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第四十七話 卒業写真
しおりを挟む女子大生になったYが大学の寮で暮らし始めたある日、中学の時のクラスメイトだったFから連絡を受けた。
卒業以来の友人の声……その懐かしさで、しばしの間思い出話に花が咲く。
そんな会話も落ち着いた頃、友人は唐突に話を切り出した。
「あのね?実は今日電話したのは確認したいことがあって……」
「何……?」
「卒業アルバムってまだ持ってる?」
「うん。何で?」
「じゃあ見て貰った方が早いかな……後で良いから確認して欲しいんだけど……」
しかし、Yの卒業アルバムは実家に置いてある。そこでYは、親友のLを頼ることにした。
Lは中学から大学までずっと同じ学校に通う友人。実家住まいの為、卒業アルバムも持っている筈と期待したのだ。
そしてLはYの予想通りアルバムを保有。許可を取りLの家でアルバムを見せて貰うことになった。
「懐かしいね~……でも、別におかしいところ無いよね?」
そんなYの言葉を否定したのはLだった。
「ねぇ、Yちゃん……この娘、誰か判る?」
Lが指差したのは集合写真。担任を中心にクラスの生徒全員が集合した写真。見覚えのある顔が並ぶその中で、Lはある人物を指していた。
それは髪をオカッパにした少女。目鼻立ちの整った古風な印象の生徒だ。
ただ……その顔にはYもL見覚えが無い。
「……?う~ん……。おかしいな……ウチのクラスって……」
「うん。皆、仲良かったよ。だから余計に……」
「確認しよう」
Yは卒業アルバムに書かれた名前を写真に当て嵌めるが、その少女の名前は無い。名簿側と写真の両方を確認したが、やはり名前は無い。
「どういうこと?アルバムが間違ってるの?」
「……とにかくFちゃんに聞いてみよ?」
「そうだね」
連絡先を聞いていたYは早速電話を掛ける。
「Yちゃん、アルバム見たの?」
「うん。Fちゃんの言ってたのって集合写真?」
「やっぱり気付いたんだ……ウチのクラスにあんな子居なかったよね?」
「うん……誰なんだろうね、あの子」
「他の子にも聞いてみたけど、皆記憶が無いの。変だよね……」
Yのクラスにはイジメなどはなかった筈。担任教師は厳格な性格で、生徒が孤立するようなことは許さない人間だった。
そもそも、全く記憶に無いなど有り得るのだろうか?と写真を見ながらYは思った。
「実は私、先生にも聞いてみたの。でも先生も判らないって……学校じゃ少し騒ぎになったみたい」
「そう……でも、名前も無いから確かめようもないよね」
「うん……ゴメンね、変なことお願いして……。私、クラスメイト忘れる程薄情だったのか不安だったんだ」
「でも、皆知らない子だった……」
「調べ終えたら学校から連絡が来ることになってるの。その時はまた連絡するね?」
その時はそれで話が終わった為、原因は解らず終い。
そんな不思議な話も忘れかけていたある日、中学時代の部活動の後輩とバッタリ再開。ファミレスで少し話をすることになった……。
ここでも暫しの思い出話をしていたが、後輩は思い出した様に話を始める。
「そう言えば学校から連絡があって、卒業アルバムにミスがあったとかって連絡がありました」
「ミス……?どんな?」
「何でも知らない子が写ってるとかで……友達に確認したら確かに知らない子が写ってるって……」
ガタリと立ち上がったYに後輩は目を丸くしている。
周囲の目に気付き赤面して座るY……しかし、後輩に確認せずには居られない。
「それ……集合写真?」
「!……何で知ってるんですか?」
「実はね……?」
Yは後輩に事情を説明。後輩は不思議そうに聞いていた。
「先輩って何組でしたっけ?」
「3―5組よ?」
「あ~……実は私達の卒業アルバムのミスも5組なんです。友達に確認したら知らない子がいるって……」
「その子に連絡取れない?」
「良いですよ?」
直ぐに連絡を取った後輩はミスのあった卒業写真をメールで送るように頼んでくれた。
思ったより早く返信があり、届いたのは集合写真。写っていたのはあの少女だった……。
「どういうこと……」
「先輩……友達の話では、後輩の卒業アルバムにもその子が写ってるって……」
「え……?」
「過去の写真も全部3―5組に同じ子が写ってるって」
「…………」
学校内に噂が広がったのか在校生徒が歴代のアルバムを調べた結果、3―5組の集合写真にだけその子が写っているのだという。
「不思議な話ですね……」
「……でも、不思議と怖くないのよ」
「この子……優しい笑顔しるからじゃないですか?」
「そう……かもね」
その後……学校側から受けた連絡はミスがあったとだけで、結局少女の正体は判らなかった。
この先何十年か後にアルバムを見た時、またこの子が誰かで悩む日が来るのだろうか?自宅に帰省していたYは、そんなことを考え卒業アルバムをそっと閉じた。
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