ツクヨミ様の人間見習い

大和撫子

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第七話

マジですかぁ? 時には、人ではないクライアントも??? 【九】

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  その煙は、置物を覆い尽くすようにして濃くなっていく。グレーから限り無く黒に。そして次第に、煙から何か音が聞こえてくるような気がした。

 ボソボソ、ボソ、ボソ……

 何の音だろう? 耳を澄ませて集中してみる。

 ……もっと〇×△が欲しい……

 ん? 次第に声がハッキリと日響いて来る。

……もっとお金が欲しい……
……有名になりたい……
……あの人の心を私だけに向けたい……

 あぁ、なるほど。欲望の声だ。置物であったランさんを過度に神聖視する事で、どうしようもな膨れ上がった己の願望を縋るようにして託す。それが一人二人と数が増えて、ほぼ怨嗟のようにになってしまったのだろう。

……アイツより上にいきたい!……
……あの人ばっかり狡い!……

 |天使の置物の周りを渦巻いていた煙は、灰色からほぼ黒に近い鉛色になっていき、彼女を中心に竜巻のように変化していく。それに比例するように、欲望の声が魑魅魍魎化していくようだ。

 あたしはもう、とっくに自分の事を凡人だと認めてしまっていてその生き方がとても楽になっていたが、自分以外の何かになろうと足掻いてもがく苦しさは理解できる。いつまで経っても望んだ結果が出ないと次第に不貞腐れ、キラキラ輝いて見える人たちに嫉妬の念を抱くようになりがちなのだ。そうなるとどんどん荒んでいくか、神やら天使やらの高次元と呼ばれる存在にすがるか……その二通りのパターンになりがちだ。

 不意に、喉の奥がギュッと痛くなった。これは、彼女の悲しみが伝わった感覚だと思う。

「誰かの役に立てる事が嬉しくて、お願い事を叶えてあげようと頑張ったんです。最初の内は、人数が少なかったですし、お願い事を叶えて差し上げる事が出来て嬉しかったんです……」

 彼女の声だけが響く。期待して貰えた事が嬉しくて、必要以上に頑張ってしまう。その心情はよく分かる。かつてのあたしもそうだったから。

「キャパオーバーになってしまったのと、その影響で願いを叶えて差し上げた筈の人たちも、また元の状態に戻ってしまった。そこで、今まで向けられた崇拝、感謝の念が徐々に恨みつらみになっていったのですね」

 粋蓮は寄り添うようにして語りかけた。突如、鉛色の竜巻の渦が乱れ、みるみる内に煙は赤黒くぬめりのある物体に変化していく。まるで無数の鱗のように……爬虫類が苦手なあたしはゾクリと背筋が凍りついた。

 |天使の置物を取り巻く竜巻は、血のように赤黒い大蛇がとぐろを巻いている姿となった。彼女はどこにも見えない。
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