ツクヨミ様の人間見習い

大和撫子

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第七話

マジですかぁ? 時には、人ではないクライアントも??? 【一】

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 午後十二時半を少し回ったところで、本日のランチタイムだ。その時々の予約状況によって、十一時過ぎと早めに取る事もあれば、十六時過ぎる事もあったりとまちまちだ。電話占いや対面占いの時もそのような感じだったので、特に何の問題もない。粋蓮の自宅の一階が鑑定室となっており、同じ階のキッチンへ行けば住むので非常に楽である。

 ポン、という軽快な音と共に日比谷が人型に変化へんげした。

「今日の昼飯は牛丼だったよな?」

 と、ネオンブルーの瞳をキラキラと輝かせながら問う。

「ええ、それとチンゲン菜のお浸しとクレソンのサラダです」
「じゃ、俺今日はそれ食うわ。肉と生姜とニンニクをガッツリで頼む」
「すまぬが私もそれで頼む」

 朝ご飯、足りなかったのかしら? 日比谷なんか兎のままだったから野菜と牧草と水だけだったし……

「妃翠、そなたも出来るばら肉と生姜とニンニクを多めに食べておいた方が良いぞ」
「え? はい、そうなのですか?」

 二人は元神族だから口臭なんかどうとでもなるかもだけれど、あたしは受付や会計業務が主だから拙いのでは……

「マスクをしたら良いさ。『申し訳ございません、アレルギーのようでしてマスクをさせて頂いております、お許しくださいませ』とでも来たお客にはそう伝えたら良い」

 日比谷の言葉に、「はい……」と応じながらも何故そこまでして肉を多く取るように進めるか首を傾げる。そう言えば昨日夕方、食材を買い出しに行く時、『明日の昼のメニューは豚肉か牛肉、生姜とニンニクが沢山食べられるメニューにしてくれないか? 勿論、簡単なもので構わない』と粋蓮から指示があった事を思い出した。加えて大量に出来て簡単で素早く出来て美味しい……という事で牛こま切れ肉で牛丼を作ろうと決めたのだ。因みに、「素早く」「美味しい」はあたしが加えたものだ。

「何だ? まだ気づかんのか?」
「こらこら、揶揄っては可哀想だぞ」

 悪戯っ子みたいにニタリと笑う日比谷を、そんな彼をたしなめるようにしつつも何処か困ったような表情の粋蓮。一体何? 何なのさ?

「ほら、お前ん家で肉や根菜類、或いはジャンクフード的なメニューが出る時はどうだった?」
「……あ! ひっ!!」

 日比谷の言葉の意味を悟るなり、背筋がゾッと冷たくなった。それはつまり……

 悪霊や妖怪、或いは生霊などの性質タチの悪いもの、それものものに遭遇する時だった。それはクライアントに憑いていたり、或いはその家族などの近しいものに憑いていたりする……
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