていた男は、ギョロリとした目を少年に向け動かない。
少年は蛇に睨まれた蛙の如く動くことが出来ず、ただただ恐怖で震えていた……。
そこに少年を捜していた祖父と住職が現れ、少年はようやく恐怖から解放されることとなる。
事情を聞いた住職の話では、ずっと昔……この辺りに物ノ怪が出て人々を飢餓に陥れたと伝わっているそうだ。
住職の先祖はそれを捕らえ寺のどこかに封じていたと伝わっているとのこと。恐らくこの鐘がそれなのだろうと呟いた。
以来……寺院では朝晩鐘突堂で経を読む習慣が生まれたという。
時が過ぎ祖父も住職も亡くなった為、寺院と疎遠になった少年も今や大人……。その後あの男を見ることは無く怪異に出会うこともなかった。
ただ……少年が大人になった今でも、鐘の中を覗く真似はしなくなったそうだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
京都裏路地不思議草紙
凪司工房
ホラー
京都という街には一歩入ると狭い路地のずっと奥に暖簾を出しているような古い店がある。これはそういった裏路地の店にやってきたおかしな客と奇妙な店主の不可思議話を集めた短編集である。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる